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第6話 ケリー王子

ケリー王子は魔法学院の三年生らしい。

年上で18歳。

他の人は知らないけれど、私に対しては印象が最悪だ。

王様は仲良くなってと仰っていたけれど、嫌われる相手に無理に好かれることは無い。


最初は城に住むようにと言われるかと怯えていたけど、従わなくても良い様な気がしてきた。

王様は私に対して寛容な気がするし。

甘い考えなのかもしれないけど。


教室から外を眺めていたら、王子が見えた。

昼休みでボール遊びをしているらしい。

周りと仲良くやっているのが意外だった。


「王子は人当たりが良いと評判なのですわ」


ジョディーが言う。


「意外だわ。私にはあたりが強いのに」

「そうなのですわね。何か事情があるのでしょうか」


関わらなければ良いだけ。

少なくとも学校内では避けていれば良い。

そう思っていたのだけど。




「早く学校を出ないと」


終わり間際に、先生に手伝いを頼まれて遅くなってしまった。

レインが馬車で待っているのだ。

足早に渡り廊下を通り過ぎようとすると、教室内で声が聞こえた。


「…ひっく、許してください」


イジメかしら。

何処へ行ってもそういうのはあるのね。


「お前…」


聞いたことのある声がした。

数日前に聞いた王子の声。

間違いはない。


私は思わず立ち止まった。

教室内を覗くと、白いマントを着た王子と女子生徒。

女子生徒は泣いている。

私は思わず言葉に出していた。


「まさか、一般生徒に手を出すなんて…私、貴方が嫌いです」


「今、何と言った?もう一度言ってみろ」


王子は私を見て驚いていた。


「だから、嫌いって言ったんです」





   *




「信じられないわ。まさか王子が虐めていたなんて…」


馬車の中で私はレインに先ほどの事を話していた。


「ローレライ、それ本当なのかな。ちゃんと確認した?」

「だって、相手が泣いていて許してくださいって言ってたのよ。虐めでしょう?」


レインは顎に手を乗せて考え込む。


「それだけじゃ本当に虐めていたのか分からないよね。逆に慰めていたのかもしれないし」

「え…でも」


「「嫌い」って思っていると、悪い事をするって思いこんでいる事もあるよ。ローレライって思い込み激しいし」


そう言われて思い出す。

実際に何かを見たわけでも無かった。


「あれ…勘違い?」

「王子が嫌いでも一応謝っておいた方が良いと思うよ。冷静になれないようだったら、僕も一緒に行くけど?」





***ケリー王子視点





「何なんだあいつは…勘違いしやがって」

「申し訳ありませんでした。もうしませんので」


女子生徒が俺に謝っていた。

どうやら俺のファンらしく、俺が落としたハンカチを盗もうとしていたらしかった。


「何も泣くことは無いだろう。大げさな」

「窃盗は捕まって殺されるんですよね?」


「あー捕まるかもしれんが、見てたのが俺だけだから黙っておいてやるよ。もうするなよ?シルダが居ないときで良かったな」

「ありがとうございます」


彼女は何度もお辞儀をして教室を出た。





「しかし、面と向かって言われると傷つくものだな」

「ローレライ様に嫌われちゃいましたね」


シルダが教室に入ってきた。


「居たのか。先ほどのは見たのか?」

「何の事でしょう?わたくしは今来たばかりなので」


恐らく見てたな。

この分だと黙っているだろう。


「王子が悪いのですよ。ローレライ様を嫌っているから」

「ああ、そうだな。悪かったよ」




***




「おや、このような時間に来客ですかな?」


夕刻、馬車の到着する音が聞こえた。

ラルスが玄関先に向かう。


「突然の来訪すまない。俺はケリー・フォン・ラクシアだ。ローレライは在宅だろうか?」


豪華な馬車が見え、白いマントが翻る。


「王太子殿下?少々お待ちください」


ラルスが上ずった声で答える。

明日学校で謝ろうと思っていたら、屋敷に王子が訪ねてきた。


「悪かった。態度が悪かったのは謝罪する」


「私も、ちゃんと理由を訊かずに嫌いなんて言ってごめんなさい」


慌てて、紅茶とケーキが用意された。

私と王子はリビングで向かい合って座っている。


「いらっしゃるときは、前もって言っていただかないと」


ラルスに耳打ちされる。

私たちも知らなかったんだけどな。


「「あの」」


王子と声が重なる。


「そちらからどうぞ」

「じゃ、悪い俺から…実は、父上が君を事あるごとに気にかけているのが嫌だったんだ。アンタのせいじゃないよな。それと、先ほどは女子生徒が俺の私物を盗もうとしていたんだ。だから虐めてはいない。勘違いだ」


「そう…だったのですね。私も軽率でした。それと次からはローレライと呼んでくれると助かります」

「じゃあ、俺はケリーと呼んでくれ」


「えええ?」

「いとこだからローレライは特別だ」


ケリーは満面の笑みを浮かべた。

それからケリーは度々屋敷に来るようになった。

ただ、お茶を飲みながら話すだけだけど。

来るたびにラルスとメイドさんたちは緊張しているみたい。

ケリーは仲良くなってみると、話しやすく意外と心地良かった。




   *




「へえ~そんな事になっていたのですわね」


私は学校の教室で、ジョディーに王子の事を話ししていた。


「最近、馬車が城と逆方向へ向かっていると話題になっていたのですよ?まさかローレライさんのお宅だったとは思いませんでしたが…」

「この事は内緒でお願いね」


「分かっていますわよ。大騒ぎになりますものね。そういえば、王子と言えばまだ婚約者もいらっしゃらないようですわ」

「婚約者?」


「王族は大抵将来の婚約者が決まっていると思うのですが、何故かいらっしゃらないのですよね。不思議に思っていましたが…」


私は首を傾げる。


「ローレライさんも他人事ではありませんのよ。貴族令嬢は良い人を見つけておかないと後で苦労致しますから。女性は家の爵位を継げませんからね」


そういうものなのか。

何せ記憶が欠落している所為で、肝心な情報も無かったりするから。

という事はレインは家の爵位を継げるという事なのだろうか。

後でラルスに訊いてみよう。



「「アルフレッドさん!放課後、校舎裏に来てくださいっ!」」

「え?ちょ、ちょっと!」


女子生徒がレインに用件だけ伝え、直ぐに何処かへ行ってしまった。

他のクラスの生徒なのだろうか。

当の本人は呆気に取られている。


「あら~レイン君モテモテね」

「やっぱりそういう事?」


どうやらレインは放課後告白されるらしい。

校舎裏ってベタだわ。

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