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かつての理系女は聖女様代理に呼び出される

 次の日昼食後教室でだべっていると、副担任のローザ先生が教室にやってきた。

「アン、授業終了後、校長室に行きなさい」

「はい」


 教室はシーンとしたが、ローザ先生が出ていくとクラスメートたちに囲まれた。

「アン、あんたなにやったの?」

「なにもやってない」

「それとも昨日のあれかな?」

「うん、きっとそうだ」


 さて放課後。校長室にアンは行った。ノックし入室すると、校長先生以外に3人の男性がいた。他に魔法担当主任のザラ先生、副担任で魔法担当のローザ先生もいた。女学校に男性職員が居ないわけではないが、ごく少数、しかもほとんど高齢と行ってもおかしくない人がほとんどだ。しかし今目の前にいるのは、中年くらいのオジサマたちである。若ければ高学年の生徒たちがキャーキャーいいそうだ。オジサマたちは応接セットに座っていた。

 そしてアンの入室を見て、オジサマたちは立ち上がった。

 

 校長先生も立ち上がり、アンを紹介してくれた。

「みなさん、こちらがお話したベルムバッハのアンです。アン、こちらが神官長のルドルフ様、武官長のマティアス様、医官長のミハエル様です。ご挨拶なさい」

「ベルムバッハのアンです」

 挨拶しろと言われても、そもそもなぜ呼ばれたかもよくわからず、それ以上言う言葉が出ない。

「みなさん、おかけください」

 ローザ先生がアンに応接セットの末席をすすめた。横にはザラ先生が座り、ローザ先生は予備のイスを持ってきて座った。

「聖女代理のジャンヌ様はもうすぐいらしゃるとのことですので、ちょっと待ちましょう」


 校長室に呼ばれる事自体大変なことだと思っていたが、神官長・武官長・医官長という行政のトップクラスに加え、聖女代理のジャンヌ様までいらっしゃるという。

 なんだかどえらいことになっているなと、アンは思った。

 

 間もなく、ジャンヌ様がやってきた。

「お待たせいたしました。聖女代理のジャンヌです」

 一同立ち上がって挨拶する。アンも慌てて立つ。ジャンヌ様はそれを手で抑え、着席された。

 

 アンから見てジャンヌ様は五十前くらいと前の聖女様よりは若そうで、やはり美しい方だ。うわさでは長年前の聖女様に仕え、その仕事ぶりは高く評価されていた。

 そしてアンの目を真っ直ぐ見ておっしゃった。

「あなたがアンですね」

「はい、よろしくお願いいたします」

 何をお願いするのかよくわからないが、とりあえず言ってしまった。

「こちらこそよろしくね。で、昨日の魔法実習の話だけど……」

 やっぱりその話か、とアンは思った。

 

「アン、あなはたはどういうふうにあの魔法を使ったの?」

 ここは嘘をいっても仕方ないと思い、この世界の人に分かる範囲で正直なことを話すことにした。

「はい、はじめ全力で、と言うお話でしたのでかなり強力なイメージで魔法を出そうかと思ったので、ちょっと危ないかと考えました。それで、魔法を切り替えようと思ったときに、知り合いの人のことを思い出してしまいまして、その人が私の年くらいのときはどんな感じだったのかなぁと考えてしまったら、ああなりました」

 するとオジサマたち三人は天を仰ぎ、校長先生はうんうんとうなずき、ローザ先生はかたまっていた。ジャンヌ様は、話を続けた。

「そうですか、それがあなたの若返りの魔法だったのですね」

「若返りの魔法ですか? べつにみんな若返ったように見えませんでしたが」

「先程の知り合いの方は、今何歳ですか?」

 修二くんは二十四歳だと思うのでそう伝えると、

「そうすると24ひく8は16、あそこには生徒、教員で45人いましたから、ほぼ皆3分の1歳ほど若返ったはずです。だから見た目にはわからないのでしょう」

「はあ」

 すると今度は武官長のマティアス様が発言した。

「昨日のやめた魔法だが、具体的にどのような効果が考えられるのだ?」

 陽子線を水銀ターゲットにあててできる中性子線のことだろう。専門外なのでよくわからないが、染色体が木っ端微塵に破壊され、新陳代謝が行われずじわじわと死に至るはずだ。しかしこの世界の文明レベルで理解できると思えず、

「ゆっくりと内側から死んでしまうと思います」

「それは一人かね?」

「いえ、私を含め、全員です」

「それは使いにくいな」

 再びジャンヌ様が聞いてきた。

「それと、入学式にあなたがやった祝福ですが……」

「あ、あの、私、祝福なんてしてませんが」

 校長先生が口を挟む。

「あの光、あなたの部屋から出たことを、つきとめているのよね、ローザ先生」

「はい、寮すべての部屋から聞き取りをし、光の方向からアンの部屋でまちがいありません」

 意外と科学的に調べ上げていた。これはいかんと思い、

「ローザ先生、私はこうやって聖女様の真似をしただけで……」

と言いながら両手をバンザイするように広げた。

 すると、またも金色の光が両手の間から広がってしまった。

「ほらね」

 ジャンヌ様がにっこりと笑った。

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