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片付ける陰キャ(二学期も終了)

「祭りの後こそ、気を引き締めなきゃいけないのよ!」


 ある作品の、ある少女が無い胸を張って言っていた。


 もちろんメリハリが大事という意味だ。楽しいだけが祭りじゃない、美味しいだけか料理じゃない。その後の片付けまでがワンセット、帰るまでが遠足というやつだ。


 現在、二学期の終わりということで皆浮かれている。まぁクリスマスが目の前まで迫っているのだから無理はないと思うが。


 ホームルームでは神戸先生が「あまりハメ外しすぎるなよ」と注意していたが、大掃除中の今もいつもよりソワソワしていると言うか、落ち着きがないというか。


「窓掃除は終わりだな」


 キャッキャウフフと談笑しているクラスメイトを横目にせっせと掃除を終わらせる。別に急いだところで帰りが早くなるわけではないが、やることがない僕みたいな人間は働きでもしないと手持ち無沙汰で逆に辛い。まだこうやって動いていたほうがマシなのだ。


 どっ、と笑い声が聞こえてくる。話が盛り上がっているようでなにより。こんなところを千葉さんや利根さんに見られたら大変なことになりそうだ。


 いやこれはフラグとかではなく、単純にそう思っただけだ。彼女らは化学室の掃除をしているので教室に帰ってくるまでまだまだ時間はあるし、見つかるわけがない。竜田も同じくこの場所には居ないので、どうこう騒ぎが起きるわけがないのだ。


「……」


 黙々とほうきを掃く。掃除は嫌いではない。目に見えてきれいになり、まとめたホコリを捨てる事に多少の快感を覚えるレベルには好きだ。だが、片付けは話が別で。


 そもそも掃除はホコリなどを払いきれいな状態にするための行為で、片付けは物を整理整頓等するという作業だ。似て非なるものに他ならない。ので、僕と葵さんの馬が合わないことがあるように、僕も掃除が好きでも片付けは嫌いなのだ。


「……」


 流石に教室ほどの広さとなるとこんなふうに少し考えただけでは終わりはしない。まだ半分にも満たないというのに、机を動かして前列も綺麗にしなければならないとなると、気が滅入る。やっぱり手伝うように言うべきか、いや空気読めない陰キャとして陰口叩かれる。陰口だけなら良いが、目の前で言いかねない。というか僕に話しかける度胸はない!


 取り敢えず後列は掃き終えたので、仕方ないが頑張って机を動かしていく。二学期も終わるというのに何故か机の中に荷物を置きっぱなしの人が多い。ここで持って帰らずしてどうしよあと思っているんだ?単純に疑問だ。


「重っ……」


 陽キャさん達は面も振らずに駄弁っている。そろそろ手伝ってくれてもいいがするんですけどねぇ。


 僕のその思いが届いたのか、助け舟がやって来た。


「おいお前ら、掃除しろよ」


 通りかかった神戸先生が陽キャに注意する。ありがたい。これでやっと一人でやらずに済むわけだ。


 と、普通は思うだろう。しかし人間とは愚かなもので、注意した本人がいなくなればすぐにまたサボり始める。


「神戸だりー、てか掃除とかしなくても変わんないっしょ」


 ほら見たことか。


「ねー。てかさっきの続きなんだけどさぁ――」


 腹は立つが被害者は自分だけなのでまぁ別にいい。怒ったところで何か変わるわけでもない。むしろ悪化しそう。


 そういえば最近は来てたのに、今日は御杖来てないな。風邪とかかな。でも竜田はいつも通りだったし、寝坊とかの可能性のが高そうだな。


 矢継ぎ早に話題を変えて、怒りを感じる隙間を埋めていく。よし、まぁこの調子でやればなんとかなるだろ。





「きりーつ、例」


「ふぁー、終わったね。おつかれさま」


 竜田が僕のもとにやって来る。相当疲れている顔だ。


「お疲れ様」


「あはは。そういえばさ、クリスマスの話千葉さんから聞いた?」


「ん?どんなの?」


 一応知ってはいる……というか、首謀者側なのでバリバリに知っているのだが、どこまでどう伝えているのかがわからないため、知らないフリをしてみた。


「クリスマスに遊びに行こうって話。ソウスケ君も誘われてると思ったんだけど」


「ああその話か、僕も丁度この前誘われたよ」


「そっか!じ、じゃあやっぱり来るのかな……」


 利根さんの事を相当意識しているようだ。やっぱりなんかあっただろ、修学旅行の時。


 ここで逆に否定しても意味がないので「来るんじゃない?」とやんわり肯定する。やっぱりいつ見ても真っ赤な顔は面白いな。


「お、鴨川たちも一緒に帰ろー!なんなら帰りにファミレス寄らない?」


「噂をすればなんとやら……うん、そうしよう」


 いつもなら「あっはい」的な返事しか出来なかっただろうけど、実はこの誘いは千葉さんの気まぐれとかではなく、事前に打ち合わせしていたものだ。


 クリスマスに向けて改めて集まっておくことによって、より相手のことを意識する〜だとか言ってた気がするが、正直覚えてない。


「あっ、ど、どうも……」


「ど、どうも」


 お見合いかよ。


「それじゃ善は急げだね。早速向かおう!」


 その後、空が暗くなるまで話し続けた。途中で、たまたまサボっていた御杖と出会い、5人で駄弁ったが楽しかった。


 そういえば教室を出た時に神田先生が陽キャ達を呼び出してたけど……いや、流石にそんなにうまい話は無いか。




「おや、今日もファミレス帰りか。すっかり仲良くなったね。


 ふむ、ちなみに私は掃除も片付けも得意だ。そもそもとして使ったものは即座に元の場所に戻しているからね。ソウスケ君もそういう事を心がけたら少しは片付けが得意になるかもしれないよ」

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