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Episode2 叔母さんに会いに行くぜ!/俺、今度はサンドバッグになります

第2話です。

いやー、タイトルフザケまくったなwww

「叔母さんに報告しに行くんでしょ?」

 セイバーズの本部を出て、俺たちは叔母さんのもとへ。

「ああ…」

 うん。それはいいんだけど…。

「……ついてくるの?」

「…?当たり前でしょ?こうなった原因の一端には私が絡んでるんだから」

 さも当然に言いますか。…でもなあ。

「…いいの?引き返すなら今の内だよ?」

「な、なによ。そんなに私に来てほしくないの?」

 …え?なんでそんなに不安そうにするのさ。いや、むしろ俺は君のために言ってるつもりなんだけどな。

「…うちの叔母さんはちょっと濃いよ?」

「…?濃い…?」

 うん。ここで説明してもわかってもらえないわ。…結局叔母さんに会うまでは俺の言いたいことは理解できないようだな。

「……ま、とりあえず行ってみるか……」

 多少ましになってるかもしれないしな。




「徹君!もしかして、そちらの子は彼女さんかしら!?」

 あ、ダメだ。これめっちゃダメな空気を感じる。実際に会ってみたけど、変わんないわ、こういうとこ。

「あらやだ!今日はお赤飯ね!」

 ああ……だめだ。もう何回ダメだって言ったかわからない。

 うちの叔母さん。名前は波柴悦子はしばえつこさんという。俺の母さんのお姉さんで、異種族の人と結婚して今はセレンに住んでいる。

 すごいいい人なんだけどなぁ…。

「あ、あの。私たち、そういう関係では…」

 詩乃、めっちゃ誤解を解こうとしてるな…。

「まあまあ!とにかくあがってくださいな!あまり大したものはないけど」

 等と言って、叔母さんは俺と詩乃を家の中に誘導する。

 あー…。悦子さんモード発動したな……。この人、いい人すぎるがゆえに、俺の関係者だとわかった途端に、めっちゃもてなすんだよな……。

「あ、お構いなく。私は彼について少しご家族の方に説明を、と思いまして」

「まあ!“彼”だなんて!」

 あー、どうしよう。こうなったら俺でも止めるの難しいんだよな。

「だ、だから!そういう関係ではないんです!…それに、謝罪しなければならないこともありますし……」

 そう言って、暗い顔をする詩乃。いや、だからそんなに過剰に気にしなくてもいいんだけどなあ。

 …ほら、叔母さんも表情が硬くなっちゃってるし。




「そうですか……」

 お互い自己紹介を済ませ、詩乃は俺について今日起こったことを一から説明を始めた。叔母さんは静かに聞いてたけど……。

「……ねえ、徹君?」

「は、はい!なんでしょう!」

 こ、この人怒るときは結構怖いからな…。

「住むところはあるの?」

「えっ…?」

 あれ。そんなに怒ってないようだな…。

「えっと、それに関しては問題ありません。セイバーズが責任を持って彼の生活をサポートさせていただきますから。どうしても気にされるようでしたら、こちらでも何か案はないか考えるのですが……」

 と、詩乃がそこまで言って。

「ああ、それなら私は大丈夫よ。徹君も納得しているようだしね」

 …うん、やっぱりさすが叔母さんだ。納得してくれるとは思っていたけど。

「それにしても、災難だったわね……」

「あ、ああ…。確かに死ぬかと思ったけど、今ちゃんと生きてるからもう何も問題はないさ。この体が五体満足に動かせるなら何とでもなる」

 たとえ、俺が人間をやめてもそれほど状況は変わらない。叔母さんが納得してくれるなら、俺はこの島でも精いっぱい生きてやるさ。

「…ふふふ。やっぱりあの人にそっくり」

 …?何だろう。叔母さんの笑みが意味深なものに感じるな…。

「えっと…?」

「気にしなくていいわよ?徹君。今は……ね」

 なんというか、これが大人の魅力というのだろうか。

「…さて。じゃあ、行ってくるよ、叔母さん」

 俺は報告も早々に、叔母さんの家を出て行こうとした。

「あ、待って。………宮島さん」

「あ、はい…?」

 詩乃が叔母さんに呼び止められた。…なんだ?

