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質問攻めの魔導師街道  作者: サムライ・ビジョン
狭き門はくぐれるか?
9/10

第9話 長距離射撃

 土石が剥き出しの壁を横目に見ながら…彼らは「地下の世界」へゆっくりと降りていく。

「どうなってるんだ…すごいな…」

「中庭がエレベーターになってるなんて…」


 しばらくすると中庭は地面に到着した。そこは白い壁で囲まれており、向かい合うように6つの入口がある。

 やがて人々の頭上に屋根ができあがり、完全に「密室」となった。




「これから皆さまには属性ごとに分かれてもらいます」

入口の上にはそれぞれの属性のイラストが描かれており、通路はランプで灯されていた。

 片方は火、水、雷。もう片方は風、毒、個となっており、水属性が最も多かった。


「まず試していただくのは長距離射撃です。杖は後ほど提供いたしますので、そのまま中へお入りください」

 その言葉を最後に、音無おとなしは姿を消した。

「…みんな、とりあえず中に入って…とにかく全力を尽くそう」

 知己ともみは4人に声をかけ、皆は無言で頷いた。

それぞれが先陣を切って入口に入り、残された者もひとりひとり入っていく。




 ——アカネの場合——

(長距離って言ってたよね。守山さんのときみたいに的に撃つのかな?)


【火属性】88/300人


的が用意されており、きっとこの先にはそのための広場がある…アカネはそう考えていた。

(ほらやっぱり! なんか開けた場所が見えてきた!)

 真っ暗闇ではあるが、通路の果ての「広場」が見えてきた。


(ここ…本当に地下なの?)

アカネのみならず、他の火属性たちも言葉を失っている。

 通路を抜けた彼女らが立っているのは崖であった。崖の前には赤い砂漠が広がっており、遠くの方には天高くそびえる岩山が見えている。

(福楽町みたいな都会の地中にこんな場所が…ありえない…)


 アカネが呆然としているとき、我に返らせる「声」が響き渡った。

「なんだ!?」

「なに!? なんなの!?」

声の主は1体だけではなかった。


 姿を見せたのは黒いドラゴン…小ぶりではあるが優に40体は超えている。

「やばい…早く魔法使わないと!」

アカネがそう口にしたとき、どこからともなく大きな杖が降りてきた。全員分あるようだ。

「これで倒せばいいんだね…よし!」

勇気を奮い立たせたアカネは、魔力を込めて火球を放った。




 ——百合ゆりの場合——

(なんとか半分は減ったかな…)

 つららを放ち活躍する百合だったが、彼女には気がかりなことがある。


【水属性】112/300人


ドラゴンは相手が学生だろうと容赦なく爪や翼で攻撃してきた。

 その結果、同志は半分近く()()()

力強いその攻撃を受けた途端、学生は忽然と姿を消していくのだ。

(どうして消えるのか、どこに行ったのか、怪我はしていないか…全然わからないけど、攻撃されたらきっと不合格だよね…!)

迫り来るドラゴンを、百合は走りながら迎え撃つ。




 ——正義まさよしの場合——

(だいぶ減ってはきたが…)


【風属性】43/300人


20体近くいたドラゴンは残り7体。

そして、43人いた風属性は現在35人…

(血を流したりなどはしていなかったが…)

岩壁がんぺきを背にして正義は、鋭い空気弾くうきがんで頭部を狙う。




 ——来寿らいじゅの場合——

(ムリムリムリムリ!!)


【雷属性】37/300人


ひたすら逃げていた。18体のうち8体が減り…37人いた学生は30人になっていた。

(こえーけど…1体でも倒さないとさすがにやばいよな…)

一撃で倒せるよう、魔力多めに稲妻を降らせた。




 ——知己ともみの場合——

(…あれを倒すのか?)


【個属性】3/300人


3人だけの個属性。1人はドリアンのように尖った銀髪の男子。もう1人は焦点の合っていない赤髪の女子であった。

(7、8…9匹か。あれを倒したらいいんだな!)

通路を見知らぬ2人と歩いていた知己は、ようやく気まずさから解放された。

(2100ポイントか…ギリギリだな)

昨日の分に「筆記試験全員合格」が1000ポイント上乗せされ、圭介の言っていた「最低でも2000ポイント」をなんとか達成させた。

(よし…さっそく疑問弾ぎもんだんを…!)




「ふざけんなァァァァァ!!」

 知己は心臓が止まりかけた。ドリアンが頭に血管を浮かせながら砲弾を撃っている。

+400



「あっはははは!! 死ねぇぇぇぇぇ!!」

 次に声を上げたのは赤髪の女子だった。目を向けたが彼女の姿はなく、杖からマシンガンのように射撃しながら走っている。

+400


(2900ポイントになった…というかちょっと待て!?)

 そうこうしているうちにも、ドラゴンは残り3体となった。


「ま、待ってください! 撃たないで!」


知己が叫ぶと2人の動きはピタリと止まり、なんだとばかりに睨んでいる。


「あの…残りは俺に撃たせてくれませんか?」

 そこで2人は、「9体いるのだから1人3体倒せばいいのでは?」ということに初めて気づいたようで、大人しく知己に譲った。


「あ、どうも…よし!」

 3体のドラゴンは、束になって知己に迫って来る。杖を()()()()()()ドラゴンに向け…叫んだ。




「筆記試験が全員合格…やっぱり納得できなぁぁぁぁぁいっ!!」


『採点はした』

『しかしどうでもいいと思っている』


そのような言い分では知己の疑問は解消されなかった。

 疑問を賭したそれはロケットランチャーのように放たれ…3体もろとも爆ぜた。


「おいあんた。なんだその魔法は?」

「アタシも気になるぅ!」


その様子を見ていた2人は興味津々であった。


「その前に、あなた達の魔法のことを教えてほしいです」


「俺のは『憤慨ふんがいの具現化』だ。ムカついた分だけ魔法が使える」

—400

「アタシのは『享楽きょうらくの具現化』! とにかく楽しむが勝ちなの!」

—400


 知己は納得したのか疑問が減った。




「俺は『疑問の具現化』です。なんで? って思った分だけ魔力が溜まります」

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