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第239話 祭りが終わり、数日後

「デカいトロフィーをもらうとは思ってなかったな。あれって鋳つぶしてもいいんだろうか」

「バルゼイルが泣くからやめておいた方がいいと思うよ」


 血闘杯が終了。

 ホーラスの優勝で終わった祭りは、『次の四年間』までの『世界最強』を決めた。


 それに異論を唱えることはできない。

 世界最強の座が欲しいならば、勝つしかないからだ。


 そして、ホーラスたちのレベルになってくると、『小細工』が通用しない。

 自分の実力の派生として戦術的に取り入れる『技』ならば意味はあるが、付け焼刃の小細工など、無視できるレベルの練度でしかないためだ。


 そういうものであるという認識が広まっている以上、『世界最強』は、『世界最強』なのだ。


「それにしても、大会が終わった後に会見が面倒だったが、あれはどうにかならんのか? 大会のスケジュールとして最初から組まれてる上に、それを踏まえて参加意思を表明してるから断れないし」

「知りたいんだよ。『世界最強』というのは、言い換えれば『最も強い暴力』を持っているといえる。そんな存在がどういう方針を持っているのかくらいは、治安維持の観点でいうと必要な情報だ」

「うーん……」

「それに、世界最強の存在が『いい感じの善人』だったら、うまくそそのかして、血闘杯に呼ばれるだけの他の実力者を抑え込むのに使えるでしょ?」

「あぁ、あれってそういうメッセージ性も兼ねてるのか」

「そういうこと」


 大人が設定していることには、何となく続けていることも多いだろうが、少なくとも一回目は何かしらの意図があって設けられている。


 血闘杯の会見。

 確かにそこには大きな意図があるだろうが、実際どういうものかとなれば、それは『世界情勢のコントロール』に使われる。


 そもそも国家という単位ですら扱いきれるか不明なレベルの実力者であり、記者たちも『余計な事』は言えない。


 あらかじめどんなことを聞くのか。ペーパーが事前に配られて、その通りに『誘導しよう』という魂胆がある。


「……さて、ホーラス君。血闘杯に出てみて、どう思った?」

「どう、とは?」

「会場で全員が戦っていた場面もあったし、君の実力なら、全員の強さを見ていたはずだ。そこについてかな」

「強さ……か」


 ホーラスは会場での戦いを思い出して……。


「まぁ、強い奴ばっかりだったな。昔、ちょっとあっただけの奴もいたし、幼いころはよく話してた人もいるけど、『世界って言うのは、強い奴がしっかりいるんだ』って、確かに思うよ」

「そう思っているなら、血闘杯に呼んだ甲斐があるってもんだ」

「……世界に強者がいる。それを俺に実感させるために、アンタが出てきたって?」

「そういうことだ。その感覚を持っていることは、後々、役に立つだろう」

「役に立つというより、五大神にとって都合がいいって話に聞こえるけどな」

「別に反対はしないよ」

「というより……」


 ホーラスはスメラギの行動を思い出して……。


「勇者屋敷にいた時はお菓子を食べてばかりだったし、移動拠点を使って会場に向かってるときもほとんど食べてばっかりだったよな。大会の前日に、バルゼイルがパーティーを開いたけど、その時もかなり食ってただろ」

「よく覚えてるね」

「まあな。で、そんな食べることばっかり考えてるようなスメラギが、『都合』なんてものを考えられるとは思えんが……残りの二人のどっちかから頼まれたのか?」

「そうだね。星脈神リリーナから頼まれたものだ」

「ほう……」


 スメラギの口から出てきた、四人目の五大神の名。


「とはいえ、残り二人は、かなり計画を詰めてから行動するタイプだし、しばらくは平和だと思うけどね」

「別に五大神に関して、平和とかどうとかって関係ないけどな。俺が、『ダンジョンの独占』をしてるお前らが気に入らんってだけで挑んでるだけだし」

「まぁそれはそうか」


 スメラギは微笑んだ。


「……残り二人は、計画を詰めてから行動するタイプ。ねぇ、アルゼントやシルドレスと比べるとどうなんだ?」

「計画性はあまり変わらないと思うよ」

「ということは、大雑把で抽象的に何か考えて、一手先すら特に何も決めず、計画を立てたと思うタイプか」

「アルゼントとシルドレスのことをどう思ってるんだい?」

「言ったとおりだ」

「なるほど、まぁ、別に反対する材料はないね」

「ないんかい」


 ホーラスはため息をついた。


「……さて、そろそろ、これを渡しておこう」


 スメラギは、一つのインゴットを渡した。

 ホーラスは受け取って観察する。


「……斬鉄神の力か」

「そうだ。『キンセカイ大鉱脈』の奥にあるダンジョン、『汝の名(ユアネーム)』をクリアすることで得られる『神の名』の力だ。デウスに組み込むことになると思うけど、大切に使ってくれると嬉しいね」

「……そうさせてもらうよ」

「実際、本当に大切に使った方がいいと思うよ。そうしないと、ユーディネスを超えることはできないからね」

「……そんなに、やばい奴だったのか?」

「もちろん。君はまだ、テラ・ディザスたち、『四源嬢の要竜』の力すら、満足に引き出せていないと思うけど、ユーディネスなら、今頃は完全に引き出しているだろうね」

「……そりゃまた、凄い話だな」

「だろう? まぁ、精進することだ。ゴーレムの性能が足りないゆえに、魔剣ドランも、まだ本気の剣術を君に使わせていないからね」

「……すごいんだな。歴史って」

「その通り。もっと調べてみると、楽しいことはたくさんあるよ」


 スメラギは本当に楽しそうである。


「……」


 ……どこか、違和感を感じたホーラスだったが、それを言葉にすることはできなかった。

I’ll keep quiet about it for now.

(今のところは黙っておくか)

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