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Kaleidscope-カレイドスコープ- ~俺、亜人間になります~  作者: AKIRA
-壱章- 学院編:エリーナ=フローレンス
39/80

Episode38 エリーナと詩乃を護るために

38話です。

そろそろ6月ですねー。

あ”-梅雨嫌い……じめじめしてるし。

 エリーナの家の事件から少し数日がたった。

 あの後、俺はセイバーズに運ばれて、しばらくの間魔力回復に努めていたのだが、思った以上に回復が早く、翌日には十分に動けるようになっていた。

 …だが、エリーナのイヤリングがなくなったという話を聞いて、セイバーズの隊員に頼み込んで、一緒になって現場を探したのだ。

 すると、意外にもわかりやすいところにそれは落ちていたため、すぐに回収してセイバーズに戻ったのだが、やはり無理が祟ったのだろうか。

 俺はすぐに寝込むことになってしまった。

 幸いにも体調はここ数日でよくはなったのだが、イヤリングはエリーナに早く渡したかったため、エリーナを探していた詩乃に伝言を頼み、ついでに渡してもらうことにした。

 そうして、俺もエリーナの様子が気になったため、つい昨日、彼女を見たのだが、元気そうに笑っていたのを見て非常に安心した。ハンスのことで、少し気持ちが暗くなっているかな、と心配なってしまったのだが、どうやら杞憂だったようだ。


 そして、あのハンスが起こした事件の顛末なのだが、ハンスの父親であるウォード氏がフローレンス邸にやってきて、フローレンス一家に謝罪をしたそうだ。悟さんが、今回の一件をセレン島外に出ているウォード氏に連絡をしてセレンに戻ってきてもらうように言ったそうだ。

 …そして。


『ホンットーにすみませんでしたッ!今回の件は、うちのバカ息子のせいで…!後始末は私どもにお任せください!本当に申し訳ないっ!!』


 …まあ、そんなわけで。フローレンス家はウォード氏の謝罪を受け入れ、今回のことは不問にした。ハンスが言った市場をすべて渡すという要求はすべて撤回され、今後、何かしらの不祥事があった場合やフローレンス家においてなにか問題があったときにクリード家が支援することを保証した。


「ふう…」

 というわけで、今俺は悟さんと話をしている。

 内容は、この間のハンスの件である。

「…あの、悟さん。どうしました?いきなり話があるなんて」

「…まあね。ちょっと…」

 どこか迷ったような表情を見せる悟さんだが、やがて決意したかのように顔を上げ、

「…詩乃にはもう伝えたんだけどね……君にも言っておくべきだろう…」

 そう言って怖い顔をする。

 …な、なんだ?そんな顔をされるとすごく不安になるのだが。

「…あの、ハンス家のことなんだけどね。あそこには執事が一人いるんだ」

「…はぁ。そうですか」

 それがいったいどうしたのだろうか。

「老執事なんだけど。そいつが、この間の事件以来、“行方不明”になってるんだ」

「…何ですって?」

 俺は改めて悟さんの顔を見た。

「…僕の方で、そいつを追ってみる。もしかしたら、嫌な予感がするんだ」

 そう言ってこわばった顔をさらに硬くする悟さん。

「…それに、あの…セレンダとかいう武力集団」

 そこで俺は思い出した。

 そう言えば、あの仮面をつけた集団…何か独特の雰囲気があったけど…。

「アイツらが…どうしたんですか?」

「…あの集団はね。最近になってなりを潜めているけど、セレンでの日本に対する反勢力部隊なんだよ」

「…そんな…」

 まだ、そんな奴らが残っているのか……。

「…セレンにはまだ問題が多い。…自治が事実上凍結していることがその証拠だ。今の状態では、近いうちに良くないことが起こる。そうなれば、僕たちの未来は……」

 その言葉の意図は、セレンの人間ではない俺でもなんとなく理解できた。

 きっとやつらはこのセレンにおいて、何か問題を起こす気がする。それは悟さんが言わずともなんとなく想像できたことだった。

「……俺は、なんとなくでしたけど……感じていました、セレンの問題を」

「…そうか」

 例えばこの間、朔が言ってたこと。

 例えばこの間、エリーナの家で起こった事件。

 ……そして、その事件にかかわっていたセレンダと言う反日本勢力。

「……むしろ、こちらが彼らの存在を今のこの段階で補足できたことは幸いだったのかもしれない。いずれにしても、今はまだ君たちに動いてもらう段階じゃない。いろいろと考えてしまうこともあるかもしれないが、もう少しだけ僕らに時間をくれ。…必ず、彼らの親玉をあぶりだして見せるさ」

