表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

仮設風向計/詩集その3

23.6.29

作者: 浅黄悠

 深夜2時に羊の唸り声が聞こえた

 野菜が腐っている……

 現実の平穏さに救われながら目が覚めるけれど

 別の悪夢に着地しただけの様にも思う


 全く老人になるまで

 針に糸を通せないままでいるのかもしれない

 誰にも顧みられないままで死ぬ

 そうならなければいいけれど

 まるでそうであってほしいかのような

 悲しみに自分から陶酔しているような


 とても優しい言葉だって溢れているのに

 風を見るぐらい心に響かなくて

 困っちゃうな


 もう貴方に嫌われてもいいんだ

 興味を持たれなくてもいい

 忘れ去られてもいいから

 梅雨晴れに金色の霧がかかる夕焼けを

 ちゃんと綺麗だと思っていたい

 貴方という存在なんか知らなかったんだ

 たとえそんな結論を出したとして

 夢が全て感情を超えてくれているなら

 苦労はないよね


 食品売り場のサーモンの切り身が

 列になって跳ねることはないし

 映画に出てくるような美しい海にも

 実際に行ったことはないよ

 泥沼な頭でたまに吐いてもいいから

 視力の悪い世界を落ち着いて眺めるんだ


 もし悪夢から逃げている途中だというなら

 包丁を振り回さないでね

 アクセルをガン踏みするのも駄目だし

 電子機器を投げ飛ばすのもやめよう

 修理代高いしさ

 破壊的なことは誰にでもできるけれど

 警察沙汰にならないように

 これ以上誰かに迷惑をかけないように

 ちゃんと一人でお味噌汁を作るんだ


 本当に生きていくことができたなら

 束の間の息継ぎではなく

 どこまでもいつまでも優しい夢を続ける

 そして僕たちは海沿いを通る電車に乗って

 月までも旅をするのだろう


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