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Kaleidscope-カレイドスコープ- ~俺、亜人間になります~  作者: AKIRA
-壱章- 学院編:エリーナ=フローレンス
29/80

Episode28 ……いや、しゃべるんかい!!

28話です。

明日は母の日ですね。(やばいやばいやばい!何か用意しなければ…!)

~HERO side 徹~

「……はじめ!!」

「…っ!」

 次々と生み出される敵性体。動きを読みながら、懐へもぐりこみ、ばっさばっさと切り倒していく。

「……」

 2階席では、詩乃と悟さんが俺の戦闘を見守っていた。

「…(何だろう…この感じ)」

 そんな中、俺は不思議な感覚に見舞われていた。

 今までだったら、敵の動きにひるんで何もできないでいたのだが、だんだん敵の動きがゆっくりと見える瞬間が増えてきている。

 あの銀行強盗に巻き込まれていた当初とは、違いは明らかだった。

 …そして。

「ハアッ!」

 ブンッ!と振り下ろした一撃が、最後の敵性体の脳天をカチ割る。

 ブーッ!という終了を告げるサイレンの後、悟さんが詩乃を連れて、1階へとへと降りてきた。

「お疲れ様、篠宮君」

「お疲れ、徹」

 二人とも、俺を見てねぎらいの言葉をかけてくれる。

「はい、ありがとうございます。…詩乃も、わざわざ見に来てくれたのか」

 そう言うと、少しだけ間があって。

「……え、ええ。ちゃんと訓練やってるかなって思ったの。思ったよりも動けていて感心しているわ」

「ふふ…(全く…。素直じゃないなぁ…)」

 詩乃の答えに悟さんが苦笑いをする。

 …うん、さすがに今のはわかるぞ。こいつ、本当にツンデレ属性あるよな。…まあ、そこが可愛いからいいんだけど。

「…どうでしょう?やっぱり記録されている波長は複数ある感じですかね?」

「うん。そうみたいだ。やはり、新しい力を使うためには今以上の危険な状況に追い込まなければいけないようだね…」

 そう言って、うーん、と首をかしげる悟さん。

「そういう状況を意図的に作ると言っても、安全が保障されないと…」

 詩乃が俺を見ながらそんなことを言う。

「まあ…ね。わかっているよ、詩乃。…ただ、それだけの規模で、なおかつ安全を保障できるだけのシミュレーターとなると、今以上の規模を持ってこないと……なあ」

 悟さんが苦々しくそう口にした。

「……そう」

 詩乃があごに手を当てて黙り込んでしまう。

 …うん。この空気、良くないな。

「…まあ、考えすぎても良くないですよ。俺の力はゆっくり鍛えていきたいんですよ。…愚者、魔術師…それに、戦車の力を俺はまだそんなに使っていません。今はまだ……」

 そう。俺はまだオリジンの経験値が足りない。やみくもに新しい力を追い求めることだけが正解だとは限らない。

「……そうだね。篠宮君の言うとおりだ。焦っても仕方がない。ゆっくり行こう」

 そう言って、この場はお開きになった。




「……ふう」

 今朝はなかなか大変だった。だいぶ動けるようになってきたけど、あれでも下級の敵なんだよな…。

「サヴァトまであと一週間か…」

 そんなところまで来ていた。

 現在時刻は夜8時。俺は風呂場へと来ていた。湯船につかり、壁に背を預ける。

「あ゛ー……ぎも゛ぢー…」

 あまりにつかれていたので、肩まで湯につかると、疲れが体から湯へと流れているような感じを受けた。思わず漏れ出る声は雑音だらけになる。

「…………」

 そうして、俺は今までのことを振り返っていた。セレンに来る前とは大違いだった。前まではこんなに充実した日々を送っていなかった。

 学校行って、勉強して、テキトーに友達とつるんで遊んで……そのまま帰ってゲームして…復習して……そんな平凡な毎日。それも嫌いじゃなかったが、ここまでの充実感は得られていなかった。

「…そっか」

 セレンで確かにひどい目には遭ったけど。…長い目で見ればあの銀行での事件は、ある種のきっかけに過ぎなかったのかも。

「なーんてな…」

 俺がオリジンに適応できるかどうかなんて、あの時はわからなかったんだ。こんなことを考えたところで無駄だろう。

「(それよりも…エリーナだよな)」

 彼女はサヴァトの3日後に結婚する。

 あの風呂場での事件以来、あまり話をすることはないけど……。

「(なんか、見られているような感じはするんだよな…)」

 よく目線が合うとか、気が付くとエリーナがこっちを見ている…とか。

「考えてもしょうがないよな…」

 ガイアさんいわく、彼女は心を許せる友達が少ないと来た。きっと俺はそのうちの一人になれた、ということだろう。…それならば、彼女の支えになれるよう訓練は続けなければならない。

