Episode29 ソンナコト…ナイヨー
29話です。
R15指定で恋愛ラブコメって結構きわどいところありません?
こう…どこまでせめていいのか…とか。
「幻刀・倶利伽羅…!」
やべえ…超中二病っぽい!!
「…まあ、汝は少し男にしては体格が小さい気もするが、まあ、大丈夫だろう。…もともと、倶利伽羅はほかの刀剣と比べて細身だしな。扱いには問題あるまいて」
そう言われて俺はアチャラナータが持っている刀剣を見る。
細身……と言われても良くわからない。ただ、気になるのはこの刀身が黒と白でセパレートになっているところだ。
「すごく独特のデザインですね…」
「むう…そうか?我はとても気に入っているのだがな」
そう言ってちゃっかりと幻刀を誇らし気に掲げるアチャラナータ。
「…っていうか、刀そのものじゃなかったんですね、あなた」
「…そうとも言えるし、違うともいえる。我とこいつは二つで一つだからな」
なんだこの女性、めんどくせぇ。
「我のことはどうとでも呼ぶがよい。アチャラと略しても良し、ナータと後ろだけ取っても良し、アチャラナータと普通に読んでも良し。どうとでも」
「うーん……じゃあ、アチャラの“ラ”とナータの“ナ”をとって“ラナ”と呼ぶことにするよ」
「ラナ…か。良い名だ。よかろう、その提案受け入れた。わが名はラナ。今から汝の剣となり、時には汝を護る守護神となろう」
そうして、俺は、新たな戦力であるラナとの出会いを果たしたのだった。
「タメ語でいいよね、ラナ」
「うむ。我はそんなことはいちいち気にせん。好きにせよ」
「じゃあ、普通にしゃべるよ」
と、俺たちが会話をしていると。
「「「「「「「………」」」」」」」
悟さん、中村さん、セレナードの住人5人が口をぽかんと開けて俺たちを見ていた。
「…というわけで、紹介します。アチャラナータこと、ラナです」
「我が契約者、徹殿から名を授かった。ラナという。よろしく頼むぞ、皆の衆」
現在俺は、ラナとともにセレナードのロビーにいた。そこには上の7人が集合しており、俺はみんなに新たな戦力の紹介をしていたのだが。
「いやいやいやいやいやいや。ちょっと待ちなさい、徹」
…?どうしたんだろう。
「い、一応確認するけど。そのラナさんは、幻刀・倶利伽羅の守護神で、セレナードの大浴場の露天風呂の先で眠ってたってこと?」
「ああ、それで合ってる。…まあ、本人曰くだけど」
「…む。失礼な。繰り返すつもりはないが、我が何年待ったと思っている。汝のような幻刀使いを待っていたのだぞ」
頬を膨らませるラナ。…うん、思ったんだけど、この人本当に冗談みたいな存在だよな。
なんだよ、守護神って。
「それはこっちが聞きたいわね」
納得のいかないような顔で文句を言う詩乃。
…もう突っ込まないぞ。心を読まれるのにはもう慣れたしね。………いや、それってヤバくね?
「ま、まあ…十分あり得る話ではあるんじゃないかな?セレンは今でこそこんな感じで開発都市みたいな感じの土地が増えてきているけど、それこそこの世界に転移するもっと前には、セレナード周辺は神聖な土地だったっていう文献が残っているからね」
マジか。じゃあもう確定だ。
「ほ、ホントに冗談みたいな話ね…」
苦笑いする詩乃。対して。
「す、すごいです…。ほえー…」
あかねちゃんはラナを物珍しそうな顔で見ている。
「我には触れられんぞ、娘よ。我に触れることが出来るのは幻刀の使い手である徹殿だけだ」
「あぅ…本当に…触れません」
暦ちゃんが一生懸命にラナの体に触れようとするが、触れない。
…ふーん。マジで俺しか触れないんだな。…っていうか、暦ちゃん、そんなにラナに触りたかったのか。
「なんかさ、ラナって…幽霊みたいだよな」
俺がそんなことを言うと、一人、ビクッとした人がいた。
「…?」
見ると、リル先輩がぶるぶると震えている。心なしか、俺とラナの方を見ないようにしている節がある。
「…先輩?」
「ヒッ…!な、何かな?どうしたのかな?」
何か様子がおかしい。
「どうしました?体調不良とか…」
「う、ううん!そうじゃない、そうじゃないの。だ、だ、だ、大丈夫だよ…!私のことは気にしないでー…」
この様子、体調不良というよりは挙動不審…って感じだな。
………まさか。
「先輩、もしかして幽霊とか苦手ですか?」
「…!そ、ソンナコト…ナイヨー」
……うん、これは絶対苦手だな。
「えーっと、ラナ。すまない、ありがとう。もういいぜ。紹介も終わったしな」
「む、そうか。ならば我は退散するとしよう」
ちらっとラナが先輩の方を見た気がした。
……気を遣わせたかな。
そんなことを考えているうちに、彼女はすうっと消えていき、代わりに幻刀だけを残していった。
俺はしっかりとその幻刀をキャッチし、手に握り締める。
「ちゃんと柄に収まってるなんて……」
見れば見るほど不思議だ。
そうして先輩の方を見ると、ラナが姿を消したのにもかかわらず、まだブルブルと震えていた。
「い…行った?行ったの?」
「ええ。みんなへの紹介も終わりましたし。本人的にはこの世界への現界には相当魔力を消費するらしくて」
「そ、そうなんだ…」
いまだにキョロキョロとあたりを見回すリル先輩。
