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教える陰キャ(勉強会、開催します)

「ごめんこれ教えて!」「助けて!」


 物理の授業が終わり、一週間も同じく終了しようとした時。竜田と千葉さんがで僕の方へ駆けて来た。


「今日習った範囲?」


 僕が尋ねると二人は首を横に振り、開いた教科書を見せつけてきた。


「ここ!」


「ああ、ここは……」


 あやふやな範囲を聞かれたらどうしようと危惧していたが、実際は僕もある程度覚えている範囲だった。恥をかかずに済んでよかったよ、ホントに。


「なるほど、ありがとう!千葉さんと一緒に悩んでたけど、一切わかんなくてさ」


「別に苦手な範囲だったってだけだし。物理は成績悪くないし」


「『物理は』って言ってるけど、千葉はどの教科も点数いいじゃん」


 夏休みに遊んだ際に課題の話になったのだが、その時は利根さんを除き全員が終わっていた。そこからテストの話題に移ると、千葉さんは「平均以下取ったこと無いかも」と言っていた。結構鮮明な記憶なので、おそらく間違いないはずだ。


「まぁね。予習復習してるんだから、ざっとこんなもんよ!」


「僕も見習わなきゃねー」


 竜田はたしか、科目や単元によって振れ幅が大きい……って言ってたっけ。僕は苦手なものでも下振れる事は無いのだが、同時に上振れも存在しない。いつも平均周辺を彷徨っているのだ。低い点数を取らないだけ御の字と常日頃から思ってたりする。


「そういえば三学期の中間も近いよね」


「そだねー。2週間後だっけ」


「だな」


「じゃあさ、せっかくだし勉強会でもしない?」


 千葉さんが「いいこと思いついた!」と言わんばかりの笑顔で提案を持ちかける。勉強会……おそらくいつものメンバーで、だろう。


 嬉しい反面、僕なんかに貴重な高校生活を費やしても良いのだろうかと心配になってしまう。千葉さんや利根さん、竜田ならもっと良い青春を送れそうだと思う。

 僕の自己評価は特段低いというわけではないので、多少の思い出になれるとも思っているが、それでも上には上がいることも理解している。いわゆる1軍というメンバーに加わる事だってできるはずだ。まぁ千葉さんに関しては、そっちのほうがストレス溜まりそうだが。

 と、そんな事を考えても、結局は誘われるのが嬉しいのでノリノリで乗っかる形で落ち着く。一人でいるのも好きだが、誰かといるのも悪くないと、最近思えるようになってきた。


「じゃあどこでやろっか。ウチは親がなぁ」


「今ちょうど葵さんいないし、僕のとこはどう?」


「いーじゃんいーじゃん。部屋数もあったよねたしか」


 ん?部屋?


「じゃあ決定!じゃあまた明日の10時にね!まふには私……じゃなくて、竜田から話し通しといて!」


「なんで僕!?」


「いやほら、カレシだし。なんか二人だけの話とかしたいっしょ」


「余計なお世話だよ、まったく」


 文句を垂れながらも竜田はスマホに文字を打ち込む。ちなみに利根さんは選択科目が生物なのでこの場にはいない。


「それじゃまたよろしく!」


「1週間おつかれ〜」


「あ、うん。お疲れ様」


 二人が各々帰宅準備をしているが、僕の脳内には疑問が生まれていた。


 なぜ部屋数の話になった?僕が考え込んでしまったばかりに、何か大事なことを聞き逃してやしないか?聞き逃したとするなら、その内容は見当がついている。僕は思わず無意識に、僕なりにひねり出したその答えを口にした。




「……泊り、ってことか?」

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