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第16話【魔人族の医者】


 アレンが魔眼を開眼して一夜が明けた今でもアレンの容体は変わらない。


 解熱剤を投与してみたが、効果はなかった。


 手持ちの資料を漁ってみるが、該当しない。 となれば魔眼特有の症状の可能性がある。


 このまま放置すれば命の危険すらある。

 

 街の資料館に調べに行く事も考えたが、アレンの容体とセレンの存在がある為、家を空けるわけにはいかなかった。


「こうなれば致し方ない。 アレン、もう少しの辛抱だからな?」


 セルカはアレンを毛布で包み、自身の体に括り付け、セレンをそっと抱き上げると、2人を連れて転移魔法を発動した。


 セルカの転移先はとある小さな孤児院。 セルカは慌てて扉を叩く。


「リリア!! 頼む急患なのだ!! ここを開けてくれ!!」


「ど、どうしましたセルカ様!?」


 慌てて扉を開ける女性、リリアは魔人族であった。


「朝早くにすまない。 私では手に負えないのだ。 私の孫を助けてくれ!」


「ま、孫!?」


 孫という単語に驚くリリアだったが、アレンの様子を見て、すぐさま顔色を変える。


「早く中へ!!」


 中へ案内してアレンを診察台に寝かせるとリリアはすぐさま診察を始めた。


「この症状……もしかしてこの子、魔人族ですか?」


「いや、ハーフだ。 だが昨日の夕方、魔眼が開眼した。 解熱剤など試してみたが効果がない。 私ではどうしようもなくここに連れてきた。 街医者をしていたお前ならと……」


 このリリアという女性は、人族の街で医者をしていた。 なので魔人族特有の病に関しても精通していた。


「なるほど、ハーフだから片眼なのですね。 安心して下さい。 この症状は魔眼を開眼してすぐの子供によく起きる症状です」


「治療法は!?」


「簡単です。 魔人族が側に居て、この子の代わりに魔眼を制御すればいいのです。 それで一先ず、暴走は治るでしょう」


 アレンが今の状況から脱すると聞き、セルカは安堵する。 だが、リリアは申し訳なさそうに言う。


「ただ、これはあくまでも一時的な措置に過ぎません。 個人差はありますが、あと2、3回は起こると見ていいでしょう」


「それは治らないと言う事か?」


 セルカの問いにリリアは首を横に振る。


「そもそも、開眼による暴走はその魔眼がまだ定まっていない事が原因です。」


「魔眼が定まっていない? それはどう言う意味だ?」


 リリアはアレンの魔眼を制御しながら答える。


「魔眼には7種類あります。 例えば私の場合は色欲。 主にチャーム等の能力が備わっています。 私の回復魔法もそれらを応用した物です」


「その言い方だと魔眼の種類に応じた能力と言う事か?」


 肯定する様に頷くリリアは話を続ける。


「魔眼には傲慢、憤怒、色欲、暴食、嫉妬、怠惰、強欲とそれに伴った能力が魔神様より与えられます。」


「7つの大罪の名を関する魔眼か……」


「ええ、セルカ様の知ってる人で言えば雷の勇者は憤怒、これは身体能力を飛躍的に上げます。 さらには動体視力も上がる為、戦闘向きの魔眼ですね」


 それを聞いたセルカは納得する。 ディアスの動体視力は身を持って経験し、聖魔大戦で彼は勇者になる前から人族とは思えぬような身体能力で敵を薙ぎ倒していたからだ。


「そして魔眼が定まらないと言うのは、この子の魔眼がまだそのどれかに定まっていないと言う事。 多くの場合は親の魔眼を受け継ぎますが、魔王様の様に特殊な魔眼を開眼される方もおられます」


 セルカは特殊な魔眼という言葉に、嫌な予感がした。 何故ならアレンの実の父親はその魔王だったからだ。 だが、一先ずはアレンの容体を優先する事にした。


「要するに、アレンの魔眼が定まらない事には再発の恐れがあると言う事か。 定まるまでは時間が掛かるのか?」


「それはアレン君次第です。 この症状は魔人族が必ず通る事で、発症した場合必ず決まった夢を見ます。」


「夢?」


 アレンの容体が安定した事を確認したリリアは濡れタオルをアレンの額に置き、話し続ける。


「夢の中で、気が付くと暗闇の中、7つの扉の前に立っています。 そしてその中から1つを選ぶのです。」


「だが今お前は魔眼が親から受け継ぐ事が多いと言わなかったか?」


「確かに言いましたが、それは身近な魔眼が親の物である事から同じ魔眼を選ぶ事が多いからです。 親とは違う魔眼を選ぶ子もいます。」


「つまり、どの魔眼を選ぶかはアレン次第と言う事か……」


 そこでリリアは立ち上がり微笑む。


「しばらくは大丈夫なのでセルカ様もお休み下さい。 その子のお世話も私がしておきます」


 そこで初めてセルカは気付いた。 自分が思っていた以上に疲れている事に……


「すまないな。 朝早くに来てしまったというのに……」


「いえ、この仕事をしていれば、よくある事ですので」


 セルカはアレンの横のベッドで少しの間仮眠を取る事にしたのだった。


 一抹の不安を感じながら……

 

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