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質問攻めの魔導師街道  作者: サムライ・ビジョン
知己の魔法はなんだろう?
3/10

第3話 魔法のメカニズム

知己ともみの間の抜けた声に、他の4人も目線を向ける。

「ちょっとみんなのを見せてもらっても…?」

知己の困惑したような様子を見て、4人は素直にカルテを見せた。


水崎みずさき百合ゆり  【水性魔法】

火山かやまアカネ  【火性魔法】

新妻にいづま来寿らいじゅ  【電性魔法】

伊達だて正義まさよし  【風性魔法】


みなもとくんのは…疑問がどうとか言ってなかった?」

アカネは言う。

「うん…『疑問の具現化』って書いてる」

 知己は守山に詳しい内容を仰ごうとした。守山はすでに「仕事モード」から離脱しており、ソファに腰かけテレビをつけ始めた。

「あの…守山さん」

「んー?」

守山は小さなドーナツをつまみながら反応を見せる。

「僕のこの、疑問の具現化? っていうのがよく分からないんですけど」

「あー…詳しいことは『こいつ』に聞いてくれ」

 そう言うと守山は、ドーナツをつまんでいない左手で胸ポケットから名刺を取り出した。


—— —— —— ——

福楽ふくらく魔法まほう研究所けんきゅうじょ 所長

守山もりやま 賢治けんじ

—— —— —— ——


「研究所ですか? というか、名字が同じなんですね」

「ああ、一応弟だからな。その研究所に行きゃ大体のことは分かるぞ。俺はテレビで忙しいからカネ置いたら帰っていいぞ〜」

画面に映るは録画された音楽番組。「キングブー」の特集。


 守山の態度に違和感と不快感を覚えつつ、子ども達は診療所を後にした。

「とりあえず俺は研究所に行ってみるけど、みんなはどうする?」

知己の呼びかけの答えは「ついて行く」というものだった。

「にしても研究所行ったらまた金取られんのかなぁ」

「それは勘弁してほしいよね〜」

来寿とアカネはそう言って

「兄弟ぐるみでお金巻き上げたりして…」

「決めつけるのはよくないだろう」

「もしかしたら弟さんはちゃんとしてるのかも…」

知己、正義、それから百合がそう言った。


「ほら見て! あたし調べてみたんだけどさ…さっきの守山診療所ってとこ、やっぱり評判悪いよ。星1だもん」

「だろうなぁ…オレ美人センセー期待したのに…」

 一行が大通りに出た頃、知己は立ち止まった。名刺とスマホを見比べている。

「どうしたの?」

「いやぁ…なんか地図だと小学校になってるんだよね…」

4人は意味が分からないらしく、彼のスマホを覗きこんだ。

「『南福楽小学校』ってもう廃校になってるやつじゃね?」

「そうだな。父親が通っていたらしい」

来寿と正義はその廃校を知っていた。

「廃校を研究所にしてるのかな?」

「いいですね。地元の施設を大事にしてるみたいで…」

アカネと百合、知己は土地勘がない。

「南小に行くなら私に任せろ。近道を知っている」

「本当? じゃあ織田くん案内よろしくね!」

「私は伊達だ」


 軽自動車であれば通れるだろうか? 守山診療所へ向かう路地よりもさらに狭い道を正義は進む。その間、約5分…

「あれが南小だ。正面玄関は向こうだがな」

ビルとビルとの隘路あいろを通ると、少し古びた校舎の後ろ姿が見えてきた。職員用の駐車場があり、「福楽魔法研究所」の看板がフェイスに貼りつけられてある。

「研究所…ここだね」

無機質なシルバーのドアのインターホンを鳴らし、しばらくすると男が出てきた。

「いらっしゃい。どのようなご用件でしょう?」

その男は「守山賢治もりやまけんじ」と書かれた名札を首にかけている。

「僕たちさっき魔適を受けてきたんですけど、僕の魔法だけよく分からなくて。ここに来たら調べてくれるかなって思って…」

「なるほど。中へどうぞ」

男はそう言うと、来客用玄関の部屋へ案内した。窓口としての役割だったのだろう。

ソファに向かい合って座ると、男はカルテを確認した。

「疑問の具現化…前代未聞ですね。ちなみにご両親の属性は?」

「母親が水属性で、父親は…僕が生まれる前に亡くなったらしいので分かりません」

その頃、4人は同室の円形テーブルに…

「ねぇ、あのひと結構いい感じじゃない?」

「まぁ、さっきのと比べたらなぁ…」

「本当に兄弟なのだろうか…」

「清潔感がありますね」

守山賢治は短髪で髭もない。服装は紺のポロシャツというシンプルな出立いでたちだ。


「…ひとまず実演といきましょうか!」

「ん? 実演…?」


 賢治はそのまま玄関を出てグラウンドへ向かった。慌てて5人は追いかける。

彼らがマウンドにたどり着いたところで、賢治は知己に白い宝石のペンダントを貸し出した。

「それを首にかけてもらって…いま的を用意しますね」

 知己が首にかけている中、賢治はポケットから杖を取り出し、バックネットに直径10メートルほどの的を生み出した。

「そしてこちらが…お試し射撃用の杖になります」


賢治は杖を手渡すと、()()()()()()()()()()()()()()


「あとは魔法を使うための『魔力』ですが…」


 そのとき…

知己のペンダントが、うっすらと白く光った。

「…あれ? 今ペンダント光ったよね?」

「うん、光った…」

「光ったな」

「どうしてでしょう?」

4人はヒソヒソと話している。


「守山さん、ペンダントが光ったんですけど、なんで…」

ペンダントは再び光った。

「…源さん。その杖を2回まわして、的を目がけて振り払ってください」

知己は光る理由が気になりつつも、右手のそれを2回転させて肘を曲げ…振った。


 次の瞬間、杖の先端が白く光り…

そこから放たれた「疑問」の矢が命中した。

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