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Kaleidscope-カレイドスコープ- ~俺、亜人間になります~  作者: AKIRA
-壱章- 学院編:リル=ローグルス
47/80

Episode45 心の死

45話です。

連続投稿っ。

 先輩が連れていかれた。

 俺は自室で不安に駆られる。

「何をソワソワしとる」

「いやだって、悟さんと詩乃があんなに深刻そうな顔して先輩を連れていったら心配するだろ」

 あれは明らかにリル先輩に関わることだ。間違いない。

「そうは言っても、今あの二人は二人だけでリルと言う女子と話をしておるのだろう?汝が心配したところで今できることはない」

 むぐ…。

 いや、そうなんだけどさ…。

「あー…なんかモヤモヤする…」

「気持ちはわかるがあの二人のことだ。リルのためになることをしこそすれ、リルにとって不幸になることはしまい」

 それについては端から心配していない。

 …と言うよりも、二人がそんなことをしないとわかっているからこそ、俺の知らないところでなにか良くないことが起こっているのではないかと思ってしまうのだ。

「汝の心配は理解できないこともない。しかし、汝の言では、リル本人はいたって元気だったそうじゃないか」

「まあ…そうだけど」

「ならば、目下本人の体調面では問題はない、と言うことだ。…それに、何かあれば汝が支えてやればよいのだ。……エリーナの時と同じように、な」

「エリーナと同じように…」

 でも、あのとき俺にやれたことはエリーナの敵となりそうなやつをぶっ倒したことだけだ。

 …いや、それですらエリーナだったら感謝してくれるんだろうが、俺にできたことなんて大したことじゃない。


 たとえ、あのとき俺がハンスに立ち向かわなくても、エリーナなら持ち前の気丈さで何とかしたんじゃないか、と思ってしまうのだ。

 俺があのとき動いたのは、エリーナを不幸にする要素が揃ってしまうのが許せなかっただけ。エリーナにとってハンスをぶっ倒したことが本当に良かったことなのか、俺には判別できない。

 一歩間違えば、セイバーズの隊員の構成員が貴族「様」に手を出したことになってエリーナの立場が悪くなってもおかしくなかった。


 ーーこれで良かった。


 頭ではそう思っていても、いまだに俺は本当の意味でエリーナを守れた訳じゃないと思っている。

「自惚れるな、主よ」

「ラナ…」

「確かに汝は我が誇る幻刀・倶利伽羅の使い手だ。…しかし、決して万能ではない。人間一人にできることなどたかが知れているのだ」

 正論。

 まさしくその通りだった。

「…しかし、自らが誰かの力になろうとするとき、先の結果を気にしてたたらを踏んでしまえば救える者も救えん」

「それは…うん」

 俺はラナの言葉を咀嚼してうなずいた。

「確かにあのときのエリーナは弱っていた(・・・・・)。身体がと言うよりも()が」

「心が…」

「要はな、主よ。心が死ぬと、体も死ぬ(・・・・・・・・・・)のだよ」

 それは、どこか真理のようで、それでいてよくわからない言葉だった。

 心が死ぬ、とはいったいどういう状態なのか。俺には明確なイメージができていなかった。

「…じきにわかる。誰かのために戦い続けた先に、答えはあるはずだ。…我はそんな主の助けになれればいいと思っている。汝が誰かを助けようと努力する限り、我は何度でも汝の剣となろう」

「…ああ、頼む、ラナ」

 今はまだわからない。

 この先の自分のこと、セレンの未来、仲間たちとの関係……なにもかも。

 …それでも、ラナは答えを出してくれた。

「…先輩のこと、見守ることにする」

「うむ、それでよい」

 ラナは俺の言葉に満足そうにうなずいた。





~ヒロイン side リル~

「単刀直入に聞くよ。…篠宮くんのこと、どう思ってる?」

 悟さんと詩乃ちゃんに連れられて、入った個室で悟さんがワタシに質問する。

 …やっぱりばれちゃったか。

「…うん。好きです」

 今、ワタシははっきりと自分の想いを口にした。

 瞬間、耳まで真っ赤になるほど体が熱くなる。

「そう…ですか」

 詩乃ちゃんがワタシの返答を聞いて、複雑そうな顔をする。

「…あ、あのね、詩乃ちゃん…」

「いえ、わかってます」

 ワタシが弁明しようとしたとき、彼女はワタシの言葉を遮った。

「…仕方ないですよ、それは。エリーナにも言いましたけど、好きになってしまったらどうしようもないことくらい私自身がよく知ってます」

 そういう詩乃ちゃんには余裕があった。

 そんな詩乃ちゃんを羨ましく思う自分がいる。

 ワタシもそんな風に誰かをまっすぐに想えるようになりたい。今のワタシの想いは突然すぎて扱いに困る。

「…恐らくキミは、『発情状態』だ。いつもよりも力を制御できなくなっている可能性が高い」

 それは何となくわかっていた。

 ずっと体が熱い。徹くんを想うともっと熱くなる。

 気持ちをもて余してて、コントロールできなくなっているのは薄々気づいていたんだ。…でも、ワタシはそんなことを思っちゃいけない。…なぜなら。

「…ここで出たか。狼人族の生理現象が」

 ワタシは…戦闘種族だから。

次回、46話。

お読みいただいている方、本当にありがとうございます。

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