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第18話 強者の眼

 屋敷の門を取り囲む全身鎧の兵士たち。


 顔は見えないが、どこか楽しそうにしているのがよくわかる。


「諸君! 勇者はレクオテニデス公爵家の当主である私に対して、不敬な行いをした。これは許されない行為である。魔王を討伐したからと言って、世界最大の国家の公爵である私に対し、跪かない道理はない! 奴らは平民、私は貴族。私の言葉が正しく、奴らの屁理屈は悪なのだ! 今こそ、正義の鉄槌を下すぞ! 全員を捕らえ、その身を私に献上するのだ!」

「「「「「おおおおおおおおおおおっ!」」」」」


 自前で用意した檀上でアシュトンが演説を行なって、兵士たちの士気が高まっている。


 これから行われる『狩り』に、笑みが止まらない。


「いやぁ、良い主を持ったもんだ」

「おう、そういや、公爵様が飽きたら、娼館を作ってぶち込むって話だよな」

「てことは、金さえ払えば俺たちもあの体で楽しめるってわけだ」

「今営業されてる娼館も、公爵家の関係者はかなり割引されるし、それは勇者娼館も同じだろ」

「格安で勇者のあの体を楽しめるなんて、最高だぜ」


 ずいぶん、『この雰囲気』に慣れている会話が続く。


 類は友を呼ぶ。というのか、ここに集まっている兵士たちは、いずれも公爵家の私兵だが、いずれも性欲を軸に考えているかのようだ。


「魔王を討伐した勇者を捕縛したら、俺たちの名も上がるんじゃねえか?」

「ほかの家についていった連中に自慢してやろうぜ」


 腰から剣を抜きつつ、ゲラゲラ笑いながらそんな話をする。


 なぜ、『勇者コミュニティ』を相手に、ここまで呆れた判断ができるのか。


 簡単に言えば、『ほぼ抵抗されない』と思っているのだ。


 魔王を討伐するというのは確かに、世界に認められるほどすごいことだが、ディアマンテ王国の公爵家の兵士に剣を向けることは許されないことだと。

 そう、『世界に認められるほどの功績』という格を、『公爵家』の格が上回っていると、本気で……というより、無意識に思っているのだ。


 確かに世界は広いが、ディアマンテ王国は『世界最大』なのだから、その公爵家の力は絶大で、世界を上回ると。


 だからこそ、反撃されないと、無抵抗で『狩り』ができると思っている。


 そう考えることができる根っこの部分は、魔王が討伐されてから、最も『好き勝手』にできているのが、レクオテニデス公爵家という存在だからだ。


 ホーラスが以前語ったこととして、『性欲を扱う商売の完全廃止』を訴える平民がいたというものがあった。

 人間は社会的な問題が発生した時、自分で考えるのを嫌がるゆえに、自分でバランス感覚を取るのを嫌がるために、『極論』を持ち出そうとする。


 魅了による男性支配を行う美貌の魔王がいたことで、この発想が出てきたわけだが、ホーラスとしても、避難民を多数受け入れながら王都の運営をする必要があるわけで、人手が足りない。


 そこで、『性欲』が強く、『娼館』という市場に対して強い感情を持つアシュトンを利用したのだ。


 『利用する』ということは、『一部であろうと公爵家の行動が邪魔されていない』ということ。


 ホーラスは城で勤務していたがゆえに嫌がらせも多くできたが、その中で、レクオテニデス公爵家は一部……それも、娼館関係はほぼ邪魔されていなかった。


 それだけ『他者が困っている間に好き勝手に出来ている』という優越感で、現実が見えていない。


「突撃だあああああっ! 勇者コミュニティのメンバーを、全て捕縛し――」


 アシュトンの言葉は、最後まで続かなかった。


『ここまで愚物が多いと、時々疑問に思う』


 ランジェアが圧倒的な『威圧』を放ちながら、屋敷から出てきた。


『魔王に、王都まで攻め込んでもらえばよかったのではないかとすら、最近は感じる』


 アシュトンに向かって、まっすぐ歩く。


『魔王に支配された人間は、魔王が討伐された後も、魔王に絶対の崇拝をささげる。それを解く方法はなく、動けないように拘束するか、殺すしかなかった』


 滝のような汗を流すアシュトンに向かって、まっすぐ、まっすぐ歩く。


『実際、魔王が現れ、愚かな男が全て虜になり、殺す大義名分を得たことで処理され、新しく生まれ変わった国もある』


 ランジェアは、アシュトンの前に来た。


 絶対的強者の眼で、彼を見下ろした。


 そのまましゃがむと、胸ぐらをつかんで、顔を自分に向けさせる。


「ヒッ――」


 恐怖の声が口から洩れる。


 圧倒的強者。絶対的強者。


 そう。『これ以上、人の形を保ったままで、これ以上強くなれないのではないか』とすら思えるような、そんな『強者の眼』をしている。


 そして、先ほど語られた言葉。

 それはアシュトンの心に刻まれ……『魔王に支配され、殺す大義名分すらほしいと思う』とも取れるような、そんな言葉を彼に理解させ、背筋が凍り付く。


『何を考えていようと構わない。私は主義の善悪など興味はない。ただ……邪魔をするなら』


 至近距離で、アシュトンの眼を覗き込む。


『見せしめになってもらおう』


 手を放して、アシュトンが崩れ落ちた。


『さっさと帰れ。今なら五体満足で返してやる』


 アシュトンの胸に希望があふれ……。


『世界会議を臨時で開いてもらおうか。楽しみにしていろ』


 すぐに、彼のすべては絶望に塗りつぶされた。

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― 新着の感想 ―
[一言] スデニテオクレ公爵家w
[一言] 王ちゃん倒れないかな? 何か可哀想になって来た まぁ~ 王国自体の自業自得すぎるから止めないけど
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