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Kaleidscope-カレイドスコープ- ~俺、亜人間になります~  作者: AKIRA
-壱章- 学院編:エリーナ=フローレンス
32/80

Episode31 なかなかに罪作りな男だな、君は。

31話です。

ちょっと遅くなりました。

~ヒロイン side 詩乃~

 サヴァトが開催される前日、私を含めたセイバーズチーム(徹は除く)は、サヴァトの前日であるにもかかわらず、敵性体の沈黙のために任務に赴いていた。

「うー…疲れましたー…」

 あかねちゃんがぐったりしている。それもそうだろう。何せ、今回の相手は少々厄介だった。

「仮面をしている敵なんて初めてだよー」

「そ、そうですね…。私の銃も……通りませんでしたし」

 リル先輩と暦ちゃんがそんな会話をしていた。

「あれだけの機動性を備えた敵は久しぶりでしたわね…」

 エリーナが少し疲れたような声を出す。

 …実際、エリーナの支援がなければ、奴らの機敏な動きに翻弄されながら戦うことになっていたからもっとややこしいことになっていたかもしれない。

「ありがとうね、エリーナ」

 私は彼女にねぎらいの言葉を掛ける。

「いえいえ。詩乃さんの指示のおかげですわ」

 エリーナはそう言って言葉を返してきてくれるのだが。

「でもでもー。大丈夫なの?エリーナちゃん。明日って、サヴァトの日なんじゃ…」

 リル先輩が心配したようにそう答えると。

「…お気遣いありがとうございます。ですが、大丈夫ですわ。明日のために、しっかりと体調を整えていたんですもの」

 そう言ってにっこりと微笑むエリーナ。…無理していなきゃいいけど……。

「…そう。それならいいわ。とにかくみんな、お疲れ様です。エリーナはもちろん、全員ゆっくり体を休めてください。…以上、解散です」

 私はそう言って、みんなと別れた。いつも通り、後輩組の二人はワイワイと話をしながら帰っていく。

 リル先輩は何やらルンルンで上機嫌に部屋へと向かっていった。……まさか、徹とのお出かけの計画を練っているのかしら?

「(それはそれで……)」

 ………くぅ!どうしてよ!なんで胸がモヤモヤするのよ!

 ああああぁぁぁぁもう!

「(気にしないほうがいいわね…)」

 そんなことを考えながら、私は自分の部屋へと戻っていく。

 そう言えば、この先は徹の部屋ね……。

 そうして、私が徹の部屋の横を通り過ぎた時。


『それよりも良いのか?契約者、徹殿よ。明日はエリーナ殿の夜会に参加するのではなかったか』


 そんな女性の声が聞こえた。

「……えっ?」

 思わず小さくつぶやいてしまう。

 確かこの声は、徹の新武器を管理している……そう、ラナさんだ。

「(徹が……サヴァトに参加?)」

 まさか、そんなこと……エリーナは一言も…。

「(…もしかして徹、エリーナにこのことを言ってない…?)」

 …いやな予感がした。

 これはエリーナに言っておくべきかもしれない。そもそも貴族じゃない徹がどうやって参加する権利を手に入れたのか。

 疑問は残るがとにかくエリーナに…。

 そう思ったその時だった。

「…詩乃」

「えっ…?」

 声を掛けられた。

 …振り返ると。

「…お父さん?」

 そこにいたのはお父さんだった。

「…今日の敵性体について、少しだけ話があるんだ」

 そんなことを言い出したかと思うと、お父さんは深刻そうな顔をする。

 どうしたんだろう……。何か良くないことがあるのだろうか。

「…わかった。作戦室に行きましょう」

 私はお父さんとともに作戦室へと向かった。




~HERO side 徹~

「どうしたのだね、我が親友。何やら難しい顔をしているが」

「…ああ、いや、なんでもないよ。ちょっと疲れているのかもな」

 そう言って、俺はケビンに笑いかける。

「…しかし、今日のエリーナ君はすごくきれいだな。まるで見違えるようだ」

「……ああ」

 まるで品定めするかのようにほかの貴族に囲まれているエリーナを見やるケビン。こいつは貴族ではあるが、中庭であった男のようないやらしさは存在しなかった。

「…ふむ。何か心境の変化でもあったのだろうか」

「…?何の話だ?」

 ケビンの発言に疑問を覚える。

「何の話も何も、彼女があんなふうに特別製のドレスを用意してきたのは今回が初めてなのだよ。…こう見えても僕も貴族だからね。ほかの貴族の方がお召しになられているドレス、着物はちゃんと把握している」

 そうなのか…。

「見たまえ。これが、去年のサヴァトでの彼女の姿だ」

 ケビンは写真を見せてきた。

 …なんでこんなもの持ってんだよ、と疑問を覚えたが。

「…黄色いドレス」

「そうだ。…みすぼらしい……とまではいかないが、どう見ても脇役のデザイン。今回が彼女の初の晴れ舞台とはいえ、あのように群青のドレスでしっかりと決めたのは今回が初めてのはずだ」

