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第13話【最悪の置き土産】


 アレンのお説教から数週間、レイラとディアスはラブラブっぷりをアピールしていた。


「ほ、ほらディアス、あーん」


「あーん」


「…………。」


 その様子にセルカはジト目でアレンを見る。


「なぁアレン? そろそろ許してやったらどうだ? 正直胸焼けが酷いんだが……」


「いいの!」


 この数週間、アレンの機嫌が治る事はなかった。 セレンとセルカには優しい笑顔を見せているので、レイラとディアスが原因なのは明らかだった。

 

「何故そんなにも2人の夫婦仲に拘る?」

 

「……お父さんとお母さんって、僕が居るから仕方なく結婚したような感じがしてたから、だからセレンがもう少し大きくなって僕と同じような気持ちになるのは嫌だもん」


「成程、お前の意見は分かった。 だが、少々やり過ぎだ。 こういった事は強制するのではなく、2人が進んでやるようにしなければ意味がない。」


「でもこうしないといけないってお母さんの書庫にあった本に書いてあったよ? 今から何とかしないと浮気とかしちゃうって……」


 レイラの書庫にあった本、それはドロッドロの略奪愛をテーマにした恋愛小説であった。


 セルカはレイラの趣味の小説にとやかく言うつもりはなかった。 それどころかレイラの持ってる小説は自分も一時期ハマっていたが、アレンに見られていた事で頭を抱える。


「あのなアレン、アレはフィクションだ。 作り物の物語だ。 現実に起こらない」


「でも小説の棚になかったよ? 参考書の棚にあったもん。 フィクションじゃないもん」


 何故そんな所に置いていたと天を仰ぐセルカ。 そんな所に置いていればアレンが読んだ時に参考にしてしまうのは当然と納得する。


「だがアレン、あのレイラだぞ? ズボラなアイツがちゃんと正しく棚に戻すと思うか?」


「それは……」


(先生、ありがとうございます。 けどズボラは酷くないですか?!)


(我慢しろレイラ。もうアレンにジト目で睨まれるのは御免だ)


 いちゃつき(強制)中の2人も、アレンのジト目はダメージが大きいらしく、逆らえないでいた。


「レイラが片付けをまともに出来た事があるか? 書斎だって書類の山だろ?」


「うーん、確かに……」


 もう一押しと言わんばかりにセルカは追撃する。


「それにその手の小説は題名に〇〇物語って書いてあるはずだが、どうだ? 参考書にはそんな題名ないだろ?」


「でも……お母さんの取り扱い説明書って書いてあるよ?」


「「「へ?」」」


 アレンが取り出した本には確かに『レイラ・リュミエール取り扱い説明書』と書いてあった。


「な、何その本!? 私知らないわよ!?」


「レイラ個人の取り扱い説明書があるわけないだろ!?」


 レイラとディアスは訳が分からず混乱したが、本にはレイラの行動に対してどの様に対応すればいいか、そしてその結果どうなるのか、事細かく書いてあったのだ。

 

「アレン、その本の著者は誰なんだ?」


「え? エリスお姉ちゃんだけど?」


「「「は?」」」


 著者の欄を見ると今度も間違い無くエリスの名前が記されている。


 よくよく見れば本に書いてある文字もエリスの物であった。


「それにこの本に書かれてた事、全部お母さんがやってる事だし、今の所外れた事ないよ?」


(え、エリスぅぅぅぅっ!!!!)


(あの馬鹿娘、アレンになんて物を残しているんだ……)


(ちょっと興味あるな。 後でアレンに見せてもらうか)


 三者三様、心の中で思ったのだった。


「あとね? お母さんがセレンを産んだ後、1ヶ月経ったら素振りや訓練し始めるだろうから止めなさいって書いてあるよ? 今日で丁度1ヶ月、お母さん、玄関に木剣用意してたよね? アレは何?」


「レイラ、お前……」


「完全にエリスに行動読まれてるじゃないか……」


「もぉぉぉぉ!! いいから私に渡して!! ちゃんと読んで直すから!!」


 レイラが本を取り上げようと飛び掛かるとアレンはクルッと回って躱す。


「『尚、この本の存在がお姉ちゃんにバレた場合、お姉ちゃんは絶対読まずにまた埋もれるので渡しちゃいけません。 どうしてもと言うならセルカお母さんか、夫になってるであろうディアスに渡す事』だって」


「我が妹ながら姉の行動パターン読まれ過ぎてて凄く怖いんだけど!? あの子未来予知なんて出来たっけ!?」


 あまりに先読みされ過ぎて震え上がるレイラ。 セルカが呆れて聞く。

 

「私かディアスならいいのか?」


「えっとね? 『ただし、条件があります。 この本をアレンが持っていて、恋愛編②の進行中の場合、最後の行動を見届けない限り、2人にも渡してはいけません』って書いてあるよ?」


「れ、恋愛編②?」


「その最後の行動とは?」


「『愛の証明、夫婦で子供が出来たのなら当たり前にしてる事』だって」


「「はぁぁぁぁぁっ!?」」


 アレンの言葉、もとい、セルカの最悪の置き土産にレイラとディアスは叫ぶ。


「無理無理!! アレンの前でなんて駄目に決まってるでしょ!!」


「そうだ!! アレンの教育に悪いだろう!!」


「『追伸、あれれぇ〜〜? ホッペにチューが教育に悪いなんて聞いた事ないけど? 何を想像したのかしらラブラブ夫婦さん♪』」


「「それ本当に書いてあるの(か)?!」」


 疑われたアレンはカチンと来てセルカにそのページを見せる。 それを見たセルカは項垂れる。


「どうなんですか先生!!」


「書いてある。 お前らがアレンを疑う事もな。 お前達、もういいから黙って従え。 アレンに嫌われても知らないぞ? これ以上は助けられん」


 アレンが見せたページには疑われたアレンに向けてのメッセージもあった。


『可哀想なアレン。 私の代わりに代弁してくれたアレンを疑うなんて酷いよね? 言う事聞かないなら、もう無視しちゃおう? セルカおばあちゃんと妹?弟?の子と楽しくやりましょ?』


 セルカの様子に震え上がるレイラとディアスは茹でたタコの様に真っ赤な顔で互いの頬にキスをするのだった。

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