表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/73

揺らぐ陰キャ(そもそもグラグラだけど)

「類は友を呼ぶ」


 ことわざにこんな言葉がある。意味は『似た者同士は自然と集まる』的なものだったはずだ。要するにスタンド使いとスタンド使いは引かれ合うのと同じだな。


 しかし、類は友を呼ぶ……か。僕に似た人がいても接触はしないだろうな。


 ……家に帰り着くまでは、そう思っていた。




「……」


 僕はアパートに一人暮らしをしている。アパートの、2階、203号室に。そして、その部屋の前に、きれいな女性が立っている。番号も扉の横に書いてあるから部屋を間違いようが無いはずなのに。


 空き巣か、両親から伝言を預かった誰かか、それとも非日常的な組織の人間で僕が必要とされているか。


 色々な可能性も考えたが、選択肢は「話しかける」か「いなくなるまで別のところで待機」だけだ。


 今、お金もなければスマホの充電も心もとない。そして、もう5月だというのに寒い。つまり、実質選択肢は一つというわけだ。


「あの、うちになにか用ですか?」


 女性は僕の言葉に反応して、こちらに振り向く。なびいた髪はさながら茶色のそうめんだ。……例えが酷いな。


「君もしかして、ソウスケ君かい?」


「え、あ、はい。そ、そうですけど」


 宗介、の言葉がどことなく硬い。名前を誰かから聞いたのではなく、見てから僕を知ったのか、もしくは昔会っていてイントネーションを忘れたか。


「……昔と変わらず目つきが悪いな。それに、無表情。高校で友達とかはいないのか?」


 どうやら、昔会ったことがあるらしい。僕は覚えていないので今の気分は『初対面の人にいきなり罵詈雑言浴びせられた』だ。もちろんいい気分ではない。


「……誰ですか」


「ふむ、覚えてないか……まぁ無理もない。君がまだ幼稚園児の頃だからな」


「で、誰」


「まぁ急かすなよ。いいか、会話には流れがある。始まりがあり、そこから言葉を紡ぎ、川のように流れていくんだ。もちろん、人によれば逆流だって氾濫だってするだろうがね。


 そして、会話という物を大事にせず要件だけを聞こうとする輩は嫌いだ。ここで質問、嫌いな四字熟語はなんだと思う?」


 ……この人と僕は根本は同じだが方向性が真逆なのだろう。この人も僕も自分なりに自分の考えを文字に起こし、それで結論まで辿り着こうとする。


 僕はそれをひとりで、自分の中でやるがこの人は多人数で、みんなとやるらしい。根本が同じだからこそ、そこまで違うと気が合わないだろうと思ってしまう。


 気が合わない相手とは関係が悪くなる。悪い関係は自分にストレスを与える。人間強度とかそういうことは言わないが、こういう関係が生まれるから人と関わるのは嫌だ。


「……ソウスケ少年、質問ぐらい答えてはどうだ」


 このまま関係ないことを考えていてもまた催促されるだけだ、そう思い僕は答える。


「……単刀直入」


「残念、答えは熟思黙想だ」


「……」


「おっと睨むなよ。確かに単刀直入も嫌いだ、会話を楽しむ意志を感じ取れない。だがな、ひとりで考えこんで誰とも話すことすらしない奴はもっと嫌いだ。


 会話が川なら発した言葉は水。ひとりで考えてるやつらは脱水にでもなればいい」


「……」


 まるで僕を責めるかのような言い方をしている……いや、実際に責めているのだろう。こちらを睨んでいる。きっとこの人も根本が同じなのに違うことに怒りを感じているのだろう。


 にらみ合っていると、女性は「やれやれ」と首を横に振り、優しい笑みを浮かべてこちらに手を出してくる。


「私は加茂川かもがわ あおい。君のはとこらしい。今日から君の家に居候させてもらうよ」


 「はとことか微妙な距離の親戚だなおい」とか「は?今日から居候とか聞いてないけど?」とか、普通なら言うのだろうが。


 高校2年生になっても非日常には憧れていて、なんだかんだ人と関わるのが久しぶりなのでテンションも上がっていたらしく、らしくもない返答をするのだった。それも、嫌いな相手に。


「よろしく、葵さん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