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サヨナラは始まりと共に  作者: 花村 輝莉
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森での日常

こんにちは。更新が亀のように遅いですね…。

毎日、課題に追われてここまで来れない現実に、げんなりしている今日この頃です。

ゆっくりと進めていきたいと思います。

どうぞお付き合いください。


「本は読み終わったのかい?」


「いえ。あと少しで読み終わるので、家に戻ったら続きを読みます。次の本も早く読みたいですから。」


「そんなに急がなくても、本は逃げないぞ。」


レイルおじさんは、私のことを呆れたような表情で見てくる。


「レイルおじさんが面白そうな本を選んでくるのがいけないんです。」


本には、私の中にない知識がたくさん詰まっている。本の中の知識を知るたびに、空っぽな私の中に色が詰まっていくような気がして、私は夢中になって本を読み漁っていた。飲食寝を忘れるほど夢中になって本を読む私をレイルおじさんは心配していることもわかっているから、最近は控えるように気を付けてはいる。


「それじゃあ、次はもっとつまらなそうな本を選んで来るとするか。」


「え、そんなことしないでくださいよ。」


「だって、ノアが本の虫なのは本が面白いのがいけないのだろ?それなら、本をつまらないものに変えれば、本を手放すのだろう?」


にやりと笑うレイルおじさん。私に意地悪してるなんて、顔を見なくてもわかる。


「私の負けです。今日はこの本だけにしますから。だから、また面白いたくさん本をお願いします。」


私がそういうと、レイルおじさんは嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「あぁ、そうしなさい。」



そんな話をしていると、目の前に我が家が見えてきた。大木に守られるように佇む二階建てのツリーハウスは、一階がレイルおじさんの作業場で、二階が住居スペースになっていた。


「片付け手伝いますね。」


私は、扉をあけながらレイルおじさんに声をかけた。


「いつも悪いね。そうしてくれると助かるよ。」


レイルおじさんは背負っていた籠を作業台の上に置くと、中身を丁寧に作業台の上に並べていく。私は、それを一つずつ棚や箱の中にしまう。レイルおじさんが集めた材料を片付けるのを手伝うのも、もう慣れたものだ。とはいえ、通常の六歳児よりも小柄なこの体で出来ることは限られているから、ヴィティに手伝ってもらってるんだけど。


「明日、私は街に出かけてくるから、留守番を頼むよ。」


片付けをしているとレイルおじさんの声が背中越しに聞こえてきた。私は持っていた葉を棚にしまうとレイルおじさんの方へと体を向けた。


「わかりました。何かしておくことはありますか?」


「そうだね。では、今日集めてきた葉の下処理を頼もうかな。」


「わかりました。」


レイルおじさんは、定期的に街に出かける。その間、私はお留守番だから、レイルおじさんの代わりに出来ることを手伝うのが恒例となっていた。


「今回もお土産に面白い本とフラワーシロップを持って来よう。シロップは、何の花がいいか?」


レイルおじさんは、いつも私に本とフラワーシロップを持ってきてくれる。フラワーシロップはこの国の文化のようで、私はその見た目と味に惚れ、レイルおじさんに毎回頼んでいた。


「今回は、金木犀がいいです。」


もう少しで収穫祭の季節になる今なら、ちょうど金木犀が摘みたてなはず。摘みたての金木犀のシロップは、味に癖はあるが香りが強く、私は気に入っていた。


「なるほど、ちょうど摘みたてのフラワーシロップが出ている頃か。わかった。一番いい物を選んでこよう。」


本当は、私も街に行きたい。自分の目で見て選んでみたい。しかし、レイルおじさんは私をこの森から出すことを拒む。理由はわからないけど、それが私のためであることは何となくわかっているから、お土産で我慢している。それに、本にしてもフラワーシロップにしても、レイルおじさんの見る目に間違いはないから、今は気にしないようにしている。


「ありがとうございます。楽しみにしてます。」


だから、今回も大人しく留守番をしているつもりだったのだ。


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