異世界転生した私が悪役令嬢で、婚約破棄された…?
とある王国のどこにでもいるような下級貴族として生まれた私には親同士が決めた婚約者がいる。容姿端麗で、頭も良くて、優しくて…そんな完璧すぎる彼は上級貴族家の三男として生まれた。
こんな地味で可愛くも美しくもない、バカな私なんかとは大違い。全然釣り合わないことくらい理解してる。
「私は彼には、不釣り合い」
学院のほとんど人の来ない外壁近くの湖の真ん中で私は水面に座り込みながら呟いた。この世界には魔法がある。私が昔生きていた世界には無かったもので、この魔法を扱う才能も彼の方が成績優秀で学院のトップクラス。
私の成績はいつも下から数えた方が早くて…悔しくて泣きたくなるくらい、彼の隣にいるのがつらい。
「こんな所にいたのか、お前を探していた」
ふと、気付けば陸地の方から彼の声がした。まるで呼吸するように魔法を使う彼がうらやましい。あっという間にこの湖の真ん中、私のいる所まで簡単に歩いてきてしまった。
そして私が彼を見上げるよりも早く、彼は淡々と言った。
「俺との婚約を破棄しろ。お前が同学年の姫様を妬んで嫌がらせをしていたなんて人として最低だ」
婚約破棄の後に続いた言葉は、とてもとても軽蔑の色が含まれていて私の心を抉るには十分すぎるほどだった。
私は彼に嫌われていて、婚約破棄されて、彼と同じクラスの姫様を羨ましがって嫉妬して…本当に最低な人間なんだ。
「あれ、でも嫌がらせなんてしたっけ?恐れ多すぎて私は姫様と話したことも会ったこともないのに…!?」
勢いよく立ち上がり、私は彼に反論した。でも、そこに今までいたはずの彼の姿はない。何もない。誰もいない。
おかしいと思ったのと同じ瞬間、私の足元はぐらりと歪んだ。水面に浮く魔法の集中が切れていた。そう気付いた頃には遅く、もう首近くまで水の中だった。ドレスが重い。このままでは溺れる…いや、現在進行形で溺れている。
「たすけ、て…」
必死に顔を上げて、手を上に伸ばす。それでもここは湖のど真ん中でつかまれる物なんてどこにもない。もうここまで来たらムリかななんて思っていると水面から水の中を照す光が綺麗に見える。
「おい、いつまで寝てるんだ?」
彼の呆れた声で、目が覚めた。
私は彼と湖のほとりで休憩をしていて、いつの間にか寝ていたらしい。ああ、びっくりした。彼に本気で婚約破棄なんて言われたら私は生きていけない。
「お願い、おはようのキスをして」
私は大好きな彼に抱きついた。
文字数制限により最後まで書ききれていない不完全燃焼な作品になりました。もう少し最後の甘いシーンを書きたかった…力不足を感じます。