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Episode5 ウルフ族に、サキュバス族。さすがはファンタジー。

今回は、エリーナとリル先輩に関するちょっとした話です。

第5話、お楽しみください。

 そ、それにしても……。

 俺はセレナードの寮生のみんなをざっと見る。

「どうかなさいました?」

 エリーナが俺の様子に違和感を覚えたのか、心配そうに俺を覗き見る。

「い、いや」

 しばらくためらって、結局俺は。

「まさか、みんな女の子だとは。ちょっと予想外だ」

 正直に気持ちを吐露することにした。さすがに「かわいい女の子」とは口が避けても言えなかったが。

「あー…そうですよね。先輩からしたら結構肩身狭いですかね?」

 気を使ってくれる後輩1号、あかねちゃん。だが心配は無用。

「大丈夫だよ。日本のほうでも女の子が多い環境で過ごしていたから」

 実は、日本での俺の環境は結構特殊だった。当時の俺の目標は、とにかく「そこそこの成績で高校を卒業すること」だった。だから、俺の行く高校は正直大して偏差値の高い高校ではなかった。が、代わりに女子高としての歴史が長く、俺が入学したときには、共学になって数年が経っていた。

 そういうこともあって、女子は結構多かったと記憶している。その旨をみんなに話すと。

「あら。そういうことだったら、女の子の扱いは慣れてるってことでいいかしら?」

 そんなことを詩乃が言い出した。…墓穴を掘ったかもしれない。

「ま、待った。デリカシー的な意味では期待しないでくれ。女の子が多い環境といっても、学校にいる間だけの話だ。」

 あわてて誤解を解こうとする。

「ま、先輩ってあまり甲斐性無さそうですもんね」

 辛辣ッ!めっちゃ辛辣!

「こらこらー。ダメだよ、みんな。徹くんはここに来てからそんなに日がたってないんだから、いじめちゃダメだよ?」

 やんわりとみんなを注意する先輩。

 め、女神だ……。ここに女神がいらっしゃる!やっぱり先輩はわかってくれるようだ。いやー、さすがみんなの先輩と言ったところか。

 そんな調子で俺は先輩を見つめていた。

「おや。その手は何かしら?」

 しかし、物事は早々うまくいかないもので。感謝を込めてお礼を言おうとした俺の手が、独りでに先輩の手を取ろうとしていたようだ。

 …うん。ちょっとくらい、いいと思うんだ。

 が、しかし。詩乃は俺の行動を許してくれない。...逆らうのはやめておこう。勝てる気がしない。

「は、はわわ……」

 俺と詩乃の様子を見て、わたわたと慌てる暦ちゃん。仲介しようとしているのだろうが、全くできていない。

「あ、そういえば」

 俺はその時、とあることを思い出す。…そうだ。はっきりさせておきたいことがあったんだ。

「ちょっと聞きたいんだが、エリーナやリル先輩はどういった種族なんだ?」

 これだけは把握しておきたい。自分の仲間がどの種族に位置しているのかも知らずに、仲間のみんなと関わるのは避けたい。

 もしかしたら、種族独特のタブーもあるかもしれない。そういういざこざは避けるに限る。

「私はウルフ族だねー」

 のほほんと報告してくれる先輩。

「ああ!だからケモミミか!」

 それに、彼女は日本の女子学生が持たない立派な尻尾もある。

 胸は…………ちょっとよくわからないが。

「あ、先輩!今ちょっといやらしい視線じゃなかったですかぁ?」

 グッ…!めざとい!

「私のコレは天然だよー」

 そう言って、胸を腕で寄せる先輩。

 …………やはりすごい。

「……」

 ヤバい。横の詩乃がすごい呪怨を放っている気がする。これは別の話にそらさないと……。

「あ、そういえば、先輩。俺にこのSSDを持ってきてくれましたよね?」

「そうだよー。私、生徒会長だから」

 …へっ?あれ?先輩って生徒会長だったの?

