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疑う陰キャ(思考を止めるのは愚者の行いだ)

「まず疑う、次に探求する、そして発見する」


 とある歴史学者が残した言葉だ。僕は地味に好きな言葉でもある。


 疑いや疑問というスタート地点から、探究のプロセスを用いてゴールを見つける。知るということは疑いから始まるといっても過言ではないだろう。


 昨今の作品では「信じているからこそ教えて欲しい」だとか詭弁を並べる者も多いが、信頼信用も疑いの先にあるもの。正しくは「信じているから」ではなく「信じたいから」または「信じているか」だと僕は思っている。


 せっかくなので僕も何かを疑ってみることにしよう。例えば学校、もとい学生について。


 『社会に出ても学んだことは使わない!』


 だなんて、さも演説かのように愚痴を垂れる学生も少なくないだろう。では実際に社会に出ても使わないのか?


 まぁ使わないだろう。いわゆる一般人ならば簡単な四則演算や文章作成ぐらいしか使う機会はないと思う。


 しかし、だ。専門職となると話は変わる。設計には数学も使うし、医者は生物や化学の知識だって使うだろう。そういう職業を目指すきっかけとして存在するとも言える。


 だがそれだけではないと、僕は考えている。


 『教養』『一般常識』そういうものが詰まっているとも言える。「じゃあその常識のハードルも下げれば要らないじゃん」とも思うかもしれないが、それは早計だと思う。


 義務教育は全員のスタート地点の底上げをしてくれる。『四則演算を習う』と『微積分を習う』では全く違うように、義務教育が発展学習のスタート地点を大幅に進めている。


 また、これも個人的な意見になるが、一般常識とは共通認識に他ならないとも思っている。共通認識があるからこそ会話は成り立ち、それがコミニュケーションの種になるというわけだ。


 『精神的に向上心のないものは馬鹿だ』『そうかそうか、つまり君はそういうやつなんだな』『ごん、お前だったのか』


 これらも全て義務教育の賜物だし、もし知らないのであれば異端とされる。義務教育とは一般常識で、それは共通認識。そう僕は結論づけよう。



 さて、当初の目的の『疑う』は出来た。自分なりの答えも出せた。これも『探求』の一つだろう。多分。あとは『発見』、真の答えを探すだけだ。葵さんに聞こう。


 と、思ったは良いが家までまだまだ距離があるな……。


 他に疑うこと、疑うこと……。


「……」


「……」


 そういえば、さっきから見かけない人が僕と同じ道を僕とほぼ変わらない速度で歩いている気がするが。いやまさか、僕のストーカーだとかそういうわけではないとはわかっている。だがそれでも後ろを歩かれると気になってしまう。


 意を決して振り返ると、そこにいた少女の肩が跳ねた。驚かせてしまったか?


 少女の様子を、怪しまれない程度にちらりと一瞥する。


 制服はおそらく同じ高校。リボンの色からして同じ学年だろう。しかし、これまでこの道で出くわしたこともなければ学校で見た顔でもない(僕が人の顔を覚えていないだけの可能性が高いが)。


 もしかすると転校生か、はたまた制服を着た不審者か(前述の通り普通に在校生の可能性が一番高い)。


 とまぁ疑って探求もしたが、この答えに関しては本人に直接聞くしか無い。ので、僕は諦めて歩く速度を少し速めて帰宅するしかなかった。


 通報とか、されないよな?




「ふむ、義務教育の理由か。いつの時代も学生の文句は変わらないようだね。私も同級生のその言葉を聞いて一度調べたことがある。なんでも『自立のための基礎能力を高めるため』やら『生きる力を身に付けさせるため』だとかがヒットしたのは覚えている。まぁソウスケ君の考えもあながち間違いではないだろうね。


 私?私は別に疑問に感じたことはないね。調べる前に考えた時もたしか『勉強という形で幼い頃から努力する力を身に付けさせるため』と解釈していたよ。もっとも、私自身は人並みの努力とやらをしてきた覚えはないけどね」

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