 俺は少し意外だった。じゃあ、あのデートはいったいどういう意味だったのか。

 そんなことを考えてしまうと、心が落ち着かなくなってしまった。

「……」

「…?どうしたのだ。少し顔が赤いようだが、風邪かね?」

「いや、なんでもない」

 俺はふと顔をそらした。その先にエリーナがいる。

 さっきとは違い、もう囲まれていなかった。…すると、彼女もこちらに気づいたのか、駆け寄ってきた。

「徹様…!」

 いやいや。そんなに急いで来なくても。

「どうして来られたのですか…?」

「ああ、うん。君のお父さんに出席してみないか、と」

「そうなのですか…」

 しかし、彼女は先ほどまで俺と目を合わせてくれたのに、途端に目をそらす。

「…?どうしたんだ?」

「い、いえ。なんでもありません…。それよりも、わざわざ来ていただけるなんて…」

 感動したように目をキラキラさせるエリーナ。

 感情が高ぶると、エリーナは目がキラキラしだすんだな…。

「やあ、エリーナ君。ご無沙汰しています、ケビンです」

「まあ…!ルーカス家の長男であらせられますね?学院ではお世話になっています」

 二人があいさつを済ませる。

「それにしても…君たち、何か僕に隠していることはないかい?」

 そう言って、ケビンはエリーナのドレスをちらちら見ながらいぶかしげな視線を俺たちに向ける。

「あー…っと。別に何もないぞ?」

 俺はごまかそうとする。

 まさか、エリーナと二人きりでショッピングデートした、などとは口が裂けても言えない。

 ちらっと横を見ると、エリーナは顔を真っ赤にしていた。…これは早く話の方向を別方面にそらさないといけないっぽいな。

「……しかし、妙だな…」

 と、ケビンが言うので、

「いやいや、ホントに何もないんだって」

 と俺が何とか話をごまかそうと策略するのだが。

「いや、その話ではない。…まあ、その話も気になるが、今は別の話だ」

「「…?」」

 ケビンの思わせぶりな言い方に、俺たちはそろって首をかしげる。

「…何なんだ、ケビン。気になることがあるなら話してくれ」

「……まあ、エリーナ君がここにいる中、話すのはどうなのか……」

 と渋るケビン。

「…いや、いいか。吐き出しておこう。さっきから気になっているんだが、警備がやけに薄い気がするのだが」

「えっ?」

 俺は周りを見る。

 …そうだろうか。俺にはあまり良くわからない。警備が薄いと言われても、そもそもこんなに警備を張り巡らせている施設が少ないせいか、何と比較していいかわからないのだ。

 …だが。

「そうですわね……。私も少しおかしいと思いました」

 エリーナがそう言ったことによって、俺は少しだけ嫌な予感がした。

「……なあ、エリーナ。この警備はいったいどこの管轄なんだ?」

「私の…婚約者であるハンス=クリード様の家に手配していただいたものですわ…」

「……なに?」

 そこで、ケビンが眉を寄せるような顔をするのだが、その時、景色に溶け込んでいたラナが俺にささやいた。

 ―――徹殿よ。セイバーズとやらに電話せよ。何か嫌な予感がする。

 その声を聴いて俺も心の中で答える。

 ラナは俺の心の声を聴くことが出来るからだ。

「(ああ。俺もそう思ってたよ。…なんとなく不安になっちまってな)…悪い、二人とも。ちょっと電話するわ。外に出てくる」

 そう言い残し、俺は会場をいったん退出した。




~Another side ケビン=ルーカス~

 …やれやれ。今日の篠宮君は何かおかしい。挙動がいちいち僕の気にかかってしまってしょうがない。

「君は何か知らないか――」

 そう言って、エリーナ君の方を見るが。

「……(徹様…)」

 彼女は篠宮君が出て行った扉の向こうを心配そうに見つめているだけだった。

「(…ああ。なるほど。そう言うことかね)」

 なんとなく理解した。

 篠宮君はともかく……彼女、エリーナ君の方は篠宮君に非常に入れ込んでいるようだ。

「(…篠宮君は、何か重大なことに気づいたのかもしれない。ここでエリーナ君に彼の後を追わせると面倒なことになる…か)」

 篠宮君は何かしようとしている。エリーナ君を危険にさらすような状況は、彼が望むものじゃないだろう。……ならば。

「…そんなに心配しなくても大丈夫じゃないかな」

「で、ですが…」

 涙目になってしまうエリーナ君。

 …ここまでか。…篠宮君、なかなかに罪作りな男だな、君は。

「僕は彼を信じている。……きっと戻ってくるさ」

 さっきの彼は、正直尋常じゃない表情をしていた。無茶をすることはないと信じたい。

 …だが、最後に我が身の振り方を決めるのは結局自分自身だ。

 僕たちにできることは…………ない。




~HERO side 徹~

 早く悟さんに電話を…!

 いやな予感がする。…こう……言葉にはしづらいが、間に合わなかったら後悔しそうな…そんな嫌な予感が…!

 セイバーズの部隊をフローレンス邸に招集してもらうんだ…!

 prrrrr………

「出てくれ…!」

 …ピッ…

 出たッ!

『はい、宮島です』

「悟さんですか!時間がありません、実はお願いがありまして…」

『…何だい?』

「…セイバーズの戦力を……俺に貸していただけませんかっ」

『……篠宮君』

「…はい」

『もう、向かってるよ』

「……えっ?」

 予想外の返答に身体が固まってしまった。

次回、32話。

次回の更新はちょっと遅れるかもしれません。

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