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振り返る陰キャ(懐かしい思い出だ)

「人の言うことなんて気にしちゃだめだ。


『こうすれば、ああ言われるだろう……』


 こんなくだらない感情のせいで、どれだけの人がやりたいこともできずに死んでいくのだろう」


 ジョン・レノンの言葉の、和訳だ。……耳が痛い。


 僕がもしジョン・レノンと知り合えていたとしても、いい友達になれた気がしない。というか、友だちと言える人は未だに竜田ぐらいだし、話しかけることすら無理だろう。


 そういえば、竜田と初めて関わってもう数週間が過ぎたな。すっかり梅雨の季節だ。今思うと、今年……いや、今年度は色々と起きすぎている。


 まず、春休み開けに葵さんが来た。始業式を終えたばかりで、新しい学年に慣れようとしている時に来たのと……あと、その時の性格的に強く当たってしまった。


 葵さんが来てから、自分が考えることを葵さんに話すようになった。そのおかげか、人と話すのが少し上手になった。それでも下手な気もするが。


 その次。5月の頭ぐらいに校外学習で竜田と友達になった。相手が僕を友達だと言ってくれたから、うぬぼれではない。正真正銘の、友達だ。友達できたことに葵さん驚いてたな……心外だが気持ちはわかるのでなんとも言えない。


 それで……5月の中旬ぐらいに球技大会をしたはずだ。まさか前日にラブコメ展開が起こるとは思わなかったが……よくよく考えたらその後普通に帰ったのでラブコメ展開にはなっていない。


 そして、6月の頭……先日、竜田が家にきた。そりゃあもうびっくりした。この世の終わりのような絶望と嬉しさで感情がごちゃまぜだった。


 ……そういえば『こうすれば、ああ言われるだろう……』とか、最近考える機会が減っている気がする。多分、自分の考えを毎日葵さんに言っているからだろう。


「まさか、葵さん……僕を話し好きにしようとしてるのか……?」


 確かに、人と関わらなければやりたいこともできないかもしれない。それを心配しているのか、単純に話し相手が欲しいのかは知らないが、葵さんは僕に話し方を教えてくれているということだ。


 ……少し、ムカつく。いや、感謝すべきなのだろうが、葵さんの思惑通りに動いていると考えると、負けた気になってしまう。


 葵さんは、僕と同じで、でも違って……。好きだけど嫌いだ。いつもこういう事を考えている割には感情的になりすぎている気もするが、それほどに感情の整理ができない。こういうところが、葵さんと僕の差なのだろうか。


 ……少し落ち着いたので、気持ちの整理をする。その結果、葵さんに関する少し目標が見えてきた。


 僕は、葵さんと同じぐらい……いや、葵さん以上になりたい。心の底からそう思った。そのために人と関わらなければならないのだとしたら、僕は……。




 諦めます。はい。




「私が嫌われただけで終わったぞ!?諦めるのか!……そ、そうか、嫌いか。そうだな、確かに私もソウスケくんのそういうところが嫌いだ。あ、でも、初対面の時とはまた違った『嫌い』だ。


 前はただ嫌いな部分しか見えていなかったが、今は好きな部分ももちろんある。……うっ、具体的にと言われてもな……。


 そ、そうだな。ソウスケくんの物事を考えることに対しての姿勢は褒められるべきものなんじゃないか?


 私は今赤面しているからあまり強く言えないが、照れるなら聞かなければ良いじゃないか。……嬉しいのか、良かったな」

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