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質問攻めの魔導師街道  作者: サムライ・ビジョン
知己の魔法はなんだろう?
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第2話 それぞれの属性

「もしかして魔導師さんですか?」

知己ともみは目を輝かせて言った。

「魔導師かどうかは置いといて…魔適まてき、受けんだろ? 今日はあんたらだけだから、早いとこ終わらせようぜ」

 そう言うと男は、首をゴキゴキと鳴らしながらビルに入っていった。

「地図だとここらしいけど…みんなどうします?」

「お〜い早く来いっての。検査受けないなら帰れ〜」

知己はみんなを見ると、黙って男のあとを付いていった。1階には窓口やソファがあるが誰もいない。

皮膚科や小児科などと書かれた小さな札が飛び出しているが、男はどの科にも入らずに灯りのない廊下を突き進んでいる。

「よ〜し…みんな来たな」

 廊下の突き当たりには「関係者以外立入禁止」と書かれたドアがあり、男はおもむろに押しあけた。

「ここは…なんだ?」

知己は小さくつぶやいた。ドアの向こうは乱雑としており、青いパーテーションの内側以外は人が住んでいるかのようにソファやテレビがある。

「こら。勝手に人のモン見てんじゃねぇ」

金髪と強気の2人が、それぞれデスクと本棚を見ている。

「ここで検査するんですか?」

「ああ。こん中でな」

人ひとり分あいたパーテーションの隙間からは、机とパイプ椅子、それから血圧計のようなものが見えている。


「そんじゃさっそく魔適はじめますよ〜っと。…え〜っと、まずは…水崎みずさき百合ゆりさん」

「は、はいっ」

 子ども達の中で第一声をあげた少女は、男に促されて椅子に腰かけた。

「はい、じゃあ保険証出して。よし、じゃあこん中に手ぇ入れちゃってください。輪っかの向こうに手形あるでしょ? そこに5本の指合わせてね」

七三メガネ以外の3人はその様子を見守っている。そのとき…

「おお〜!」

血圧計は計量器だったようで、百まで書かれた目盛と拳ほどのランプがある。

水崎が手を入れるとランプは瑠璃色に光った。針は70あたりを指している。

「見せモンじゃねぇぞ。勝手に覗くな」

それを聞いた3人はすぐさま顔を背ける。

「…ったく。え〜、水崎さんは水属性だそうです…名字のまんまだね。階級はAです」

「A級ですか…」

「魔法の階級は訓練次第で上げることもできるから、まぁこれからってとこだな」

「えっ!?」

それを聞いた知己は驚愕した。

「どったの?」

「いや…俺てっきり階級って一生変わらないものかと…」

その場の全員があ然とした。

「まさか…お前さん知らなかったのか?」

「はい…俺の友達も階級が低くて落ち込んでたから、上がらないのかと」

「上がるに決まってんじゃないの…そのかわり鍛錬を怠れば当然階級は下がる。そこんとこ注意しろよ? …次、火山ひやまアカネさん」

 強気少女は火山というらしい。

「君は…やっぱりつったらアレだけど火属性だって。階級はBです。じゃあ次、新妻にいづま来寿らいじゅさん」

 金髪少年、結果はC級。

「はい、雷属性で〜す。かなり低いね。次は伊達だて正義まさよしさ〜ん」

 男は鼻で笑って七三メガネを呼んだ。

「今オレ笑われたよね?」

「伊達さんは風属性…そんで階級はBです。見た目の割にそこまでだね。よし…最後はみなもと知己ともみさん!」

「そこまで…見た目の割に…」

男はとにかく不躾で、個人的な感想をいちいち口にした。

(とうとう俺の出番だ…)

知己はバクバクする心臓に呼吸を整えた。

「お願いします!」

「はい、よろしくねぇ」

「あ、その前にちょっと気になることがあるんですけど…」

 検査にはさして関係がないと前置きした上で、知己は尋ねた。

「守山さんって、俺たちくらいの見た目に変身してたじゃないですか? なんで変身してバスに乗ってたんですか?」

知己が質問すると、守山はペン回しをする手を止めて真面目な顔をした。

「理由は4つある。1つは迷子にならないように案内するため。2つ目はこの見た目だと怪しがられるから」

(見た目はなんとかなると思うんだけど…)

「3つ目は、変身ができるイコールS級だと分かってもらうため」

「え…守山さんS級なんですか!?」

「仮にも医者なんでね。あんた階級のことなんも知らねぇだろうから教えてやるけど、社会の信用度は階級に比例するんだ」

人差し指を立て、真顔で豪語する守山。

「はあ…じゃあ、4つ目の理由は?」


「変身してバカを騙すのが楽しいから」


診察室に沈黙が訪れた。今さらになって、本当にこの男に任せて大丈夫なのか…と。

「それより早く手ぇ入れなよ。チャチャっと終わらせようぜこんなの」

知己は首をかしげながら右手を入れた。すると…

「ほ〜ん…珍しいパターンだね」

その言葉を聞いた子ども達は、伊達正義すらも様子を伺った。ランプは純白だった。

「白いランプは何属性ですか?」

知己は興奮気味に聞いた。

「白いのは『個属性こぞくせい』つって…属性が何個あるかはさすがに知ってるよな?」

「火、水、雷、風、毒…」

「…それに『個属性』も合わせて6つだよ。個属性っていうのは他の5つに当てはまらない独自の魔法のことだ。…ちなみにあんたはA級な」

階級がずば抜けているわけではないが、その聞きなれない属性に子ども達はソワソワしている。


「よし、全員分のカルテが出たな…」

 計測器から出てきた全員分のA4用紙。

それを掴んでパーテーションの外に出た守山は、5人の子ども達に配った。

「属性は『個』…」

知己は肝心の「主要魔法」を目の当たりにする。


「え…『疑問の具現化』って何…?」

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