 …クリード家に仕えていたという老執事。こいつがそのセレンダの親玉だと悟さんは考えているようだった。

 彼らの潜むアジト。

 それをあぶりだすまでは、悟さんは俺たちに出撃はさせないつもりらしい。

「…………了解しました」

 俺はただ、複雑な思いを抱えながら、悟さんにそう返すことしかできなかった。






「……徹様」

 俺が屋上で物思いにふけっていると、屋上の扉が開かれ、エリーナが顔をのぞかせる。

 その表情はすごく嬉しそうだった。

「ん?エリーナか」

 俺はエリーナを見て、なんとなく返事を返す。

 すると、彼女はニコニコしながらこちらに寄ってきた。

「…考え事ですか?」

 そう聞かれて、俺はどう返事をしたものか、迷ってしまったが。

「…まあね」

 そうあいまいな返事になってしまう。

「…徹様のおかげで、私は強くなれましたわ」

 ふと唐突に、エリーナはそんなことを言い出した。

「ど、どうしたんだ?いきなりそんなことを言って…」

「……徹様は、このセレンのことがお嫌いですか?」

 そんなことを聞かれて俺は反射的に、

「そ、そんなわけない!」

 と叫んでしまった。

「…そうですか。ならば、私もうれしいですわ。…ここは、私と言う一人のサキュバスが生まれ育った場所であり、大切な人たちと巡り合えた場所ですから」

 エリーナはそう言って一層ニコニコしながら言った。

「徹様、ありがとうございます。…これで二度目ですわね、あなたに助けられたのは」

「…い、いや。別に俺は大したことはしてないよ。自分のやりたいことをやっただけだし」

 そう言って、俺はエリーナの視線から逃れようとするのだが。

「…むぅ。徹様、私の目を見てくださいまし。そんな私の目を見るのがお嫌なのですか…?」

 不安そうにしながらも俺の顔を覗き込んでくるエリーナ。

 その行動にドギマギしながらも、俺は彼女に言う。

「え、エリーナは可愛いんだから、あんまりそう言うことをしていると、男から勘違いされるぞ…?」

「…え、か、かわいい…ですか?…えへへ、そうですか、かわいいですか……」

 ……なんか浸ってらっしゃる。

 やっぱりかわいいと言われると、女の子はうれしいのかな…。

「…あら。随分仲がよさそうで」

 そんなことをしていると、聞き覚えのある声が聞こえた。

 振りかえると、詩乃が腕を組んで、俺たちを見ていた。

「ちょ…!し、詩乃…!?いつから見てたんだ…?」

 困惑して俺は彼女を見る。

 エリーナも困るだろうに……。

 そんなことを思い、俺はエリーナの方を見るのだが。

「…私が徹様と何をしようが、詩乃さんとは関係ないのではなくて?」

 …………あれ?

「…ふふ。言うじゃない。…でも、そうはいかないわ。…徹、これから戦闘訓練よ。お父さんから、あなたのトレーニング係の役目を預かったわ。今日からみっちりしごいてあげるから、覚悟しなさい?」

 …なん…だと…!

「あー…っと。ちょっと聞きたいんだけど、詩乃さん。それって結構ハードでありますか?」

「うーん?どうかしらね。あなた次第ではないかしら」

 …うん。いつぞやのサンドバッグ事件を思い出した。

 ……ヤバい。寒気が……。

「ちょっとお待ちくださいませ!詩乃さん、徹様は私と会話をしていたんですの!邪魔しないでいただけますか?…それに、徹様はこの間の一件の疲れが取れてないのかもしれませんし…!」

「ああ、それなら大丈夫よ。徹の体調はカンペキに把握しているわ。…手加減もするしね?」

 うふふ、と怪しく笑う詩乃。

 ……うん、信用ならない。

「…うー!詩乃さんばっかり、ずるいですわ!訓練の際、徹様のそばにいるんじゃありませんの」

「そう言うエリーナだって、私よりはお出かけできる機会が多くないかしら?私は作戦担当なんだから、みんなよりも仕事量は多いわけだし」

 うー、うー、とお互いいがみ合う詩乃とエリーナ。

 ……あれ。なんでこの二人、こんなにもいがみ合ってるんだ?仲良くなかったっけ、エリーナと詩乃って。

「…まあ、いいわ。じゃあ、今日は特別に無しにしておくわ。次からは何が何でもやるわよ、徹」

「お手柔らかにお願いします…」

 そう言って、俺は詩乃に拝み倒す。

 振り回されすぎるのも良くないしな。

「…詩乃さん。私、負けませんわよ?」

「…ええ、もちろん、私だって承知してるわ。正々堂々、勝負しましょう?」

 ………なんか、俺の知らぬところでなんか新しい関係が築かれている気がする。

 …まあ、いっか。俺のやるべきことは変わらないし。

「…詩乃。俺、強くなるよ」

「と、徹…っ」

 俺は詩乃に向けて決意を口にした。何度伝えたかわからないけど、何度だって伝えたほうがいい。そんな言葉のようにも覚えたから。

「…エリーナと詩乃を護るために…な」

 …いずれ、それだけじゃいけない状況になるときが来るかもしれない。

 それでも、今は。この二人を護れるだけの力をつけることが今の俺のやるべきことだと思うから。

「ちょ…!」

「ま、まあ…!」

 そろって二人が赤面しだす。

 …ん?なんか、変なことを言っただろうか。

「……はぁ、ホント、心臓に悪いわね…」

「仕方ないですわ…。徹様ですもの」

 ……なんか俺、呆れられてない?

「…じゃ、これから頑張りましょう」

「…ええ」

「……ああ」

 俺たちは手を重ねた、円陣を作って。

 お互い笑いあう。…そんな、当たり前の幸せを護るために。

 エリーナや詩乃の笑顔を護りたい。

 たぶん、その意思は。あのとき俺がこのセレンで銀行強盗に襲われなければ、生まれなかったものなのかもしれなかった。

次回、Extra episodeです。

…え、何それって?

まあ、これでエリーナの話もひと段落しましたし、そろそろ今後のことについてちょっとおまけの話っぽくして私の大まかな活動方針を書こうかな、と。


ここまで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。まだまだ本作は終わらせる気はありませんが、ご存じの通り、更新速度がかなり鈍足でございます。

よろしければ、気長にお付き合いください。…では。

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