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Kaleidscope-カレイドスコープ- ~俺、亜人間になります~  作者: AKIRA
-壱章- 学院編:エリーナ=フローレンス
37/80

Episode36 決着

36話です。

さあさあ順調に更新頻度が下がっております(汗)。

……まあ、エリーナ回が終わるまでは何としても書ききるつもりでいますので、はい。


~Enemy side ハンス~

 …バカな!?そんな馬鹿なことがあるのかッ!!

 あのガキ、なぜ私の重力魔術に耐えているッ?

「貴様……何者だ…!」

「…ただの一般人だよ。ついでに言えば、元はセレンの人間でもない」

 ……あり得ん。

 ただの一般人が…しかも、セレン人ですらないのに私の魔力に耐えうる力を持っているなど…ッ!

「何をした…?私の力を真正面から受けて平気なはずあるまい。……答えろ!」

 しかし、目の前のガキは私のそんな言葉を聞かず、ただただこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。

 …お、おかしい…!奴からもらった“アレ”を使って全員を組み伏せられると思っていたのに…!なぜこいつは悠々とこちらに歩いてくるのだ…!

「ま、待て!貴様、わかっているのか?私はハンス=クリードだぞ!…何か私に怪我でもさせたらどうなるか、あとでどうなっても知らんぞ!!」

 私は力任せに叫んだ。

 まだだ!まだ負けるわけにはいかんっ!

 憎き外敵勢力を倒すまでは、負けるわけにはいかんのだ!セレン人の誇りにかけて、なんとしてもこの聖戦は勝たねば…!

「き、貴様はニッポン人なんだろう!?ならば、余計に不利になるぞ!ここで私を傷つけでもしたら、貴様が他国で障害事件を起こしたと向こうの国で報道されるッ!……ふ、フハハハハハ!そうだ、そうだ!!貴様の立場が悪くなるだけなのだ!理解したなら早く辞めたまえ!もはや貴様に勝機はない」

 ここで止められなければ、私の野望は終わる。

 …セレンに恒久の平和を。

 そのためには、このガキを含めたあの「ニッポン」に勝たなくてはならん…!

「……それで?」

 しかし、目の前のガキは私の前まで来ると、それだけを口にして、構えをとる。

「な、なにをしている…!そんなことをしても、貴様が不利になるだけだとなぜわからんッ」

 理解ができなかった。

 なぜそうまでして私に歯向かうのだ。

「…なぜ……だと?そんなの簡単だよ。俺はすでに、向こうではセレンで発生した事件の尊い犠牲者になっているからだよ」

「……なに?」

 その言葉を聞いて、私は思い出す。

 そう言えば、最近銀行で大きな強盗事件があった。

 なんでも扱われていた“ブツ”が相当な危険物らしく、すべてセイバーズが押収したと聞いていたが、その危険物が例の“オリジン”で確か、間違って摂取した者が…

「ま、ま、ま、まさか…!」

 私はおののいた。

 …間違いない。あのオリジンを間違って摂取した者の話は聞いていた。

 確か、黒髪の少年だと……。

「…悪いが、今更気づいても遅い。俺は今回の件で、お前を許すつもりは毛頭ないぞ、ハンス=クリード…!」

 目の前の少年の碧眼が、青い線を引く。

 今にして思えば、この少年さっきと雰囲気が違う…!目の色も碧眼じゃなくて黒色だった!

「…………覚悟しろ」

 グッとこぶしを握る目の前の少年。

 怒りと決意の満ちたその瞳は、まるで悪魔のごとく光を放つ。

「や、やめろ…!やめてくれ…!わ、わかった…!お前の言う通り、すべて破棄する!!…な、なんなら…私の持つすべての財貨をやろうじゃないかっ。…え、エリーナに渡せというなら、そうしよう…!!」

「…………」

「ヒッ…!こ、これでも満足できないのかッ!?貴様は何が欲しいのだ!普通、貴族の持つ財産を担保なしで獲得できる機会などありはしないのだぞ!?」

 ……狂っている。私は、ただ自らの信念に従って行動したまでだ。

 しかし、こいつは違う。どう考えてもこいつの今の原動力はどう考えても私のそれとは全然違う…!

