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第42話 冒険者リリー

次の日。

冒険者ギルドのドアを開け中に入ると、昨日ギルドを訪れたリリーが椅子に座っていた。

隣にはフィリアさんと、エリサさんも居る。


「ええっ?リリー、冒険者になったの?」


私は驚いていた。

昨日までは、結婚相手を探すためなのか…王族の繋がりを求めていたはずの彼女が冒険者になったというのだ。

何故か、フィリアさんと妹のエリサさんたちと同じパーティを組んだらしい。

格好も魔法使いのローブを付けていて、普通の冒険者の出で立ちになっていた。


「わたし、学生の頃は優秀でしたのよ?氷魔法で右に出る物はいませんでしたもの」


確かに成績は優秀だったかもしれない。

でも学校の勉強と実践には大きな隔たりがある。


「冒険者って、男ばかりだと思っていたのだけど女性もいたので安心しましたわ」

「でも一体どうして…」


リリーさんは本当にお嬢様で、冒険者とは縁が無かったはずなのに。


「貴方がいけないんですのよ?聞きましたわ。最近大活躍したんですって?わたしも活躍してみたくなったんですの」


心配している私とは裏腹に、今まで見たことが無い笑顔で話すリリー。

もしかして心配する事なかったのかしら。


「怪我したら私が治しますから…でも怪我しないでくださいね」

「それ、どっちなの。全くローレライったら…」


苦笑するリリー。

彼女たちは冒険者ギルドを出ていった。

これから依頼をこなしに行くのだろう。

ベテランのフィリアさんが居るから大丈夫だと思うけど。

怪我無く戻ってきてほしいわね。



***リリー視点



「へえ〜貴方も魔法学院に通ってらしたの」

「エリサはローレライさんの彼氏にしばらく熱を上げてましたからね。あ、もう旦那様になったんだっけ」

「もうっ!何で今そういう事言っちゃうかな」


森に向かう途中で、話しながら歩いていた。

同じパーティーを組んで知り合ったのだけど、意外な共通点があって驚いていた。

ローレライとレインの知り合い。

ただの偶然なのだろうけど。

世の中は意外と狭いものね。


「レイン君たちとはクラスメートでしたわ。もしかして何処かで会っていたかもしれませんね」


「ところで、リリーさんって彼氏募集中だったりする?」

「な、何ですの突然…」

「わたしも居なくてさ…同士だね」


勝手に仲間にされてしまったけどまあいいわ。

わたしたちは森に入り、モンスターを討伐する事にした。

怪我しないように…か。

冒険者にそれを求めるのは無理じゃないかな。

わたしは、心配するローレライの顔を思い浮かべていた。


しばらく森を進むと、前方にゴブリンの集団が見えた。

彼らは頭が良く道具を使って攻撃をしてくる。

弱いからと言ってなめてかかるのは危険だ。

先制攻撃。


わたしは杖を構えた。


氷の矢(アイスバレット)


槍状の氷の塊が、5匹のゴブリンに一斉に襲いかかる。


ドガガガガガ!


氷の矢は一匹も外すことなく全命中し、5匹のゴブリンが一瞬で凍りついた。


「ふぅ」


ゴブリン相手に少し威力が強すぎたかしら。

でも攻撃が効かないよりはいいわよね。


「お手並み拝見だったのだけど、全く心配いらなかったみたいですね」

「リリー魔法強すぎ」


エリサが頬を膨らませている。

活躍出来なかったのが悔しいのだろう。


「次はわたし、手を出しませんから…」


他の人の気を遣わなければいけないなんて、パーティも大変だわ。




   *




「お帰りなさい。早かったですね」


ギルドに着くと、ローレライが出迎えてくれた。

もしかして心配してくれたのかしら。


「フィリアさんが居るから大丈夫だと思ってましたけど、つい心配になって…」


物憂げな儚い表情をするローレライ。


ドキッ!


同じ女性なのにドキッとしてしまいましたわ。

流石お姫様ですわね。


まさか、他の冒険者たちに同じような顔してませんよね?

男どもならイチコロですわよ。

というか、嫉妬するレイン君の顔が思い浮かぶのですけど?

これ、本人に言った方がいいのでしょうか。


「どうしましたか?」


ま、いっか。

多分実害はないだろうし。

万が一襲われたとしても、自分で対処出来るだろうから。


ふと、隣のフィリアとエリサを見ると。

彼女たちも頬を赤くして目をぱちくりさせているわ。

まさか魅了魔法を使っていませんわよね?


「女神さまは優しくて最高だぁ!」


うっとりとした、男性冒険者が呟いた。


「俺も言ってもらいたい…」

「お前、ベテランだろ?無理、無理」

「怪我して治療してもらいてえな」


確実にギルド内で、ローレライファンが増えつつあるのだった。

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