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Kaleidscope-カレイドスコープ- ~俺、亜人間になります~  作者: AKIRA
-壱章- 学院編:エリーナ=フローレンス
36/80

Episode35 あきらめられない気持ちをあきらめられなかっただけなんだ

35話です。

すみません……結構体調が傾いてまして…(泣)

6月からは更新がさらに遅れる(下手すると止まる)と思いますが、なにとぞよろしくお願いします…。

~HERO side 徹~

 ひどい重力力場の中で、俺は虚無感に似た何かを胸に抱えたまま動かずにいた。

 ……いや、違うな。動かない…というよりは、動けないと言った方がいいのかな。

「(…ああ、くそ)」

 本当に自分が嫌になりそうだ。

 手を伸ばせば、そこに殴り飛ばすべき敵の男が立っているというのに。

 エリーナのすべてを踏みにじる最低な男がそこで嗤っているというのに…!

「…あのハンスとかいうやつ、なんか言ってるけど…」

 ダメだ。ひどい重力の魔力で意識が飲み込まれそうになってる。このままだと、本当にブラックアウトするかも……。

「(くっ…)」

 失意のまま、目を閉じた。当然視界は真っ暗になる。

 ……ああ、このまま二度と目を覚まさなければどれだけいいか。

 そんなことを考えていると、鬱屈なことを次々と考えてしまう。オリジンは、俺にはふさわしくなかったんじゃないか、とか。強そうな刀を持っていい気になってただけじゃないのか、とか。ガイアさんに娘を頼むと言われて有頂天になってたんじゃないのか、とか。

 ……もっと言えば、あの時、詩乃に言った言葉…「俺に守らせてくれ」という言葉をもう一度、ここで言えるのか、と。

 ああ……もう…………。

 ……。

 …。













 ―――なぜあきらめる?


「…!」

 不意に暗闇から……いや、目を閉じていると頭の中で聞こえた声。

「(誰だ…!)」

 その誰ともわからない声に耳を傾ける。


 ―――人を護ることがどれだけ難しいことか、汝が一番良くわかっているだろうに。


 …それはそうだ。詩乃が朔に殺されそうになった時、俺は戦線に立って、初めてそう思った。

「(だから…なんだよ……!あの時、詩乃に「守らせてくれ」って言ったことが、そんなに愚かだったって言いたいのか…!)」

 逆切れ。最悪だ。でも、言わずにはいられなかった。

 理不尽を前にして。言いようのない……おいそれと他人が理解できるなどと口にできないような闇を突き付けられて。

 …それでもバカみたいに「君は一人じゃない」なんていう青臭いセリフを吐けってのか。

 わかりもしないエリーナの気持ちを俺がんでやれと。そうしろと言うのか。


 ―――いや、違う。それは根本的に間違っているぞ。


「…はあ?」

 俺はその声が誰なのか、今更になって考える。


 ―――少なくとも、我が剣、倶利伽羅を初めて握ったときの徹殿は、そんなことをいう男ではなかった。


「……」

 それを聞いて、俺は黙り込んでしまった。それがラナの声だって気づいたことも黙ってしまった原因の一つではあったが、何より俺は、いつもと違うラナの声色に思わず息を飲んでしまったのだ。


 ―――違うのだ。契約者よ。あの女子の気持ちがわからぬ汝だからこそ、その価値があると我は言って居るのだ。考えるのだ、徹殿よ。今、あの子が求めておるのは、本当に理解者なのか?


