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あと

作者: 歌川 詩季

(あと)」か「(あと)」ですね。

 爪あとのない壁は

 四方に高く(そび)えて

 足あとのない庭を

 ひとめ(おが)むことすら叶わない

 ()みあとのない首すじは

 くちびるの記憶をもたずに

 ()めあとのないのどもとを

 (かわ)きがごくりと鳴らした


 焦げあとに花が咲くことは

 もうないだろう

 ()いあとが亀裂を

 (つな)()めておけるのはいつまでか

 ()りあとを(さら)した地肌が黒い汚泥(おでい)

 さらさらした白い砂ではないのを

 たしかめたいわけでもなく

 ()がしあとからは顔を(そむ)けなくてすむように

 ヴェールをかぶせなおしてほしい


 引きずりあとを追ったのなら

 どこかましなところに

 連れてってくれるのかもしれないけれど

 埋めあとを掘り返したところで その下には

 そこに(たお)れた者たちが眠ってもいないのだと思うと

 我が身はこの囲いのなかで朽ちさせてゆけばいいさ


 欠けあとのない爪を

 きょうもほんのわずかにのばす

 ひらがな2文字のタイトルも、悪くないか。

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― 新着の感想 ―
様々な「あと」。 跡、痕、後……そんなことを思いながら読ませて頂きました。 自分ではなかなか思い付けないので、あいかわらずのレパートリーさすがです。 噛みあとと絞めあとにドキリ。 歌川さん、ありがとう…
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