 脅しても効果がなく。何か対価を示してもなびかず。あまつさえ、こちらの降伏宣言を聞いてまでも止まらない。

 なぜだ。私は……ただ。

「…貴様らはいつもそうだ、ニッポンの人間族…!こうして何かしらの対価を差し出しても、要望には応えずただただ圧制する。いったい……何が貴様にそこまでさせるのだ…!」

 私はただセレンの平和を…!

「ただ、平和のための行動をなぜ止める…!」

「…じゃあ聞くが。そのためにエリーナを犠牲にしろと言うのか」

「……は?」

 なん…だと?

「お前はただ、セレンの平和をうたい、そのためだけにエリーナの未来を摘み取ろうってのか」

 その言葉にはいろいろな感情が込められていたようにも見えた。

 …しかし、その言葉は私には響かん。

「ああ。そうだとも。私はいかなる方法を用いても、このセレンの平和を追求する。…大衆の平和を守ってこその貴族だ。そのためならば私は、後ろ指をさされようともやめることはせん…!」

 悪魔のような瞳におびえながらも、何とかその場にとどまる。

 ……話せばわかるはずだ。それに、油断した隙をついて逆転することも今ならば可能かもしれない。

 このサヴァトにおいて、このイベントは譲らん…!

「…そうか。なら、お前は敵だ」

 少年の握ったこぶしが濃い青いオーラをまとい始めた。

「な、なぜだ!貴様、そこまで奴らと一緒なのか!あの憎き…“ニッポン人”と!」

「いいや、違うさ。…それは、お前がセレンのことしか考えていないからそう言うんだよ」

 何を言うかと思えば、そんなくだらぬことを…!

「ふざけるなよ…ガキィ!!貴様らニッポンの人間族が我らにした仕打ちを忘れたかッ!急にセレンの住人がいずこかへと飛んで……たどり着いた先は全く見知らぬ世界の土地。やっとの思いで築き上げたこの土地を用意する間も、貴様らは我らセレン人を粗雑に扱ったこと……!!」

