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第38話 ヒーロ?

レイモンド大神官が捕まった事は、王都中に直ぐに広まった。

王様が、私が襲われた事を心配してまた護衛を付けるとか言いだしたのだけど断った。

私は以前のように弱くはないから。


「ローレライ、もしかして記憶戻ってない?」

「あら、そういえば…」


ふとレインに言われて気がついた。

冒険者ギルドで冒険者を相手にしても全然怖くないし、いつの間にか魔法も使いこなせている。

王様にも堂々と意見を言えるようになっていたのだ。


「いつの間に感覚が戻ってきたのかしら」


リビングで紅茶を飲みながら思考を巡らせる。

学校の頃の思い出も、レインとの事もハッキリと思い出せる。

城での出来事も。


「冒険者相手にビクビクしていたローレライも可愛かったけど、やっぱり今の堂々としたローレライじゃなきゃね」


ギュッとレインに抱きしめられる。


「お帰りローレライ」

「ただいま…」


あたたかい温もりを感じた。

私の居場所はここなのだとあらためて実感する。


「これで心置きなく結婚式が出来るね」

「あ…ヤバっ、ランさんに手紙書いてないわ。後で何を言われることやら…」

「魔法の先生だよね?一番知らせないといけない人なんじゃ…」


うっかりしていた。

城ではとてもお世話になったのに、まさか忘れていたなんて。


「今から手紙書く?僕が城に行った時、届けてあげるよ」

「本当?レイン助かるわ」


結婚式は一か月後に迫っていた。




   *




冒険者ギルドに出勤すると、冒険者たちが私の顔を一様に見ている。

あれ?私、変な格好だったかしら?

私が今着ているのは、茶色のジャケットに白いブラウスで水色のキュロットスカートをはいていた。

ギルド職員は制服があるので、この後着替えるのだけど。


「ローレライさん、是非弟子にしてください」

「おれにも魔法の使い方を教えてください」

「わたしもお願いします」


ローブを着て杖を持った魔法使いらしき数人に囲まれてしまった。

私が困っていると奥からセシアさんが顔を覗かせる。


「ローレライはこれからお仕事だから、邪魔しないでね。用がある人は時間外にお願いします」


助かった。

私は慌てて職員用の更衣室に駆け込んだ。



   *



「セシアさん。今朝、冒険者に囲まれたのって何だったんですかね」


休憩時間、休憩室で私はセシアさんと話をしていた。

私は、他の職員よりも少し多めに休憩時間を貰っていた。

魔法を使って治療しているからだ。

意外と体力を使うからね。


「最近、自分が何したのか憶えていないの?お偉い人を捕まえたんじゃなかったっけ」


「え?何の事ですか?」


私はギクッとする。

私が大神官を捕まえたことは内緒にしていたはずなのだけど。


「しらばっくれないで頂戴。アタシの目を誤魔化せると思っているの?あの時、貴方が大聖堂に連れて行かれて…そのあと弟くんがギルドへ貴方を探しに来た…その後、大神官が捕まったらしい…さて誰が大神官を捕まえたのかしら?」


「レインだとは思わないんですか?」


「弟くんも中々の実力みたいだけど…相手は大神官、魔法を使いこなす相手よ。モンスター相手ならまだしも、魔法使いじゃ勝手が違い過ぎるわね」


「私は何もしてませんよ。魔法障壁を張っていたら相手が勝手に自分の魔法でやられたってだけだし…」


「へえ~そうだったのね。正直に答えてくれてありがとう。…それと、貴方たち盗み聞きはよくないわよ」


セシアが休憩室のドアを開くと、ギルド職員数名の顔が見えた。

どうやら、ドアの向こうで聞き耳を立てていたらしい。


「やっぱり、ローレライさんがやっつけたんですね?」

「凄いっす。尊敬します」

「もっと詳しく聞かせて下さい」


え、えええーーっ?


「こら、貴方たち彼女が困っているじゃないの。さぼってないでさっさと持ち場に戻りなさいな」


「「「はーい」」」


大聖堂での出来事は冒険者だけでなく、ギルド職員も興味津々だったようだ。

思ったよりも大きな反響に、私はため息をついた。


後から聞いたところによると、大神官は陰で色々悪事を働いていたらしい。

証拠がなくて泣き寝入りする人が大勢いたとか。

私はそんな悪者をやっつけたヒーロー?になってしまったようだった。


「ローレライさん。お疲れ様です!応援しています」


帰ろうと冒険者ギルドから出ると、知らない冒険者から声をかけられ握手を求められた。

顔を見ると若い青年のようだった。

私のファンになったらしい。


街を歩いていると、皆から見られてる気がする…。

いや、そんな事はないわね。

少し、神経質になっているのかもしれない。

私は足早に帰路についたのだった。



 

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