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(3)

「行方不明になった捜査官が(スパイ)として使っていた犯罪組織のメンバーが居た」

 今度は、北の方から来たエリート様を交えたブリーフィングだ。

 兄弟のように良く似てる(どっちが新潟の奴で、どっちが北海道の奴だったけ?)の片方が、そう説明する。

「ま、そりゃ居るでしょ〜な」

「そのSの体内に秘かに埋め込んでいたGPS発信機が……」

「自分の体内に発信機埋め込まれても気付かない間抜けがSとして役に立つんですか?」

 都甲が、そう混ぜっかえすが……。

「そのGPS発信機の信号が検知された」

 エリート様は無視して説明を続ける。

「それも、新潟と北海道、全く別の案件で使っていたSが、大量の捜査官が行方不明になったのと同じタイミングで行方不明になった挙句、現在、同じ場所に居る事が判った」

「あの、裏が有るなら正直に教えて下さいよ。それとも、あんたらも何も知らされてないの?」

 都甲のツッコミは続くが……。

「場所は、ここだ」

 エリート様のガン無視も続く。

 あ〜、こりゃ、マジで、このエリート様どもも、私らと同じ「『と金』になる事さえない『歩』」だな、こりゃ。

「……って……ここ……は……」

 プロジェクタ用のスクリーンに表示されている地図に、赤点が1つ。

 海上だ。

 壱岐と佐賀の唐津の間あたり。

 約10年前の富士山の歴史的大噴火で大量に出た通称「関東難民」。その一部が暮す人工島(メガフロート)の1つ「NEO TOKYO Site01」こと通称「千代田区」。

 ()()()()東京の名を騙る人間が作った小島だ。

対異能力犯罪広域警察(レコンキスタ)から『魔法使い』系の特務要員(ゾンダーコマンド)を借りる事は出来るか確認してくれ。出来れば複数」

 場所からして、確実に「魔法使い」系が必要になる。それも、対人攻撃魔法の使い手よりも、探索・索敵系や除霊・浄化系の連中が……。

 私は、副隊長の後藤に、そう指示を出すが……。

「無理だ」

 エリート様の片方が、そう言い出した。

「何で?」

「知らんのか? 公安と対異能力犯罪広域警察(レコンキスタ)は、今、極めて険悪な関係に有る。借りを作る訳にはいかん」

 各広域警察と県警は、それぞれ指揮系統が別で、それどころか、各広域警察も完全に別系統(カイシャ)だ。

 富士の噴火の更に10年ばかり前に、広域警察を作り過ぎた弊害だ。

 例えば、今でも、異能力犯罪……特に「正義の味方」と呼ばれる事も有る違法自警団の捜査に関しては、対異能力犯罪広域警察(レコンキスタ)と公安の「特事」の間で管轄争いが続いている。

 そして、例えば広域組対(マル暴)と地元県警の組対(マル暴)が捜査協力する事も有るので、実状は更にややこしくなる。

「それに、この件には、おそらく例の『正義の()()』どもの全国組織が裏で動いている」

 おい、待て、それなら、こっちも全国規模で対処すべき……いや、まさか……。

 のっけから縦割り組織の弊害が出てるのか、この案件。

 実は、全国規模で話が動いてるのに……「『と金』になる事さえない『歩』」は横の情報共有が出来てないまま、上の言うがままに動かされてるのか?

 上が優秀なら問題は無いが……私だって、この職場に何年も居る。

 フィクションで描かれてるような「優秀な公安警察」など想像力が足りない脳内御花畑の阿呆が考えた絵空事に過ぎない事を、何度、思い知らされた事か……。

 たしかに、「正義の味方」どもの支部を摘発出来た事は有る。多くて10名の小さな「細胞」なら。

 しかし、捜査はそこで、いつも行き詰まってきた。

 「正義の味方」のある「細胞」のメンバーは、他の「細胞」のメンバーが、どこの誰か知らなくても、全体として機能するような組織になっている。

 公安も似たようなモノだが、どうやら奴らには公安には存在している「上」が存在していないらしい。

 信じられない事だが、それでも、1つの組織のように動いているのだ。

 下手したら、我々、公安よりも遥かに狡猾かつ効率的に。

「そして、対異能力犯罪広域警察(レコンキスタ)を、この案件に関わらせる訳にはいかん理由も、そこに有る。組対(マル暴)警察官(サツカン)の中から、ヤクザとつるむヤカラが出てしまうように……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「あの……」

 私は手を上げる。

 多分、このエリート様も、更なるエリート様にいいように使われてる「『と金』になる事さえない『歩』」で、その更なるエリート様も以下同文なのだろう。

 だが……釘を刺しておくのが無意味だとは思えない。

 少なくとも、この時は、そう思った。

「この捜査で、最優先すべき目的は何ですか?」

「言っただろう。行方不明になった公安の捜査官達……」

「それじゃなくて……」

「それ以外に何の目的が有ると言うんだ?」

「我々が2匹の兎を追わされてるのに、どっちか片方しか捕まえられない状況に陥ったなら……どっちの兎を優先すべきなんですか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 後からすれば、私は甘かった。

 このエリート様どもが、この時のブリーフィングで重大なヒントを口走っていたのに……それに気付けなかった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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