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質問攻めの魔導師街道  作者: サムライ・ビジョン
狭き門はくぐれるか?
6/10

第6話 ついに迎えた入学試験

 子ども達の連絡先を入手し、守山兄弟とも関係を持った知己ともみ

それからの彼の毎日は色濃くもあっという間に過ぎていった。

客足の少ないグラウンドはほぼ貸切状態だったので知己は定期的に通った。

「疑問の具現化」という属性はその名の通り「具現化」が肝となるらしく、攻撃魔法のみならず防御に際しては盾に、怪我をした際には縫合ほうごうなど様々なバリエーションが試せた。

 練習をし、魔道具開発の進捗を確認し、仲間たちと福楽町で遊び、圭介に絡まれ…

そうこうしているうちに、福楽高等学校・魔法科入学試験はすぐそこまで差し迫っていた。


「受験票持った? あと筆箱と…あ、テストの前にはちゃんとトイレ行くのよ」

「大丈夫だって…心配しすぎだよ」

8時30分、知己は家を出た。

午前は筆記試験、午後は実技試験という長丁場なので体調を整えておく必要がある。

…が、知己はバスの車内で左手をさすっていた。


 ——前日のことである。——

守山診療所に呼び出された知己は、通常よりも太めの注射針を親指の付け根のあたりに刺された。埋め込まれたのは極小のチップ…

左手以外の素肌に触れると魔力の数値が現れるのだという。

「ごめんね…魔力量をこっそり確認する方法がこれしか思いつかなくて…」

「いえ…痛かったけど大丈夫です。…うん、ちゃんと見えてます」

試しに右腕を触れてみたところ、目の前の少し下のあたりに緑色の数字が見えた。透けて見えるので障害物にはならない。


「知己、いま何ポイントある?」

「あー…650ポイントらしいです」

丸椅子に大股で座る圭介は、それを聞いて忠告した。

「明日はいよいよ本番なんだ。最低でも2000ポイントはあった方がいい。今のうちに疑問をたくさん溜めなさい」

 事情を知らない人からすれば奇をてらった発言に聞こえるしれないが、これは立派なアドバイスである。

「ちなみにこのチップ、何ポイントまでカウントしてくれるんですか?」

「100万ポイントだ。けど、そのチップはあくまで数値化するものに過ぎないから、仮にカンストしたとしても問題ない」

100万+1ポイント以上はカウントしないが、100万ポイント未満になれば数字が変動する…実にシンプルだ。

「源くんに求められるのは『疑問力ぎもんりょく』だね。些細なことでも何故だろうと考える習慣をつけるのが大事だと思う」

「考えるのが大事なのは何も魔法に限った話じゃないよな。このニュースの意図はなんだろう? この食べ物は体に悪いのではないか? 守山賢治はなぜ魔法科に落ちたのか?」

圭介はクリップボードで頭をはたかれた。



——そのような経緯もあり、人体に支障はないとは言われたものの、やはり知己としては気になるのだった。

 バスは福楽の繁華街を通り過ぎ、景色はやがてオフィス街、そして学生街へと移り変わっていき…

(おお…見えてきた…!)

ビルの屋上から、徐々に福楽高校の姿が見えてきた。

「次は…福楽高校前、福楽高校前…」

そのようなアナウンスが聞こえたのを合図に、乗客はぞろぞろと降りていった。

(やっぱりみんな受験生か。それにしても…)


 外壁や植木に守られるようにそびえるは、いかにもな外装の学舎まなびやであった。

正門から正面玄関へは石畳の小道が真っ直ぐに伸びており、青々とした芝生には噴水や庭木が鎮座している。

巨大な時計塔が中心にあり、校舎はアシンメトリー…

城と神殿が一体化したような様式美…


(お伽噺とぎばなしみたいな学校だな…頑張るしかないな…絶対にここ入ろう!)

見惚れる気持ちはそのままに、正面玄関まで歩みを進めた。


「魔法科志願者は北棟ほくとう2階まで」

 そう書かれた掲示板を見て、知己をはじめとする大多数の人々が玄関左手の階段へ体を揃える。普通科志望者も当然存在する。…が、南棟なんとうへ向かう人間はまばらだ。

(受験番号51〜100…ここか)

 88番の知己は、「2—B」と書かれた教室へ入った。

(いやぁ、やっぱり緊張するな…)

教卓には監督の教師が待機しており、知己より早く来た者は参考書を読むなどして過ごしている。

(トイレ行きたくなってきた。けど、なんとなく行けるような雰囲気じゃないような気が…)

「試験開始まで残り10分です。トイレに行きたい方などおりましたら今のうちにお願いします」

ちょうどそのタイミングで監督の男性教師は「行きやすい雰囲気」を作った。

(よし、行こう…あれ?)

 後ろの方に座っていた知己は右斜め前方に見覚えのあるメガネ男子をその目で確認した。

(…正義まさよしくんだ!)


 伊達だて正義まさよし。B級の風属性。知己と同じく、魔法科志望者のひとりだ。

「だーれだ!」

「…源くんだな。メガネの上から手で覆わないでくれ」

トイレに向かう道すがら、周りに教師がいないと分かった途端に気持ちが和らいだらしい。

知己は少しだけ鬱陶しがられたが、正義は少しだけ微笑んでいる。

「正義くんは63番なんだね。他のみんなは違う教室にいるのかな?」

 横に並ぶ2人のもとに、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「おー! トモちゃんにマサぴょん! おいっす〜」


 新妻にいづま来寿らいじゅ。C級のかみなり属性。

男子は全員顔合わせができた。

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