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誰かの記憶

登校の途中、花が咲いていた。もう綿毛になったタンポポが、群れになって咲いていた。白く丸くなったそれは精一杯に風に揺られていた。

翌日、それの茎は折れていた。真っ直ぐ立った茎の上にいた白く丸い綿毛はひとつも見当たらなかった。昨日の夜は外が雨で煩わしかった。


「今日、兄さんのところ行くけど」

「お、ナイスじゃん」

 目の前にいる女―森トア―は冷凍食品のポテトを箸でいじくりながら声を弾ませる。この女は私が兄さんの職場に行くたびに私についてくる。目当ては兄さんの職場の食堂で出てくるプリンらしい。森があまりにおいしそうに食べるので一度私も食べたことがあるが、特別おいしいものではなくそこらのスーパーに三つセットで売っていそうな、味が簡単に想像できるあまりにも普通のプリンだった。森曰く、兄の職場で食べると美味しさが倍になるらしい。何を言っているのかよく分からないが、兄の職場は第四地区にあるため何か関係があるかもしれない。

「ああまって、今日あたし放課後掃除あるや」

「ん、教室で待ってるわ。じゃあ私この後小テストあるから、戻らなきゃ」

「何のテスト?」

天神学(テンシンガク)の、フェミリアの生態のやつ」

「そこかよ、がんばって」

「うん、じゃ」

 軽くなったお弁当箱に蓋をして袋に片付ける。少し前は温かく、名前も知らない花がたくさん咲いていた気もするが、今の学校の中庭はもう太陽がうるさくて夕立も増えてきた。そろそろお昼の場所を変える時期だろうか。

 教室に向かって少し早足で戻る。小テストは授業を聞いていたら合格点はとれる程度の物らしいが、まったく自信がない。天神学は私たちが将来生きていく上で欠かせない科目らしい。その中でもフェミリアについてはたっぷりと話を聞かされる。フェミリアとは、空気中に漂う生物のことだ。人間にさまざまな影響を与えるものらしい。そして、フェミリアは兄の職場である第四地区にたくさん生息しているらしい。

まあもう昼休みもあと5分もない。教室に戻ればクラスメイトは今回の範囲であるプリントを必死に見ていた。午後の授業は天神学のあとHRを行うのみだ。さっさとテストを終わらせてしまおう。


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