表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/73

騒ぐ陰キャ(相性の悪い2つの単語)

「いえーい!めっちゃホリディ!!」


 隣の席の先生がウキウキしながら歌っている。


 神戸かんど ほまれ先生。数学を担当している女性教師だ。数学を教えている人にしては理的でもなく、その時の感情が表に出やすい。


 今もバーベキューが楽しみだからなのかとても元気に歌っている。バスの中だというのに。


「ほら、鴨川も歌おうぜ!」


 なんかテンション高くなって暑苦しくなっている。正直うざい。クラスメイトと隣になるのが嫌だからってこの席を選んだけど、少し後悔している。


「あ、はい。そっすね」


「なんだ?元気が無いじゃないか。もしかして……宿題が終わりそうにないとか?」


「先生は僕をなんだと思ってるんですか」


「ぼっちな陰キャでしょ?」


「……」


 何も言い返せなかった。




「良し、それでは班ごとに場所を決め、その後は肉を焼く準備だ!」


『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』


 元気だなおい。うちのクラスは陽キャの集まりなのか?あ、委員長と竜田も叫んでる……なんで?そういうタイプだっけ君たち。


「いくよ、みんな!!」


「「おぉぉぉ!!」」


「……おー」


 もう、なんか、どうでもいいや。

 



 「おぉ、美味しい!」


「やっぱり外で食べるお肉は美味しいね〜」


「かゆ……うま……」


 委員長はポンコツ、千葉さんはギャル、竜田は天然なので、僕がお肉を焼く係になった。これは、珍しく僕から意見したことだ。


「鴨川くんはスゴいね」


「天才的?」


「完璧で究極!」


「……お肉だし、普通に焼いたら誰でも美味くできますよ」


 内心では喜んでたりする自分もいる。面と向かって褒められることなんて親と先生以外に無かったから今にも爆発しそうだ。


 僕は照れ隠しも兼ねて、食べ頃なお肉を渡していく。


「こ、これ、焼けたから……どうぞ」


 照れに陰キャ特有の緊張癖が重なり、より不審者っぽくなる。流石にこればかりは今すぐにどうにかできるものではない。


「ん、鴨川も食べるべき」


 そう言うと竜田は僕が差し出そうとしていたお肉を逆に差し出してきた。そう、まさかの拾い箸をしてきたのだ。驚きだ。


 マナーとかにも驚いたが、差し出されてもどうすればいいのか……。このままだと気まずいし、仕方ない。恥ずかしいが食べるか。


「ナイス食いっぷり」


 そこから先は恥ずかしさでいっぱいいっぱいだったので、ひたすら焼いて、偶に自分でそれを食べることだけに専念した。



「遊ぶぞー!!」


「「「おおおおおおお!!」」」


 ……なぜか神戸先生もまざって水鉄砲で遊んでいる。


「ふはははは!教師の圧力に屈するのだ!おりゃぁぁぁぁ!!」


 ガトリングの水鉄砲とかあるんだな、今の時代。凄いな。というかセリフが一々小者っぽいんだよ。


「負けないよ!委員長アターーック!」


「カワカワビーム?」


「ゆびでっぽー」


 ……楽しそうでなによりだ。僕はバレないうちに退散しよう。


「どこに行こうというのだね、鴨川」


「いや、あの〜……」


 しまった、先生にバレた。くそ、言い訳しないと……。


「総員!鴨川を……撃てえええええ!!」


「「「イエッサー!」」」


 言い訳する火まもなく、撃ち殺されてしまった。こういう人がいるから、終わるはずの戦争も終わらないんだろうな……はぁ。






「おかえりソウスケくん……って、びしょ濡れじゃないか。先に風呂に入ってこい。


 改めて、おかえり。私が作った料理だが……見てみろ。疲れているだろうからにんにくが効いたチャーハンを作ったぞ。もちろんそれだけじゃない……ニラの野菜炒めに味噌汁!栄養面も疲労回復面も完璧だ!はら、食べてみろ。


 ……お、おいどうした?なんだその顔は。何故真顔なんだ?美味しくないのか?……ま、不味くはないって、それ美味しくもないってことか!?おい!ちょっ!真顔で食べるな!怖いだろ!!」


 今日学んだこと。陰キャにはやはりああいうテンションは合わない。そして、葵さんの料理はどれも説明し難い味をしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