「……ん?」

 ふと、俺は窓の外の風景を見る。

 セレナードの浴場は、室内と室外…つまり露天風呂があるのだが、その露天風呂の先に青白い光が漏れているのが見えた。

「あんなところに光なんて……あったっけ?」

 思わず首をかしげる。

 あの先はせいぜい50~100メートルくらいの道しかなくて、その先はどん詰まりだった気がするけど。

「…まあ、俺も詩乃から聞いただけなんだけどな」

 しかし、気になるモノは気になる。

 そろそろ体も温まってきた…というか、むしろ暑いくらいだし。

「…今日、そんなに気温低くないよな?」

 だとすれば、行ってみる価値はあるかもしれない。

「…よし」

 俺は腰にタオルを巻いて立ち上がり、露天風呂へと繰り出した。光の方を見ると、目算ではあるが道の奥から光が来ている。

 俺はその光に向かって歩いて行った。




「……なんじゃこりゃ」

 それは、俺の予想をはるかに上回っていた。まずびっくりしたのが、50メートルほど進んだところで、急に鳥居が出始めたこと。そして、そこからやたら道が続いたのだ。

 …というか、体感ではあと50メートルでどん詰まりだったはずなのに、やたら長かった。

 おまけに寒くもなければ暑くもない。俺は今、ほとんど裸の状態だというのに、全く寒気を感じなかった。

 そして、その終着点にあったのが。

「社と……剣?」

 刀剣……と言えばいいのだろうか。長方形の石の中に納められており、その後ろに大きな社が建っている。

「なんでこんなところに…」

 神社……にしては唐突すぎる。セレナードの大浴場の先に神社なんて聞いてない。

「……」

 ただ、じっとその刀剣を見ていると、不思議と惹きつけられる何かがある。

 そうして俺は、気が付けばゆっくりと腕を挙げて、その刀剣へと手を伸ばしていた。

「(…透けてる)」

 半透明の刀剣。触れられるのかどうかもわからないそれに、俺はそっと触れてみた。

 ……すると。

「…っ!」

 触れた。ゆっくりと持ち上げる。

 初めて持つはずなのに、どうしてか自分の手にフィットする。…そのうえ。

「ヤケに軽いな…」

 そう思った瞬間だった。


 ――なるほど。なんじが我の適合者であったか。


「…!?」

 俺はどこからともなく聞こえた声に、警戒度を高める。

 しかし、その声に敵意はなく。

『…落ち着くがよい。我に触れられるのは一部の人間だけだ。誇っても良いのだぞ?』

 そんな声が聞こえた瞬間、さっきまで持っていた刀剣がまばゆく輝き、やがて人の像を結ぶ。

「……ふう。ようやく目覚められたわ。いつまで待たせるのかと思ったわ」

 ……いや、しゃべるんかい!!

 …つーか、いきなり刀がしゃべるな!どこのファンタジーだよ!…あ、いや、まあ、セレン自体がもはやファンタジーなんだが…。

「あ、あのー……どちら様でしょうか?」

 おずおずと俺は目の前の“女性”に問う。…そう、俺が持っていた刀は女の人になったのである。

 ……いや、もう意味わからん。

「む…?我…か。我はとあるホトケさまの化身だそうだぞ…?何だったかな…?幻霊……というんだったか。存在するかどうかわからんものを魔力によって一つの形にしたものだ。……名を、アチャラナータ。…まあ、この名も我をつくった者が名付けたものだがな」

 そう言って、俺は固まってしまう。

「アチャラナータって……まさか、不動明王!?」

 アチャラナータは梵名だ。日本の名では、不動明王。大日如来の化身ともいわれる仏さまだ。

「うむ。…ああ、待て。勘違いするな。我はあくまで幻霊にすぎん。その…ふどうみょうおう…だったか?本人ではないから気をつけよ」

 …まあ、そうだろうな。しかし、びっくりした。急に不動明王が出てくるなんてびっくりだしな。

 …しかも、何を勘違いしたのか、不動明王だったら神社じゃなくて寺だろうに。

「つまり、あなたは不動明王をモデルとした幻霊…ということでよろしいですか?」

「うむ。それで間違いないだろう。…まあ、汝の言う通り、寺ではなく神社となってしまっているのが些か、みすまっち(・・・・・)なのかもしれぬが」

「う、うん…」

 …というかまさか。

「え、じゃあ……この刀剣って…!」

 俺は、いつの間にか不動明王モドキが持っている刀剣を指した。

「よくぞ聞いた!これはその不動明王が持っているとされる架空の剣、それを再現したもの……名付けて、幻刀・倶利伽羅くりからである!」

 ……うそん。

次回、29話。

いや、もうなんかとうとう不動明王まで出てしまいました。

(なんかめっちゃ強そうな刀を主人公に持たせたくてつい…)

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