第15話 よく言えば切り替えが早い。悪く言えばただのバカ。
閑散としているラスター・レポート本拠地である屋敷。
ただ、借金を返したあたりから、人が集まってきた。
『コミュニティ』という形故に、戦闘員にしても裏方にしてもそこそこの人数がいる。
女は三人集まれば姦しいになるのだから、何人も集まったら騒がしくなるのは明白だろう。
というわけで、ランジェアやティアリスほどではないが、美貌と良いスタイルを持った美少女たちが屋敷に次々と姿を現していた。
まあ、魔王を討伐するために彼女たちは旅をしていて、魔王の特性ゆえに『後始末に時間がかかる』ので、帰ってくるのが遅れるというだけのこと。
それが済めば帰ってくるだろうし、一応は借金が帳消しになったディアマンテ王国ならば、なおさら勇者コミュニティの構成員が離れる理由も分かるだろう。
そんなある日。
「あの、師匠。なぜそこまでゲッソリしているのですか?」
ロビーで新聞を読んでいるホーラスだが、なんだか体が痩せている気がする。
「……ティアリスに襲われた」
「えっ?」
「昨日の夜。ベッドで寝てたら、ティアリスが入ってきて、そのまま寝てる俺に覆いかぶさって、そのまま……」
「……抵抗しなかったのですか?」
「昨日の夜のティアリスの『目』を見て抵抗できるやつがいるなら俺は連れてこいと言いたい。それくらいすっごい目をしてたぞ」
「ちなみに何連戦ですか?」
「十だな」
「なるほど……一晩に十人は可能ですか。勇者コミュニティのメンバーは百人近いのでどうなることかと」
「……」
ホーラスは絶句した。
ランジェアに対して、多少は『独占欲がある』と分析していたのだが、思ったよりそうでもなさそうで驚いているのだ。
「ということは、ティアリスは師匠の童貞を奪ったのですね。後で殴り倒しておきます」
いや、独占欲強めかもしれない。
相変わらずひまわり畑の幻覚が見えるほど無邪気な笑顔だが、目の奥に黒いものが見えた。
「いやー。ティアリス凄かったな。俺、コミュニティのメンバーの性欲が強くなってるの忘れてた」
「?」
「あれ、もしかしてランジェアは把握してないか? 勇者コミュニティのメンバーって、外見がいい奴が多いだろ」
「というかそういう人だけですね」
「あれなんだが、前提として、身体強化ってあるだろ? 魔力を体に流し込んで強化するやつ」
「ありますね」
「これを言い換えると、『体に魔力を流し込む』ということは『質を高める』ことと同じなんだよ。五感の強化のために顔に流し込んだり、心臓の強化のために胸に送ったりする」
目に通せば、ホーラスのように威圧できるのも確かだが、純粋に視力が強化されるという部分もあるだろう。
「もちろん、体が変わるほどの身体強化は褒められた行為じゃない。自分のギリギリを見極めないと多分何かが千切れるからな……教えたのは俺だけど。ただ、自分のできることの最大が何なのか。それを自分で考えて、『努力し続けた証』ってことだから、責めるつもりはないけどな」
「体に魔力をしっかり送った結果、外見が優れて……いわゆるエルフをはじめとする『長命種』に多い特徴でもありますが、そういう理屈があるのですね」
「ああ。で、一つ問題があってな」
「問題?」
「外見が優れるというレベルになると、文字通り『体が全体的に質が高くなる』んだが……実は欲望の部分も体のほうに引っ張られるのか、強くなるんだよ」
「それで、性欲まで強くなるんですね」
「俺は自分の脳をちょっといじってるから、強化する前の欲求でとどまってるんだけど、完璧に忘れてた……」
かなり後悔している様子のホーラス。
ティアリス。そんなにすごかったのだろうか。
「ただ、私は性欲はそこまでではないような気も……」
「元が強くない場合は強化されても一般人レベルにとどまるだけだよ」
「そういうことですか」
ランジェアはホーラスの説明で納得した様子。
……と思った時。
コミュニティメンバーの一人が屋敷の出入り口からロビーに入ってきた。
「ランジェア。なんか『ディアマンテ王国』の公爵家の人が、『お前たちを私の愛人にするからついてこい』って言ってきてるけど」
「早速!?」
愕然とするランジェアであった。
「とりあえず威圧して黙らせてるけど、どうする?」
「はぁ、パワフルですねぇ」
「ランジェアに言われたくない」
呆れた視線を貰っているランジェア。
……旅の中で、何があったのだろうか。
ホーラスはなんとなく予想できそうではあったが、何も言わないことにした。
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