「それは…」

 そうして、ようやく自分の頭が冷えたのだということに気づき、正気に戻った。

「違うのか…?ラナ」


 ―――馬鹿者。そんなもの我にもわかるか。


 いやいやいやいやいや。じゃあ、なんでそんなあたかもそれっぽいことを言ったんだよ。


 ―――いいか、徹殿。彼女が本当に理解者を求めるなら、同じ境遇である人間をよりどころとしているはずだ。…わざわざ一般人の男と二人きりで出かけたりなどするものか。


 エリーナとのデートのことを持ち出され、ドキッとする。

 しかし一方で、どこか納得している自分がいた。

 確かにあの時のエリーナの笑顔は本物だった。確かにあの時のうれしそうな顔は本物だった。確かにあの時のキラキラした目はまさしく本物の彼女の感情だった。


 ―――今は汝にしかあの女子を救えんし、支えになる者もまた、汝でしかない。


「(エリーナが…俺を…)」

 ドクン…と。心に火が付いたように……まるで、今まで知らなかった自分のことを突き付けられたかのように、俺の心臓が跳ねた。

「……そっか」

 だとしたら、俺にできることは一つだ。

「(…すまん、ラナ。何か逆転できるような手段を教えてくれ…!)」

 あきらめてはいけない。


 ―――うむ。それでこそ、倶利伽羅の使い手。…であれば、我から一つ。実はさっき気になったことがあってな。


「(な、なんだ…?何かあるのか、手が!)」


 ―――正直うまくいくとは思えんが、どうも、汝の使っている力……オリジンと言ったか。それから引き出されている魔力が…少々中途半端なような気がしていたのだ。


「(中途半端…?)」


 ―――しかり。もう少し出力が出るような気がしたのだが……いや、どういうことかは我にもわからん。…しかし、少なくともさっきの雷撃を見た時に、我の仮説は確信へと変わった。汝の力はまだまだこんなものじゃないはずだ。


「(もしかして…引き出せるってことか!?)」

 そう言えば…さっきの雷撃、いつもより威力がデカかったような気がする。


 ―――…そこでだ。魔力欠乏覚悟でそのオリジンの力、限界まで引っ張り出せんか?


「……マジかよ」

 それ死ぬんじゃね?


 ―――無理を承知で聞いておる。


 そうは言ってもだな…。

 ……いや。ほかに手はない。この状況を、指をくわえてみているよりかは断然マシだ。

「…わかった」

 そう言うことならやってみよう。

 何とかこの重力を耐え切る方法……。今なら別のオペロンを開花させることもできる感じはあるんだけど……。

「……無理だな」

 たぶん新しく能力開花はできそうにない。…なら。

「(既存のオペロンで…!)」

 意識を集中し、感覚を研ぎ澄ます。体中の魔力をフル回転させ、とにかくがむしゃらに力を引き出してみる。


 Status scanning........completed.《状況解析……完了》

 Auto selection......executed.《自動選択……実行》

 The opelon, "Chariot" ..........over-expression《オペロン名称…「戦車」…強制発現》


「…っ!!」

 オリジンの声とともに、すさまじい感覚。

 一瞬だけ、意識して一気に魔力をくみ上げただけなのに、オリジンがすごい勢いで力を引き出してくる。

「(うおおおおおおっ!?)」

 思わず驚いてしまうが、グッと意識を保つ。


 ―――うまくいったようだな。…さあ、行くがよい。我が契約者よ。


 その声に後押しされるかのように、俺は力を込めて、グッと立ち上がって前を見据える。


 ……もう迷わない。


 きっとこの目を開けば、戦闘は免れない。

 それでも守ると俺は詩乃と約束した。


『…「犠牲者ゼロ」。それが私の流儀よ』


 それが彼女の流儀だというのなら、エリーナだって犠牲になるべきじゃない。

 俺は前を見て、ハンスをにらみつける。

 そうして俺を見たヤツの反応は、面白いほどに大げさなものだった。


「なぜ、貴様が僕の魔術領域で立っているのだッ!!」

「え…?」

 エリーナもヤツの声を聴いて振り返り、俺の方を見て絶句する。

 彼女の瞳に、俺がどう見えているのかはわからない。

 ……ただ俺は。

「(女の子の見ている目の前で、カッコつけたいのは男のさがだしな!)」

 ただ俺は、エリーナを助けたいというあきらめられない気持ちをあきらめられなかっただけなんだ。

次回、36話。

ちょっと短めでしたかね?

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