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きみつの陰キャ(誰にも言えない、言っちゃいけない)

「実際さ、どう思う?」


 現在は放課後。いつぞやのように千葉さんと二人でファミレスにいる。だが前とは違い「帰りたい」という気持ちは小さい。


「私が見た限りだとやっぱり何かあった気がするんだよねー、あの二人」


「竜田はいつも通りだけど、利根さんは明らかに気にしてま……気にしてるよね」


 二人きりというのも相まって思わず敬語で答えかけてしまう。千葉さんがむっとした顔で見てくる。


「私と距離とりすぎじゃない?いや、物理的にとかじゃなくてさ」


「まぁ、これまで女性と話す機会が全くなかったしそれで」


「いやいや、女子としてじゃなくて普通に友達としてで見ろし」


「友達……」


「え、友達もいたこと、ない……?」


「……」


 やめろ哀れみの目で見るな。自分がつまらないかどうかは自分で決めるって前にも言った……のは脳内か。言ってねぇや。


「とにかく、その話は今必要じゃないでしょ」


「あ、うん、そうだね、ごめん」


 謝らないでくれ。気遣いいらないから。むしろ辛いから。


「まふと竜田、付き合うのかな」


 千葉さんはグラスを持ちカランと音を鳴らす。


「まだその段階でもないような気がするけど」


 目のやり場を失い、メニュー表をチラリと見る。


「うーん、でもまふもまんざらでもなさそうなんだよねぇ。竜田も言わずもがなだし。はよくっつけ!このやろー!」


 酔っぱらいかよ。


「未成年飲酒はダメだよ」


「あ、はい」


 声に出てしまっていたらしい。気をつけなければ。


「それで、話したかったのはそれだけ?」


 元々はもう少し話そうと思っていたが、ちょっと心にダメージを負ってしまったため早くも帰りたいと思い始めていた。


「いや、本題はここから」


「ここまで前座だったのかよ」


「二人をいい感じ〜にくっつけるために!クリスマスに遊ぼうと思います!」


 店の入口から入店のベルが聞こえてくる。店員さんの声も聞こえた。


「反応なしは酷くない?」


 反応なし、といえば確かにそうだが、ちょっと違う。反応しきれていない。突拍子がなさ過ぎて、突然過ぎて、あまりにも理解しずら過ぎて。


「あ、ごめん。えっと、クリスマス?」


「そ。私とまふと竜田と鴨川……他にも葵さんとか、不服だけど御杖を呼ぶのもありかも。面識無い人が居たら来ないでしょ、鴨川」


「アッハイその通りで」


 千葉さんも僕がどういうやつなのか、結構知っているようだ。悪い気はしない。


「詳しい内容とかは今後決めていくとして……取り敢えず、これは私たちだけのヒミツってことで!」


「う、うん」


 千葉さんはその途端に机に伏せる。決めたかった事が決まって、気が抜けたのだろう。虚ろな目でスマホをポチポチと触っている。


 こうしてみると、千葉さんは普通にギャルにしか見えない。本当は真面目で厳しくて、友達思いの優しい人だけど。まぁギャルの側面もあるのであながち間違いではない気もするが。


 とすると、僕は今ギャルとふたりきりでファミレスにいるわけで。ううむ、過去の自分に伝える手段があっても信じないだろう。


 竜田や御杖といった男子だけでなく、葵さんに千葉さん、利根さんといった女性陣の知り合いもできた。未だに夢の中かと疑ってしまう。まぁその分人間関係というやつを改めて知ることができたわけだが……しかし、一人でいる時よりも心なしか楽しいと感じている……ような気もする。


「ん〜!話も終わったしお腹もタプタプだし、そろそろお暇させていただきますか〜っと」


 千葉さんが伸びをしながら言う。こんなにいい気持ちをさせてもらってるんだ、男ならここぐらいビシッとしなきゃ。


「じゃあ僕が払ってくるよ」


「えっ、いやいや、呼んだの私だし払わなくていいって」


「それなら風邪の時のおかえしってことでいいですよね」


「あー、えっと、あれは私が!善意でやっただけだから!気にしなくて良いよ!」


「それならこれも僕の善意です」


 一歩も譲らないつもりだと判断したのか、千葉さんはため息をつき「じゃあ割り勘」と言い放った。初めて千葉さんとこんなに言い合えたかもしれない。


「じゃあまた例の計画について連絡するかもだから、ちゃんと通知見ててね!あと、今回は葵さんに言ったらぶん殴るから!」


「はい……」


 例の計画とか中学生でもしない言い回しだぞ。


 僕は今日、人生で初めて、自主的に、ヒミツとやらを作った。



「おかえり、ソウスケ君。今日は遅かったね。……ああ、ファミレスで。にしても、随分と仲良くなったね。ソウスケ君に友達が出来るとは夢にも思わなかったよ。いや、これはその、悪口とかではなくてね?」

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