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第37話 実は最強?

ワシはエイブラム・レイモンド

王都アルティナの大聖堂で大神官をしている。


「冒険者ギルドにいる回復魔法士だと?」


「はい。最近入った新しい職員の様ですが、「女神様」のようだと噂されておりまして」


部下のスコットが言う。


「ワハハ…女神様だと?少々、話を盛り過ぎでは無いか?」


ワシは良い事を思いついた。

女神云々はいいとして、人気の彼女を引き抜ければ大聖堂の目玉になるのではないだろうか?

寄付金が、今よりももっと入ってくるようになれば…。


想像して口元が緩む。


「一度見てみたいものだな。彼女を是非連れてまいれ。それと…例のごとくで解っているな?」


ワシは椅子にふんぞり返って言う。


「承知しました」


スコットが頭を下げた。




***




私は今日も冒険者ギルドで治療をしていた。

午前中の診療が終わり、一息ついていると。


「ローレライさん、お客様ですよ」


誰かが訪ねてきたらしい。

誰かしら?

入ってきたのは、眼鏡をかけた茶髪の神経質そうな司祭だ。

結婚式の打ち合わせ?な訳ないわね。

一体何かしら。


「何の御用ですか?」


私は訊ねた。


「わたしは大聖堂から来たスコットと申します。大神官レイモンド様が、貴方に是非お会いしたいと申しております。これから一緒に来て頂けませんか?」


「え?…でも午後の診療が」


「臨時休業にでもすればいいでしょう」


この人随分身勝手だわ。

怪我で困っている人もいるというのに。

私は眉をひそめた。


「…営業が終わってから行きますわ」


「大神官様のご命令は絶対です。直ぐに行きましょう」


手を掴まれて強引に連れ出そうとするが、私は振り払った。


「たとえ、王様だろうと神様だろうと私が自分で決めて動きますので」


司祭は結局、診療が終わるまで待っていた。

途中で帰ってくれないかなと、密かに思っていたのだけど。

そう都合よくいかないみたいで、私は仕方なく大聖堂へ向かう事になった。



   *



馬車に乗り、私は初めて大聖堂に来ていた。

天井が高く大きい立派な建物。

教会の総本部にあたるらしい。

参拝者がまばらに見受けられた。


長い廊下を歩いて個室に通される。

部屋には、白い祭服を着た中年の銀髪の男性が偉そうに椅子に座っていた。

男は私を見て語り掛ける。


「よく来たな。ワシはエイブラム・レイモンド、大神官をしている。成程なるほど…プラチナブロンドの髪で水色の澄んだ瞳、白い柔肌…確かに女神と言われてもおかしくないような美しさだな」


レイモンドは大きな宝石の付いた指輪を複数はめており、ジャラジャラとネックスレスを付けていた。

私を上から舐め回すような視線で見られる。

正直…気色悪い。


「是非、貴方に大聖堂に来てもらいたいのだ。金銭はギルドの倍出そう。どうだろうか。悪い話ではないだろう?」


レイモンドは口元を歪めた。


「さあ、ローレライ…ワシの為に働いてくれるね?」


『………』


パシン!

硝子ガラスの窓に石が当たるような嫌な音がした。


「今、何か魔法を発動しましたか?」


聞き取れなかったけど、後ろから呪文のような詠唱が聞こえた気がする。


「き、貴様…まさか魔法が効いていないのか?ス、スコット何をやっておる!!」


レイモンド大神官が狼狽うろたえる。


「こんなこともあろうかと思って一応、魔法障壁バリヤーを張っておいたのよ。目に見えないと思いますけど。まさか本当に魔法をかけてくるなんてね」


後ろを見ると、私を連れてきたスコット司祭が床に倒れ込んでいた。

自分でかけた魔法にあてられたらしい。


目がうつろでぼーっとしている。

これってもしかして…。

使役魔法とかじゃないでしょうね。


「バカもん!自分で自分の魔法にかかってどうする!!」


「一体、何の魔法をかけたんですか?」


私は大神官に向かって冷たく微笑んだ。




   *




バン!


部屋の扉が乱暴に開かれた。


「「ローレライ!大丈夫??」」


レインが慌てて駆け付けた。

肩で息を切らしている。


「はぁ、はぁ…ギルド行ったら…大聖堂に行ったって、聞いたから…」


「うん。私は大丈夫よ。この人たち、私に悪い事をしようとしたんだけど…一応、縄で縛ってあるから。司祭様が私の言う事をよく聞いてくれてね」


司祭が使った使役魔法が効いていて、私のいう事をよく聞いてくれた。

大神官と司祭の両手、両足を縄で縛りつけたのだ。

二人は床に転がっている。

私は大神官レイモンドを一瞥いちべつした。


「わ、悪かった。何でもするから。金ならいくらでも出すから…見逃してくれないか」


レイモンドは必死に謝っている。


「え?彼、何しようとしてたの?」

「私に魔法をかけて操ろうとしていたみたい。魔法障壁バリヤーで弾き返したから…そこの司祭が魔法にかかってるわ」


司祭は、うつろな表情をしている。


「魔法障壁?いつの間に憶えたの…」

「城にいる時、ランさんに色々とね。教わっておいて良かったわよ」


一度、身につけた魔法は使いこなせている。

以前、王子の件があったので念のため魔法をかけておいたのだった。


「もしかして、ローレライって実は最強なんじゃ…攻撃魔法も使えたりする?」

「一応一通りは使えるけど。あまり使いたくはないわね」


私は後日、レイモンド大神官が私にしようとしたことを王様に報告した。

お金がもったいないから、最初から私を操ろうとしていたみたいで。

魔法が効いていたら…と思うと背筋が寒くなった。


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