綺麗な陰キャ(心はそこまでキレイじゃない)
「美しい思い出はいつまでも心の中に!」
ある作品の少女が小さな胸を張って、何かの本の受け売りを偉そうに語っていたのを思い出す。
そしてふと、これまでのことを思い出す。今がきつくても過ぎればただの思い出。今の自分からすれば黒歴史すら美しい思い出にも思える。
ああ嘘ついた。嫩さんの件については未だに美しい思い出とは言い難いや。まさかアレが嫩さんだったとは……。
思い出といえば葵さんと出会った時のも懐かしいな。敵意丸出しで怖い人かと思っていたけど、関わってみるとただの変人だったんだよな。
竜田や千葉さん、利根さんとも出会った。竜田はいいやつだし、千葉さんはあれでもルールを大切に思ってるし、利根さんは……真面目だし?
思い返しても利根さんだけ関わりが少ないな……。それでも他と比べると多い方だとは思うが。
竜田とはたまに遊んだりもしてるし、千葉さんはラインで愚痴を書いてくる。やはり利根さんとは個人個人としてあったことはないのだろう。一切思い浮かばない。
閑話休題。美しい思い出は心の中だけじゃなく、形として残すことだってできるできると思う。例えば写真。例えば絵。
その様子を映しているものだけでなく、いわゆる思い出の品と呼ばれる類だってある。もちろん、それ以外の物達にも思い出は籠もっているだろう。
僕のこの制服も、深い思い出は思い出せなくとも、学校生活の全てを共にしたのには変わりない。靴も、カバンも、全ての物に思い出は残っている。
今の考えと最初の言葉を組み合わせると、物にも心や魂が宿っているとでも言いたげな気もするが……それが嘘でも本当でも、物を大切に扱おうと改めて思えた。
「相変わらず話の着地点が全く関係のない場所だな。面白い。
私も物にも魂はあるというのはそこまで深く考えた事はない。もしかしたらあるのかもしれないが……殆どの人はそんなものは無いと否定するだろう。
だからといって物を雑に扱っていい理由にはならないだろうがね。……おっと、ソウスケ君と同じことしか言ってないな。じゃあここは話の起点である美しい思い出について話すとしよう。
あれは私が高校生の頃――ってあれ?ソウスケ君?何故無視をする?おーい?」