「徹君のこと、よろしくお願いします」

 そう言うと、叔母さんは頭を下げた。

「い、いえ!こちらこそ、よろしくお願いします!」

 詩乃もまた、焦って勢いよく頭を下げる。

 ………いや、結婚のあいさつじゃないんだからさ。




「いい人だったわね」

「だろ…?」

 最初から反対されるとは思ってなかったからな。

「……まあ、いろいろな誤解は受けたけど」

「だから言ったんだよ。“ついてくるのか?”って」

 うッ…と言葉に詰まる詩乃。

 まあ、俺も最初に叔母さんに会った時は衝撃を受けたけどな。中学の時、部活の女子の後輩と歩いているところを偶然見られたときはヤバかった。思いっきり彼女と勘違いされた。あの時は、ちょうど叔母さんが日本に遊びに来てた時だったからな。

「…じゃ、改めて。私はセイバーズの作戦本部の指揮をやっている者です。宮島詩乃ともうします」

 詩乃が恭しくお辞儀をする。

「これはどうもご丁寧に。俺は篠宮徹。今日ここに初めて来たこの島の新人です」

 俺もまたお辞儀をする。なんとなくおかしく思う。

「ふふ…。じゃあ、私は先輩ということかしら?」

 いたずらっ子のような目をする詩乃。…うん、かわいい。

「…ふっ…そうだな………ん?」

 あれ。なんだ?何か違和感が……。

「ちょっと待て。“指揮”だって…?」

 そこで俺は気づく。

「あ、じゃあ、あの時現場にいたのって…!」

「ごめんなさい。私、あの時学院にいたところを本部の要請で呼ばれてしまって。急いで現場に急行したんだけど、思いのほか学院から遠かったから、すぐにはたどり着けなかったのよ」

 だから、あの場にいてセイバーズの人たちと会話してたのか。

 いやはや、おかしいと思ったんだよ。なんでこんな美少女がこんな殺伐とした場所にいるんだろうって。

「まあ……過ぎたことは仕方がない。少しでも早く駆け付けてくれようとしてたその姿勢だけで十分だよ」

 言ってしまえば結果論ではあるが、俺は死んでないしな。

「あー…、それなんだけど…」

 …?どうしたんだ?詩乃のやつ、なんか申し訳なさそうな顔をしているが……。

「ちょっと付き合ってほしいところがあるのよ」

 …ヘッ?




「なんだ?ここ」

 俺が連れてこられたところは学校の体育館くらいの大きさのある部屋。まあ、ここまで来るのにセイバーズの本部を通り抜けてきたから、ここもセイバーズに関係のある施設なんだろうが……。

「ここは、訓練場よ。機動部隊がいつもここで訓練を行っているわ」

 あれ。ここ、訓練場だったのか。道理でいろんなものが置いてあると思ったら。

「…さっき、あなたは“まだ死んでない”って言ったわよね?」

「あ、ああ…。言ったな」

 ……いやな予感。

「実は、今日中にあなたの能力について確認したいことがあるの」

 …あー、これ、なんか雲行きがおかしくなってきたぞ?俺、これから何をされるんだろう。

「…でね?私たちも、既存データと被る能力だったら、どういうふうに訓練するかちゃんと考えられるんだけど、あなたの場合、例外中の例外だから…。そもそも能力の内容がわからないのよね…」

 そう言うと、彼女は片目をつむり、

「ごめん!まずは、あなたの能力を無理やり引き出す以外に能力の内容を確認する方法がないから、私の攻撃をあなたにぶつけて確認したいんだけど……ダメかしら?」

 うん。意味が分からん。俺、ただのサンドバッグじゃねえか。

「あ、一応意味はあるのよ?あなたの防衛本能を引き出せば、無意識に力を使ってくれると思うから、私の攻撃の的になってほしいんだけど。…あ、もちろん安全は保障するわよ!私の能力は使い方を間違えなければ(・・・・・・・)、死に至ることもないと思うから」

 ちょ!待たんかい!今、不穏な単語が聞こえたぞ!

「あなたのためだから!お願い…!」

 うっ…。そこまでお願いされると弱い。

「ああ……うん、わかった。詩乃を信じるよ」

 仕方がない。俺の能力がどんなものかは俺も知りたい。……よし!

「さあ…どっからでも来い!」

 俺は構える。

「ありがとう!じゃ、さっそくやってしまうわね!私の能力はサイコキネシス…要するに念力ね」

 そう言うと、詩乃はすぐ近くの跳び箱を触れることなく片手を上げるだけでひょいっと持ち上げて見せる。

「おお…!」

 …初めて見た。これが人外の力か。

「ふふふ…。いい感じで驚いてくれてるわね。これから行うのは、私が空気の圧縮弾を能力を使ってあなたにぶつけるの。あなたはよけるなり、防御するなり好きにしてくれていいわ。こちらで、あなたから生じるエネルギーの波形は計測しているから」

 なんとハイテクな。…でも、それで何がわかるというのだろう。

「その波形のパターンをほかの能力を持つ人たちの波形パターンを照合して、一致率の高いものを最も近い能力系統パターンとして採用するわ。これによって、測定する人の具体的な能力がどういったものかを調べているのよ」

 なるほど。つまり、詩乃の出す空気砲に、俺が危機を察知すれば、何かしらの対処をしようと俺の体が無意識的に力を使ってくれるわけだ。…で、それで生じるエネルギー波形を計測して、俺の能力のエネルギーパターンを記録するのが目的というわけだな?