 それは怒りだった。途絶えることのない怒りだった。

「いい加減にしろッ!…お前は、ただ自分の復讐にエリーナを利用しているだけだ。俺だったら、そんな奴と自分の人生を共にするなんてまっぴらごめんだ…!」

 私の怒りに対して、目の前の少年は押さえつけていたであろう、自身の怒りを解き放つかのように叫ぶ。その叫びはなぜか私に深く刺さった。

「お前のは、ただ自分の怒りを鎮めるためのものでしかない。ただ鎮められない怒りのはけ口を求めているだけだ」

 そう言うと、少年が私の胸倉をつかんだ。

「ク…!」

 あまりの魔力圧に身動きが取れない私はただその少年の顔を見ることしかできなかった。

「いずれ……わかる。貴様にも、私の気持ちが」

 呪いをかけるように私はつぶやいた。

 この少年は幼すぎる。あまりにも彼の言う“正義”は理想すぎて。

 私は……少年の正義は認められなかった。

「…………吹っ飛べ」

 そうして。迫りくる青いこぶし。そうしてそれが私に到達するまでの間。

 私が望んだ未来が。理想郷ユートピアがどんどんと遠ざかっていくのを感じて。

 少年の一撃を受けた時にはすべてが真っ白な世界へと飛ばされていた。









~HERO side 徹~

「吹っ飛べ」

 そうして、俺は思いっきりこぶしを振りぬいた。

 見事それは相手の顔面のど真ん中に着弾。その威力は自分でも恐ろしく感じていた。

 命乞いをした相手をぶちのめした。

 そんな事実が自分の心に突き刺さる。…決して間違ったことはしていない。そうは思いながらも、どこか虚無感を感じながらの一撃だった。

 戦車オペロンの力なら、魔力による重力であっても十分跳ね返せるし、こぶしに魔力を集中すれば魔力圧ごと吹き飛ばせるとわかっていた。

 ハンスは俺の一撃に頬が変形するほど顔をゆがませぶっ飛んでいく。

 すさまじい轟音が響き渡り、ぶっ飛んだハンスがしたたかに頭を壁に打ち付ける。

 それがとどめの一撃になったのか、電池が切れた機械のように、カクンとうなだれて動かなくなった。

「………うっ」

 とたん、集中力が切れたのか、体から力が抜ける。あまりの虚脱感に俺はひざを折った。

「徹っ…!」

 ふと気づくと、詩乃がひざまづいて俺の横にいた。

 ……ああ、そうか。ハンスが倒れたから重力が元に戻ったのか。

「…え、エリーナは?」

 何とか意識は保てた。

 最近は悟さんに戦闘訓練をやってもらったと同時に、魔力コントロールの練習をしてたのだ。

 魔力コントロールの練習をしていたおかげだろうか。前回の朔の時とは違って気を失うほどの反動は来てない。

「エリーナなら大丈夫よ。傷一つないわ」

 どこかの誰かとアイコンタクトをとりながら詩乃は俺の質問に答えてくれた。

 たぶん、他の人にエリーナや貴族の人たちを任せたのだろう。

「犠牲者は…」

「おそらく出てないでしょうね。……まさかあなた、それを気にして…」

「ハハハ…。いやまあ、詩乃があれだけ譲らなかったことだしね。それはやっておかなきゃなって」

「…はぁ。あなたって人は全く…」

 とは言いながらも少し嬉しそうな顔をする詩乃。

 隠せてないぜ、お嬢さん。

「俺よりも、エリーナのことを頼む。俺は前回ほど消耗はしてねえから。適当にセイバーズの応援を呼んでくれたらそれでいい」

 むしろそれよりもエリーナの方が心配だ。

 今回、一番消耗しているのはエリーナだと思う。俺が見る限り、物理的なけがはしてないように思えたが、油断はしないほうがいいだろう。

「…わかったわ。あなたはうちの隊員に介抱してもらいなさい。……それから、お疲れ様」

 詩乃の穏やかな笑顔を向けられて、俺は少しだけ胸が高鳴るような感覚を覚えた。

 …そうだ。これでよかったのだ。

「じゃあ、行くわね」

 そう言って、詩乃はエリーナの方へと歩いていく。

 ぼーっとしていると、どことなく見知った顔が俺の目の前に現れた。

「どうもです」

「……あれ、あなた確か…」

 俺は見覚えのある顔に、思考を巡らせる。見たことのある顔……どこで見たのか……あ。

「確か、銀行で…」

「ええ、それと。篠宮さんが最初に能力を発現された時に出撃に誘ったのも私でしたね」

 そうだ。この人は銀行強盗に巻きこまれた時に強盗犯をテイクダウンした隊員さんだ。

「その節はどうも。これで3度目ですね」

「…ええ。毎度毎度すみませんが、よろしくお願いします」

 にっこりして言うその人はほかの隊員に担架の準備をするように指示する。

「…あれ。なんかこの前着てた装備と違いますね」

「おかげさまで。出世しまして」

 おやまあ。それはめでたい。

「おめでとうございます」

「ありがとうございます」

 ただの穏やかな会話ではあったが、ハンスを殴り飛ばしたときのすさんだ気持ちはどこかへと行ってしまった。

 そうして俺は担架に乗せられて。

「お疲れさまでした、篠宮さん」

 そう言われたことが何よりも、頑張ってよかったと思える瞬間だった。

次回、37話。

次回くらいでエリーナの話がひと段落しますかね。

…問題はここからどうするかなんだよなぁ…(-ω-;)

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