プロローグ
初めましてリベと申します。
趣味で書いてる小説ですが、良ければご覧になって下さい。
友人に読まれて投稿した方がいいと言われましたが、あくまで趣味で書いてます。
プロの方やプロを目指す方達と比べればお粗末とは思いますが、是非ご感想もお聞かせ下さい。
神聖暦 785年……
バルム帝国の首都、オルニエル。
魔人族を中心に多くの魔族が住むこの街の中央に魔王が住む城、シュバルツ城があった。
そして、1人の勇者がそこに単身乗り込む。
「月の勇者だ!! 殺せ!!」
「魔王城に1人で乗り込むなど、ただの蛮勇!! 我等の敵では無い!!」
魔王城を守る衛兵達は果敢に月の勇者に向かっていく。
「……退きなさい。 貴方達に用は無いわ!!」
勇者が剣を振り抜けば何十という兵達が吹き飛ばされていく。
「つ、強い……」
「これが【アルテミス】……月の勇者の力か」
勇者は堂々と進んで行き、大広間に出た。 すると魔王城にある男の声が響き渡る。
『やはり来たか。 月の勇者レイラ=リュミエール……』
「ッ!? 魔王レオン!!」
月の勇者、レイラ=リュミエールは声の主が魔王レオン=メルキオールと分かり警戒する。
しかし、何か違和感を感じていた。
慈悲なき魔王と呼ばれるような覇気がこの声からは感じ取れなかったのだ。
『お前の目的は分かっている。 最上階の王の間に来るがいい』
「妹を攫っておきながら、よくもッ!!」
レイラが魔王城に1人で乗り込んだ理由、それは魔王に攫われた妹、エリス=リュミエールを助け出す為だった。
「エリスは無事なの!?」
『……来れば分かる』
そう言い残した後、レオンの声は途絶えてしまった。 レイラは首にかけられたペンダントを握りしめ、長く続く階段を睨む。
「待っててねエリス……必ずお姉ちゃんが助けてあげるから」
妹の救出を誓い、階段を駆け上がるレイラ。 だがその途中で魔族に襲われる事はなかった。
それどころか、階段を登った先に大きな気配が2つあるだけで他の気配はなかった。
罠かと考えたレイラだったが、敵の本拠地で悩む時間は無い。 疑問をひとまず振り払い、全速力で王の間へと駆け上がった。
そして王の間の前でレイラは剣を抜く。 エリスの物ではない大きな気配が2つもするのだ。 ましてや、ここに招き入れたのは魔王レオン。
レイラは最大限の警戒をして扉を開けた。 するとそこには寝台の前で跪く魔王の姿があった。
「エリス、君の姉が来た。 アレンを少しだけ頼む」
レオンは寝台に横たわるエリスに話しかけ、立ち上がってレイラを見据える。
レイラはその時のレオンを見て驚愕した。 何故なら彼の目からは涙が溢れ、流れていたからだ。
しかし目の前にはエリスが居る。 助け出すチャンスだと考えた。
「起きてエリス!! 私よ! レイラよ!」
眠らされていると思ったレイラはエリスに叫ぶ。 だが、彼女の反応はなかった。
「無駄だ。 彼女はもう……目覚める事はない」
「レオン!! 一体エリスに何をしたの!?」
レイラはもう何がどうなっているのか分からなかった。 目覚めない妹、涙を流す魔王、それら全てがレイラの予想を遥かに超えていたのだ。
「彼女は……自身の命と引き換えにアレンを守ったのだ。 母として、息子の命を……」
「アレン? 母として? 何を言っているの?」
レオンの言葉を聞いても理解出来ないレイラ。 するとエリスの横で寝ていた赤ん坊が泣き出した。
「俺は……父親として、何も出来なかった。 愛する者を守れなかった」
「!?」
その言葉でようやくレイラは理解した。 今泣いている赤ん坊は魔王レオンと勇者エリスの間に生まれた子供なのだと。
そして、エリスは死んだのだと……
「エリスの姉である貴様には俺を殺す権利がある。 だが、願わくば、俺の最後の願いを聞き入れてくれ」
「な、にを……言ってるの?」
レイラは頭が真っ白になった。 勇者である妹が敵であるはずの魔王と子を成した。
そして、そのせいでエリスが死んだ。 レイラは憎悪の渦に飲み込まれ、狂いそうになる。
「俺達の息子を、人として育てて欲しい。 その為なら俺のこの命、和平の為に差し出そう」
レオンはそう言って両手を広げる。 レイラは怒りで身体が震える。 しかし右手に持った剣に魔力が集まっているのが分かった。
「アレンはエリスと俺の最後の希望だ。 父として、この子の為にならこの命、幾らでもくれてやる」
「ふざけないで……」
レオンがそう言った瞬間、床を蹴り上げ、一気に間合いを詰める。
そして剣に集まった魔力で月の勇者に与えられた奥義、《ホープルミナス》を発動する。
「ふざけないでよぉぉぉぉぉ!!」
怒りに身を任せたレイラの一撃が無抵抗だったレオンの心臓を貫く。
レオンは血を吐きながらも、エリスとアレンの方を向き、語りかける。 その様子にレイラは驚愕し、動けなくなった。
「すまないエリス……やはり俺はアレンを人として育てた方がいいと思う。 だが……アレンが平和になった世界で成長する姿を君と見れない事だけが……無念だ」
今にも燃え尽きそうな命の灯火、そんな状態でレオンはエリスの元へ歩き出す。
「もし、平和な世界で生まれたなら、俺は魔王レオンじゃなく、ただのフレディ=アドルフとして、君と……アレンと共に幸せな家庭を築けたのかもしれないな」
そしてエリス達の元へと辿り着いたレオンは泣いているアレンの頭を撫でる。
「目は俺に似てしまったが髪はエリスにそっくりだ。 アレン、君からも母を奪ってしまったな。 許してくれ。 願わくば、君が平和な世界ですくすくと成長する事をあの世から……祈って……」
そして遂に魔王レオンは息絶えた。 残されたのはアレンとレイラ。
物語はここから始まるのだった。
全ての始まりです。
次は幼少期編となります。