「きっと能力を使えば、特定の決まったパターンが見られるはず。…さあ!早速やってみましょう!」

 そういうわけで、俺の能力検査が始まった……のだが。




「ぐほっ…!」

 ——5分後。

「ブベラッ…!!」

 ——10分後。

「ホゲッ…!」

 うん。ずっと殴られてる。……空気砲で。

 …おかしい。いくら何でもおかしい。こんなにも空気をぶち当てないとわからないものなのだろうか。心なしか、詩乃のやつも楽しそうにやってる気がするし…。

「グㇵッ……」

 や、やっと終わった……。し、死ぬ…。本当に死にかけた…。

「うーん……おかしいわねぇ…」

 一方、詩乃はというと、俺の様子を気にもかけずにエネルギー波形のデータとにらめっこしていて、難しい顔をしていた。い、意外と詩乃さん、ドSなのだろうか……。

「こんなはずは……」

 うん。ホントにこっちの心配しないっスね。むしろすがすがしいくらいに。

「えっと……詩乃さん?どうされました?」

「…えっ?あ、ああうん。ちょっとこれ見て」

 俺は詩乃がさっき見ていたタブレットみたいなものを見せられた。

「本当なら、これらの波形っていうのは大体同じ形を示すものなの。…当り前よね。だって、すべて同じ力を使っているのだから」

 詩乃は、サンプルの波形を俺に示す。10個くらいの波形サンプルが機械処理によって、重ね合わさる。見事、多少の誤差はあるが、すべてのサンプルはぴったりと重なった。

「…でも、あなたのはね……」

 そう言って、俺の波形を合わせるが……。

「…見事にガタガタだな」

 どの波形もみんな違う形を示している。見事にバラバラだ。

「…どゆこと?」

「わからないわ…。なんでこんな結果が出たのか……」

 詩乃は頭を押さえながらそう言う。

「……けど」

「…?」

「もしかしたら、オリジンに適応した亜人間は複数の力を使えるのかもしれないわね……」

 ……はい?

「本来なら、その人が使っている能力はすべて同じもの。だから、この検査では普通は(・・・)すべての波長がほぼ同じ形になる。…でも、徹。あなたの場合は違った」

「そ、そうだな…」

 …というか、いきなり呼び捨てか。まあ、俺も詩乃って呼ばせてもらってるしな。

「…ということは、あなたから発せられるエネルギーの種類は1種類だけではない、という可能性が生まれてこないかしら?」

「……ほう」

 なるほど。エネルギー派の形が違うのは、それらすべてが別々の力だからだということか。

「まあでも。それが本当なら、前代未聞の事態ね」

「そうなのか…?」

「ええ。実は、私たち異世界人の子孫っていうのは代々血を受け継いでいくにしたがって、遺伝子のエラーによって突然変異を繰り返している。…だから、吸血鬼の血を引いている私でも、お父さんの能力とは全く違う能力を持っているの。でもそれは、あくまでも“元の能力”を定義していた遺伝子の一部分が変異して別のものに成り代わっただけだから、所持する能力の個数に変化は発生しないわ。したがって、普通は1個」

 おう…。そうなのか。なんかよくわからなかったが、要するに「能力自体の内容は変化しても、その能力の個数は変わらない」ということか。

「……え、でも俺って…」

「そうなのよ。もし、私の仮説が正しければ、あなたは初の複数能力所持者になるわ」

 なんてこった。大丈夫なのか?俺。

「…それが露見して何かしらの危険性があるとかは……」

「…あるかもね。申し訳ないわ、それは私にも判断がつかない。…ただ、あなたが狙われる理由があるとしたら、それはモルモット目的か、戦争の道具としてでしょうね」

 険しい顔で言う詩乃。

 ヤバい。本気で不安になる。

「でも大丈夫。私がそうならないように仕向ける。…ううん、『私たち』があなたを守るわ」

 何この子、男前!!

「ちょっ…!何顔を赤くしてんのよ!」

「す、すまん。何気にイケメン台詞でくらっときたもんで」

 乙女ゲーをする女子の気持ちが若干理解できたぜ。

 …………いや、俺はノーマルだからな!



お疲れさまでした。

次回、第3話です。

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