「すごく大人っぽい女性でしたねー」
そんな先輩をしり目にあかねちゃんは自身の感想を口にした。
…もしかして、みんな…。
≪な、なあ…?リル先輩が幽霊苦手なのってみんな知ってる感じなの…?≫
俺は小声で詩乃に質問するが。
≪まあ、みんな知ってることね。…ちょっと前にね、ゴースト系の敵性体の集団を相手にしたときに、リル先輩が怖がっちゃって。それで前衛が機能しなくなったことがあったのよ。…まあ、その時は特攻担当のあかねや後衛からの狙撃手である暦ちゃんがいたから何とかなったんだけど、そこからは、リル先輩は幽霊がダメだってみんなの暗黙の了解になってるわ≫
……おぅふ。なんてこった。リル先輩の意外な弱点発見。
「…それにしても、意外なところで手に入ったね、武器」
ふと、悟さんがそんなことを言い出した。そう言えばそうか…。
「結果オーライ…?」
と、悟さんの言葉を受けて俺がそんなことを言うと。
「そうですわね。刀剣を持っている徹様は格好いいと私、思いますわ」
エリーナがそんなふうに返してきた。
…あれ。なんか微妙に会話がかみ合ってないな。
「そ、そうだよね!うん!徹君の武器が確保できてよかったよかった!」
まだ地味に動揺から回復してないな、先輩。…仕方ない。
「…コホン。先輩、実は少し気になっているお店がありまして…。ケーキ屋なんですが、男一人では敷居が高くて行けないんですよ。よろしければ、今度付き合っていただけませんか?」
俺は人並みに甘いものが好きだ。実際気になっている店もあるにはあるんだが、ケーキカフェなどという店は、男が一人で入るにはちょっと抵抗がある。
リル先輩の蘇生もかねて、話を振ってみたのだが。
「えっ…!ホント?どこどこ?どこの話?」
「あ、えーっと。Gatoっていうお店です」
「あー、あそこかぁ…。結構私おススメのところだね!いいよ!一緒に行こうよ!」
「あ、いいですか?それならお願いしますね」
…よし。気をそらすことに成功。女子は甘いものに目がない。甘いものが苦手な子もいるだろうけど、やってみるもんだな。…しかも、おいしいケーキも食べられるし。
「ね、ね!いつにする?」
おっと。かなり前向きに考えているみたいだな、先輩。何だったら先輩が日取りを全部決めてしまいそうだ。
「あー…先輩、できれば来週の土曜日か日曜日とかどうでしょう?そっちの方が、俺も都合がいいので」
その日ならば、少なくともサヴァトは終わっている。今週はちょっと…な。
「オッケー!フフフ、楽しみだなー!」
しっぽをフリフリしながら左右に揺れているリル先輩。
…なんか、話題をそらすだけの目的でやったんだけど、リル先輩が思ったより甘いものに目がなかったな。
これだけ喜んでくれるのなら、誘った甲斐があったというものだ。
「「じー……」」
…何だろう、合計二人分くらいの視線を感じる。
ちらっと目だけを動かすと、詩乃とエリーナがジト目で俺を見ていた。
…あれ。俺なんかしたかな?やたら二人からにらまれているような気がするんだが。
「(なるほど…ね。あれは完全に天然でやってるわね。狙っているのかとも思っていたけど……これは厄介ね。徹自身が自覚していないのがまた…)」
はぁ、と短いため息を吐く詩乃。そして。
「(やっぱり徹様って女の方の扱いに慣れている気がします…。もしかして、皆さんが知らないだけで昔付き合ったことのある女性がいるのでしょうか…?……いやいや!そんなことはありませんわ!以前、プリントシール機では、女の方に無理やり付き合わされたとおっしゃっていましたもの!…でも、あえて言っていないという可能性も…。うぅ……不安ですわ)」
さっきのジト目とは一転、どこかそわそわしながら不安そうに俺を見つめるエリーナ。
……な、なんだろう。これは本格的に心配になってきた。俺、知らないうちに二人に何か粗相をしたのだろうか。
「え、えっと。二人とも、どうかしたのか?…なんか、俺の方を見てるけど」
「ん?……いや、別に何でもないわよ。…ただ、先輩と出かけるなら、ちゃんとエスコートしなさいよ?」
と、詩乃が仕方なさそうに言う。…一方。
「せ、先輩とはケーキ屋に行くだけですよね?徹様」
「え…う、うん。そうだけど、それがどうかしたのか?」
「いえいえ!それならばいいのです。私はそのころはサヴァトの後片付けがありますから…き、気を付けて行ってらっしゃいまし…」
エリーナはそう言ってくれるのだが、どこか挙動不審なんだよな…。
「(…ま、いっか)…ああ、ありがとう。エリーナもサヴァトで頑張れ」
スピーチをすることはみんなは知らないだろうけど、サヴァトの主催者であることはみんなが知っていることだから、これくらいは言っても大丈夫だろう。
「うふふ!デートだね!徹君」
だがしかし、リル先輩のこの言葉で、詩乃の目つきが先ほどよりも二割増しで鋭くなり、エリーナがさらに不安そうな表情をするのだった。
…………いや、俺何も悪く無くね?
次回、30話。
いやー、とうとう30話ですね。
…というか、傍から見たら徹君って結構ヤバい経験してますよね。
私、一回でいいから刀剣とか扱ってみたいですわ。




