第12話【妹とお説教】
更新が遅くなりすみませんでした。
熱中症で入院してました。
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夢の中でエリスとの別れを告げたアレンが目覚めると心配そうに自分を見つめるレイラとディアスがいた。
「お父さん、お母さん……」
「「アレン!!」」
アレンが目覚めた事を確認した2人は嬉しそうにアレンの手を握る。
「よかった……本当によかった……」
レイラは涙を流しながら安堵していた。
「アレン、どこか痛い所はないか? 気分はどうだ?」
ディアスは心配そうな表情でアレンに聞く。
「僕……どうして……」
状況が飲み込めないアレンは朧げな記憶を辿る。 そしてレイラの出産時の様子がフラッシュバックする。
「赤ちゃんは!?」
慌てて飛び起きるアレン迎え入れたのは、赤子の鳴き声だった。
「全く、起きて早々妹を泣かせてどうする? あの時のお前はどこに行った?」
レイラ達の代わりに抱いていたセルカが困ったように微笑みながらアレンを窘める。
「あか……ちゃん?」
「そうだ。 お前が守った妹だ。 よく頑張ったなアレン」
セルカは赤子をあやしながらアレンに微笑む。
「アレン、この子の名前はセレン。 セレン=リュミエールよ」
「セレン……」
アレンは起き上がり、セレンに向かって恐る恐る手を伸ばす。
するとセレンは泣き止み、アレンの指を小さな手で握り、笑う。
「きゃっきゃっ!!」
「おや?ディアスとは違い、アレンはセレンに気に入られたらしい」
「うっ、そ、そうだな……」
セルカの言葉の刃がクリーンヒットしたディアスは胸を押さえ、苦しそうに肯定する。
「ディアスがセレンを抱こうと手を伸ばした瞬間に大泣きしたからなぁ?」
「せ、セルカ殿、それは……」
「もう先生? 出産の後、いくらディアスが動揺してポンコツになってたからって、そんなに虐めないで下さいよ。」
「グハッ!?」
「お父さん!?」
今度はレイラからのクリーンヒット。 庇ったはずなのに大剣で身体を貫かれたようなダメージにディアスは倒れた。
「だがなぁ? 私でも笑ってしまったぞ? 雷の勇者とあろう者が娘に涙目にさせられて――」
「もぉやめてェェェ! お父さんの命尽きかけてるから! 風前の灯だから!」
「きゃっ、きゃっ!」
止めるアレンの叫び声を聞いても笑い続けるセレン。
「あ、アレン……」
自分を庇うアレンを捨てられた子犬のような目で見つめるディアス。 ちょっとシュールである。
「でもねアレン。 お父さんったら酷いのよ? 出産後に寝込んでる私とアレンをそっちのけで、セレンばかり――」
「……それって本当?」
レイラの言葉のにアレンの耳が反応する。 そしてトーンの落ちた声でレイラに聞く。
「さてさて、そろそろセレンを寝かさねばな」
セルカは何かを察してセレンを連れて部屋を出る。
「ど、どうしたのアレン? 確かにディアスはセレンにばかり気が向いてたけどちゃんと私達も――」
「うん。 お母さんは少し黙っててね?」
「あ、アレン……さん?」
アレンの様子の変化にディアスは身震いする。
「本当なんだね? 教えてくれてありがとう」
「あ、アレン? 誰と話してるの?」
独り言を呟くアレンを心配するレイラだったが、アレンの表情は寒気がする程笑顔だった。
「お父さん……」
「は、はい……」
「正座」
「え?」
「そこに正座!!」
「は、はいぃぃぃっ!!」
アレンの迫力が凄まじく、ディアスは反射的に正座する。
そしてアレンは正座するディアスの前で仁王立ちする。
「ねぇお父さん? 僕言ったよね? お母さんの妊娠が分かった時に、僕だけじゃなくて妹もお母さんも愛さなきゃって?」
「あ、ああ。 だから俺は……」
「僕だけならともかく、お母さんの心配は二の次? お母さんはセレンを産んだら用済みですか? そういう事ですか?」
「い、いや! ちゃんとレイラやお前の心配も……」
「問答無用!! そこの花達から聞いたよ! お父さん、お母さんにちゃんと『ありがとう』や『頑張ったね』って言って無いでしょ! 一番頑張ったお母さんに労いの言葉を掛けるのは当たり前! 違う!?」
「「!?」」
アレンの言葉に驚く2人、花の勇者の能力を開花している事に驚いていた。
「あ、アレン!? まさか花の言葉が――」
「今はそんなのどうでも宜しい! まずはお母さんに言う事は!?」
「は、はい……レイラ、アレンに言われてから気付いて言うのも申し訳ないが、とにかくすまなかった。 それと、セレンを産んでくれて、本当にありがとう。」
「い、いいのよディアス。 アレンもお父さんがちゃんと謝ったのだから、もう怒らないで? ね?」
「甘いっ!!」
「「は、はい!!」」
レイラにも怒鳴るアレンに2人の勇者が正座になる。
「甘いよお母さん! こういった小さな事が積み重なって熟年離婚に繋がったりするんだからね? セレンが生まれた以上、2人が離婚なんて事にならないように僕がしっかりと夫婦仲を保たないと! 特に2人は僕が生まれる時に別れたって前科があるからね!」
「「お、仰る通りです……」」
どうやらアレンお兄ちゃん、セレンの為に自分と同じ思いをさせないように怒ってらっしゃるらしい。
レイラとディアスも、アレンに話した話が話だけに反論出来ず、暫くアレンお兄ちゃんのお説教は続いたのだった。