「あ、そうなんですか。知らなかったです」

 だから俺のSSDを持っていたのか。いきなり胸の谷間から出してきたからな…。

「この機会だから、みんなと連絡先を交換しておいた方がいいんじゃない?」

 それもそうだ。

「じゃあ、みんな、お願いするよ」

 俺はみんなから連絡先を教えてもらい、こちらの連絡先を教える。

「これで、みんな連絡取れますね…」

 物静かな暦ちゃんがぼそりとそう言った。

「ふへへ。しのくん先輩のアドレス…。どんないたずらしよっかなー?」

 うん。こういう不埒な奴は後でシメトカナイトナ。

「ちょっ…!先輩怖いですって!ふええぇん!すみませんってば!!」

 まあ、あかねちゃんだから別にいいんだけどな。これがどこの馬の骨とも知れないヤツの仕業であれば、ボッコボコにするところだが。

「……じゃあ、エリーナはどういう種族?」

「わたくしは………その…」

 …?なんだか言いにくそうだな。聞かないほうが良かっただろうか。そう言えば、さっきからばつが悪そうにしてたからな…。もしかしたら聞かれたくないものかもしれない。

 …まあ、聞かれたくないものなら、こちらも無理に聞き出すわけにはいかない。…そう思ったんだが。

「さ、サキュバス族……ですわ」

 エリーナは顔を真っ赤にして答えた。…?そんなに真っ赤になるほどのことか?

「あ…あのね、徹」

 すると、横にいた詩乃が言いにくそうに俺に話しかけてきた。

「サキュバスは魅了系のスキルが得意でね?…私たち、セイバーズでは、彼女のような存在は交渉相手を無力化して穏便に抑えるために必要なの。だ、だから……その」

 ……ああ、なんとなくわかった。要するに、彼女はお色気要因というわけか。確かに男性の犯罪グループなら、それで仕留めることもできるかもしれない。

「ああ…。まあ、そりゃ言いにくいわな。悪い、気づかなかった」

 俺は素直に謝罪の意を述べた。

「い、いいえ!徹様は悪くありませんわ!こちらこそ申し訳ないですわ…。ずっと隠していたのですけど…」

 そう言うと、彼女はその綺麗な金髪の髪から二つの角を出し、臀部のあたりから悪魔のようなしっぽをはやしていた。

「ほお―…。初めて見たな、サキュバスなんて。…………うん、綺麗だ」

 俺は見たままを正直に感想として述べた。

「き…!綺麗…ですか…!?」

 エリーナはつんのめるように驚きを表す。その頬はほんのりと赤くなっていた。

「ああ。綺麗だよ。……あ、もしかしてこれが魅了…ってやつか?」

 俺がそんなことを言っていると。

「ふ、普通、魅了に罹る人はそんなふうに落ち着いていないのです…」

 暦ちゃんが遠慮がちにそう言った。

「あ、そうなの?…どんな感じになるんだ?」

「うーん。かなり取り乱す感じになるね。…もうそれこそ、男の人はよだれをだらだらたらしてエリーナちゃんを見ているね」

「うぅ…。あれ、苦手なんですのぉ…」

 俺の問いに答える先輩と、頭を抱えるエリーナ。

「そう言えば、先輩は平気そうですね!エリーナさんがこの姿になると、大体男の人は我を忘れる傾向が強いんですけどね」

「そう言えばそうね……」

 なぜかあかねちゃんと詩乃が俺を珍しいものでも見るかのように観察してくる。

「まさか……いや、そんなはず…」

 そんなことを話していた時だった。

「事件だ!!」

 ガタンッ!とホールの扉が勢いよく開かれる。そこからすでに武装したセイバーズの隊員が飛び込んできた。

 その隊員の様子を見て、その場にいた5人の女の子はキリッと顔を引き締めた。あまりの空気感の違いに驚く俺だが、そんな俺を置いて、状況は進んでいく。

「何があったの!?」

「誘拐事件です!作戦部の宮島さん、交渉役のフローレンスさん、突撃役のローグルスさん、お願いします!」

 すると、名前を呼ばれた彼女たちが準備を始めるために各自部屋と戻っていく。

 ……と、そこにいた隊員が俺の方を見て。

「あ…す、すみませんでした。篠宮さん。僕がしっかりしていなかったばかりに…」

 どこかで会っただろうか、と思ったところで思い出した。この人は確か銀行強盗の犯人のところまでスニークしてダウンさせたやつだ。

「いえ。気にしないでください。もう過ぎたことですから」

 俺がそう言うと。

「お詫びに……なるかどうかはわかりませんが、隊長に今回の出動で、徹さんにも同行してもらえるように頼み込みました」

 む。俺も現場の状況が見られる、ということか。確かに気になるな…。

「ありがとうございます。ご同行、よろしくお願いします」

 俺はお言葉に甘えることにした。

 しかし……。

「(すごい空気だな…)」

 気づけばそこは、とてつもなく張り詰めた空気になっていた。

サキュバスっていいですよね。

個人的に結構好きな悪魔だったりします。

あ、次は第6話です。

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