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第25話 城での生活

「おはよう、ローレライ」


今日もレインの声で目が覚めた。

私はふかふかのベッドの中にいる。

お布団ってこんなに柔らかかったっけ?


「んん?」


小鳥の鳴き声が全然聞こえない。

私は、一気に目が覚めた。

隣にはレインが同じ布団に入っていた。

やけに声が近いと思ったのよね。

昔は良く一緒に寝たっけ。


「どうしたの?」


首を傾げるレイン。

そうだ、ここはお城だったわ。

昨日から、私たちはお城に住むことになったのだった。

やけに広い室内に、大きな天蓋付きベッド。

床はフワフワの絨毯が敷き詰められている。


昨日、レインが不安そうだったので、一緒の部屋で過ごしていたのだ。

彼はニコニコしている。

あれ?本当に不安だったのかしら。

私は訊いてみた。


「レイン、昨日私と一緒の部屋って言ったのは…1人だと不安だったからよね?」

「ううん。ローレライと一緒に居たかったからだよ」


そうだ、レインってこういう子だったわ。


「朝一番に、ローレライの寝顔を見れるなんて幸せだな」

「もしかして、しばらく見てたの?」

「うん。まつ毛長くて、可愛いなって眺めてた」


私は途端に恥ずかしくなった。

前から、こういう事平気で言うのよねこの子は。


「全く違う場所だと新鮮だよね。新婚さんみたいで」

「新婚さんって…」


これから、新たな生活が始まるというのに呑気なものね。


「そういえば、ラルスたちはどうするのかしら?」

「しばらく今のままで居てもらうと思う。この先分からないからね」


私はレインと城に一緒に住んでも良いと言われたけど。

状況が変わって、突然レインが追い出されてしまう事もありうるのだ。




コンコンコン。

ドアがノックされた。


「失礼します。お食事を用意しました」


メイドさんがワゴンを運んできた。

後ろからケリーも部屋に入ってくる。


「おはよう。まだ城に慣れないから、食事は部屋の方が良いと思ってさ。食べれないものがあったら言ってね」


「わざわざすみません」


「どうも」


「それから、学校はどうする?ここから通うか?」


私は体調が戻ってから通うつもりでいたけど。

城に引っ越すことになってしまったからね。


「友達がいるので、ここから通いたいわ」

「魔法の勉強が途中だもんね」


「わかった。では護衛を付けよう」

「護衛?」

「ああ、王様が心配するだろうからな」




   *




一週間ぶりの学校。

私たちは城の馬車に乗っていた。

ケリーとは別の馬車。

一緒に乗ると、他の生徒たちに勘繰られるからと言っていたけど。

もう遅いんじゃないかしら。


同じ時刻、同じ場所で馬車から降りたら。

嫌でも注目される。


「レイン様~。お久しぶりです。会いたかったです~」


馬車を降りると、声をかけてくる女子生徒がいた。

赤髪のエリサだ。


「僕もローレライと一緒に学校休んじゃったからな。一週間ぶりだ」


「レイン様、今日はどうしたんですか?王子様たちと一緒の馬車なんて」


「えっと…」


レインは話すかどうか迷っている。

彼女に正直に事情を話すことはないわ。

私はレインの手を引いた。


「レイン、教室に行きましょ?みんな待ってるわ」

「うん。そうだね」


「え、ちょっと…」


エリサを置いてきぼりにして、私たちは教室へ向かった。



「ローレライ!」


教室に着くと、ジョディーに抱きしめられた。


「おはよう。なにどうしたの?」

「もう、学校へ来ないかと思っちゃったわ。だってローレライは…」


「それ、ここでは内緒にしてね」

「えっ。あ、そうね」


ジョディーに口止めをお願いする。

一週間ぶりの学校はいつもと変わらなかった。

騒がしいクラスメート。

少し前の日常に戻ったみたいだった。




   *




学校帰り。

私たちは馬車の御者さんにお願いして、冒険者ギルドへ寄ってもらった。

夕方で、フィリアさんが居るか分からなかったのだけど。

レインと二人で話し合って、冒険者を辞めることにしたのだ。


「あら、貴方たちどうしたの?」


馬車から降りると、丁度ギルドから出てきたフィリアさんと会った。

ギルドの近くの茶店で少し話をする事になった。

フィリアさんと向かい合って座る。

レインは私の隣だ。

ミルクティーを飲みながら話をしていた。


「そうなんだ。ローレライさんが王女だったなんてね」


「アルフレッド家でずっと過ごしてきたので、そんな自覚はないんですけどね」


「それで?わざわざ来たって事は、わたくしに用があって来たんでしょう?」


レインは黙って紅茶を飲んでいる。


「はい。冒険者の仕事を辞めようかと思いまして」


「そっか。まあいいんじゃない?またやりたくなったらすればいいし。人生なんてそんなもんよ。あ、そうだ!もし城でお仕事があったら、わたくしを推薦してくれると嬉しいのだけど」


ちゃっかり営業をかけられてしまった。

しっかりしてるわね。


私たちはフィリアさんと別れた。


「レイン、ずっと黙っていたけど良かったの?」


「別に話す事、無いし…ローレライが代わりに言ってくれたから」


そう言う彼の表情は少し暗かった。




***レイン視点




ローレライが冒険者を辞めたいと言ってきた。

王様が心配するだろうからと言って。

僕には反対する理由はない。


僕が冒険者を辞めたくなくても関係ないのだ。

元々フィリアさんとローレライ、僕で三人のパーティを組んでいた。

一人辞めることでパーティは解散になる。

そういう約束だった。


「もう少し、続けたかったな…」


城で偶然見つけたバルコニーで一人呟く。

ローレライには聞かせられない言葉だった。


「何を?」


誰も来ないと思っていたのに、ケリー王子に聞かれてしまっていたみたいだった。


「何でもないです」


「きっと、彼女には言えない事なのだろう?俺が聞くだけなら聞いてやろうか?」


カーベルとも会えなくなってしまったし、聞いてもらうくらいは良いか。

僕は自分の気持ちを王子に聞いてもらう事にした。


「冒険者の仕事、結構気に入ってたんだな。城では兵士たちの合同訓練というのがあるけど…参加してみるか?」

「合同訓練ですか?」


「最初は見学して、やりたかったら参加すればいい。俺も一言いっておくよ」

「ありがとうございます」


もやもやしていた気持ちが、少しスッキリした気がした。


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