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暴露する陰キャ(暴露を聞く側だが)

「さてソウスケくん、私から色々と事情を話してやろう」


 葵と名乗る女性は何故か胸を張り上から目線で言った。


「……単刀直入に言ってください」


「ヤダ断る」


 どうやら簡潔にまとめるのは無理らしい。僕は諦めて話を聞くことにした。不本意だが。


「まず私が生まれたときの話なんだが……」


「流石にそこは飛ばせますよね」


「ふむ、ここからが面白いというのに」


「そのペースで面白いのなら僕が途中で笑い死にます」


「それもそうだな。じゃあ大学受験の時から話そう」


 それならまだマシか、と思い僕は改めて葵さんの方を向く。


「私は理系だったんだ。小中学校の話をしていたらこれは伏線になっていたのだが……今回はカットせざるをえない。あれは傑作過ぎるからな。


 さて、そんな理系だった私は受験する大学も決めていて、人生プランもカンのペキだった。


 もちろん大学は現役合格した。まぁ私の性格的に祝ってくれる友は数人ぐらいだったが」


 数人でも多いわ、こちとらゼロだぞこの野郎。と思ったが言わないでおこう。話が長くなる。


「大学では色々なことをしたさ。入学早々にナンパされたり、テニスサークルに所属してる先輩に俺が勝ったらサークルに入れと言われて零式ドロップショット打たれたり……あ、ちゃんと勝ったぞ?」


「……」


 零式ドロップショットって、あの漫画の技だよな……?何故使える人がいるんだ……。


「そして一年の夏。海に行ったら鮫に襲われてな、刺し身で食べてやった」


 最早運動神経バツグンとかの話じゃ無いな……いや、流石に冗談だろう。そう信じたい。


「このペースだと夜中まで続きそうなんですけど」


「はは、ソウスケくんも高校生だ。そのくらい苦ではないだろう」


「起きてるのは苦じゃないですけど話を聞かされるのは苦でしかないです」


「まったく、これだから会話をする気がない人は嫌いなんだ」


「こんなんだから会話を好む人種を理解できませんね」


「「……」」


 やはり気が合わない。葵さんいわく初めて出会ったわけではないらしいけど、昔もこんな感じだったのだろうか。


「……はぁ。仕方ない、大学院まで話を飛ばそう。今度別の機会に話させてもらうとするよ、ポンポン過去を語るのもアレだしね」


「大学院からとかじゃなくて要点だけ話してくださいよ」


「さっきも言ったが会話とは流れだよ、ソウスケくん。無駄な発言なんてこの世には無い。だから、私は要点だけを話すだなんてことは……今回はしてやろう」


 とことん気が合わない人だと思った。


「大学院で運命的な出会いをしたわけでもなく、テキトーにバイトしながら通学して、首席卒業した。


 そして卒業前に就職が決まっていた会社があってだな、会社の寮に住もうと思ったのだが手違いで部屋が足りなくなったんだ。


 そのことを母に話したら、ソウスケくんの事を聞いたってわけさ」


 なんで葵さんは文武両道なんだろう、神は二物どころか三も四も与えてそうだ。そしてさらっと巻き込まれている僕。


「あー……なるほど。賃貸物件とか考えなかったんですか?」


「え?二人のほうが出費を抑えれるじゃないか」


「まぁ金銭面はありがたく思いますけど、葵さんと二人はちょっと……」


「おや、悲しいぞソウスケくん。悲しくてここに住んでしまいそうだ」


「悲しみのあまり家出しないかなこの人」


 とまぁそんなこんなで。


 納得はできないがこの部屋をシェアすることになった。広さ的に一人ぐらし用の部屋だから狭く感じるが、葵さんの荷物が少なかったのでそこまで窮屈でもない。


 ちなみに余談だが葵さんは僕と気が合わないだけであって、良識人ではあるし優しい人だと思う。食費と光熱費、そして家賃の半分まで負担してくれている。本人いわく「安く済んでるし、勝手に住んでる身だ。これくらい当然だろう」だと。


 人と関わるのは苦手なのでこれからが不安だが、少しだけ楽しんでいる自分もいることは否定できない。これからどうなっていくのやら。

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