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存在しえない・心(夏休み2週間目)

『鴨川くん聞こえるー?』


 電話越しに竜田の声が聞こえてくる。今日は竜田と一緒にゲームで遊ぶ約束をしていたのだ。


「うん、聞こえる」


『良かったー。じゃあフレンドコード言うからよろしくねー』


「はーい」


 さて。今日一緒にやるゲームなのだが、最近若者に人気なゲームらしい。


 僕も二日前に初めて触ったが面白い。インクを塗り合って最終的に自分たちの色のインクが多かった方の勝ちというシンプルなゲームなのだが……それが面白い。


 武器や装備によって全然立ち回りが変わってくる。シンプルなルールの上にシンプルな武器や装備。子供から大人まで楽しく遊べるからこそここまで人気が出ているのだろう。


『あ、そういえば《《千葉さんたち》》も一緒にやるんだけどいいかな』


「!?!?」


 ちょっと待て聞いてないぞ。千葉さんは身内や先生以外で僕が話せる唯一の女性だ(葵さんは親戚だが身内と言って良かったのか)。


『あれ、大丈夫?』


「あ、うん大丈夫。でもなんで千葉さんなんだ?」


『ああ、終業式のアレの後少し話してさー。それで校外学習のメンバーでやろうって話になって。あはは、伝え忘れててごめんね』


 もうなんでもいいや、と初めて友人と遊ぶ僕はそう思ったのだった。


 ……ん?校外学習のメンバー?




「右上にスナイパー!逃げきれたけど倒せてない!」


『私に任せなさ〜ぁぁぁぁ!!死んだぁぁぁぁ!!』


『何やってんのさそそぎちゃん!』


『利根さんそこ危なー……あ』


『まふうううう!!!!』


「……」


 正直うるさいのは苦手だし自分からは近寄りたくないと思っている。陽キャなんかもってのほかだ。


 しかしだからといって憧れがないわけでもない。僕だって友達がほしいと思うこともあれば遊びたいとも思う。


 だからこそ、少しだけうるさいとは思ったがそれ以上に楽しいと思えた。人生一番の思い出とも言えるだろう。


 そんなこんなでいい気分で遊んでいたのだが。


「ソウスケ君ただいまー」


 葵さんが帰宅した。朝起きたらいなかったから仕事かと思っていたが服装的にどうやら友人と遊んできたらしい。


 ちなみにラフな黒一色のシャツだ。この夏にそんなものを着て熱くないのだろうか。


 そうこう思っていると、電話越しでもわかるぐらいに女子達が興奮していた。


『『鴨川君って彼女いたの!?!?』』


「同居人です!」


『『同棲まで!?!?』』


「はとこです!!」


『『は、はとこと付き合って……!』』


「そもそも彼女じゃないです!!!」


『『婚約者!?!?』』


「……」


「ソウスケ君に友人だと……!?」


「葵さんは黙っててください面倒なんで」


 JKの恋愛脳による妄想力、恐ろしや。




『なるほど……葵さん。私、千葉せんよう そそぎって言います。先程は失礼しました』


『私は利根 真冬です。私もとんでもない勘違いを……』


「いやいや、私もソウスケ君に女友達がいることをしれて嬉しいよ。これからも仲良くしてやってくれ」


「やめてください恥ずかしい……」


 そもそもこの二人を友達と呼んでもいいのだろうか……?


「そして……竜田くん久しぶりだな。電話越しですまないね」


「いえいえ〜。葵さんも元気そうで良かったですよ」


 そういえば1回家に来た時に会ってたっけ。というか学校で毎日の様に会っている僕ならともかく一度しか会っていない葵さんが竜田の声を覚えてたことに驚きだ。


「さて、友人と遊んでいるのなら仕方ない。今日は祝いも兼ねて私が料理しよう」


 その後はまたゲームを再開し、叫んだり笑ったりして楽しんだ。時々葵さんと交代していたのだが、初めてなのにも関わらず葵さんは僕よりも上手だったので少しショックを受けた。


 僕と葵さんは根本が似てるとか言ってたけどホントはそんなに似てないのでは?とついつい思ってしまう一日だった。

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