第3話「今は無き」
「これより影の王・アーサーから黒乃への<試練>を開始する。
ルールは、
・アーサーからは攻撃をしかけてはいけない。
・黒乃の勝利条件は、<異界時空聖剣>を用いて、アーサーに一撃与えること。
以上である!さあ、かかってくるがよい、黒乃!」
ふはははは!と可愛らしい声で高らかに笑う少女。
とりあえず、今の状況を整理するとこうだ。
アーサーは、時空を歪めるほどの<魔術結界>を仕掛ける力を持っている。
僕は、今まで見たこともない剣で彼女に一撃を与えなければならない。
これがどんなに難しいことか。いや、不可能に近い。まさにミッション・インポッシブルだ。
幸いなことに、彼女からは攻撃を仕掛けることはできないというルールになっている。さあ、いかにして超えるものだろうか、<試練>とやらを。
………とりあえず、斬りつけてみるか。
今の僕に浮かぶ考えは、それしかない。というか、普通そうなるよね?だっけ剣って斬る為のものだし。
「はぁっ!!」
全力を剣に込めて、アーサーに斬りかかる。
………恐ろしく軽い。一体何の材質で出来てるんだ、この剣は。
「………ほう。」
アーサーの体に触れることすらなく、アーサーは右手の一振りで剣を止める。
「貴殿の頭は、その程度であるか?斬りかかるなど、誰でも思いつく。先程言ったであろう。その剣は、時空を司る剣だと。」
確かにそんなことを言っていたような。しかし、一体何をすれば_____
「剣を持ち、こう唱えよ。『我が剣の名の下に…汝の時を留めよ!』とな。」
アーサーもかなり親切だな…
「我が剣の名の下に…な、汝の時を留めよっ!」
言われるがままに唱えてみた…が…?
音がない。よく見ると、アーサーも動かない。
まさか…これって…
_____時が止まってる!?
…………なるほど、じゃあこの間に斬りつければ…!
「せいやぁっ!」
自身満々で剣を振るう!……がしかし、またもや手応えはない。
「やるのう、黒乃よ。その調子じゃ、ふふ。」
「なんでだ…!?今、時間が止まっていたんじゃ、」
「確かに、時は止まっておった。だが、余の方が一枚上だったということじゃの!」
止められた剣を謎の波動に押し返され、吹き飛ばされる。
「っ…!じゃあ、どうしろっていうんだ!?」
「まあそう慌てるでない。これは<ちゅーとりある>みたいなものじゃ。最後まで聞けい。」
「あっ…はい。」
おい今超メタ発言したぞ、この王様。大丈夫か?
「その剣には、時を留める以外にもう一つ、時を操る機能がある。さて、何か分かるかの?」
無茶振りを食らった僕は、数秒考え…
「さっきのが『時を留める』なら…今度は、『時を進める』とか?」
「惜しいの。正確に言えば『自らの時を進め、未来を視る』、いわば<千里眼>じゃ。寧ろこっちがメインじゃの。」
えっなにそれ。強そう。
「再び剣を掲げ、こう唱えよ。『我が剣の名の下に…未来を視させたまえ!』とな。」
よし、やってみよう。
「わがっっ」
今のは練習練習、カンデナイヨ。
「我が剣の名の下に…未来を視させたまえ!」
すると視界が塗り替えられて、違う景色が見えてくる。どうやらこれは、斬りかかり、吹き飛ばされる未来の自分のようだ。
しかし、三人称視点で見ているので違ったものが見える。例えば、そう…吹き飛ばした後の、アーサーの隙とか。
わかったぞ。そのタイミングを突けばいい。
再び視界が戻る。
「どうじゃ?なかなか面白いものであろう。さあ、再開じゃ!」
よし。まずは斬りかかるところから…
「はあぁっ!」
視たとおり、軽くあしらわれる。
「なんじゃ?未来を視た結果がそれか?…正直失ぼ…」
「今だっ!!!」
思わぬタイミングでの襲撃に、思わず左腕で受け止めるアーサー。
「奇襲…じゃと?」
「どうかな?確かに体に一撃当てたよね?」
「………ふふ。そうじゃな。余の負けじゃ。貴殿の<千里眼も中々面白い。」
「ん?今、貴殿の<千里眼>って…?」
「その通り。先程は騙したが、<異界時空聖剣>には、『時を留める』能力しかない。その<千里眼>は正真正銘の貴殿のものじゃ。聖剣を手にしたことで、真に開花したようじゃな。」
………そんなすごい能力を持っていたのか、僕は。
「これより、<試練>を終了する。もうよいぞ!我が<幻影神殿!」
ふうっ…と風が流れるように、景色が戻っていく。いつのまにか、隣には輝夜ちゃんがいた。否、輝夜ちゃんの隣に、僕が戻ってきたのだ。
「その剣刻印……!試練を成し遂げられたのですね、黒乃さん!!」
剣刻印。初めて聞くワードだ。言われてみれば、手に刻印が刻まれている。
「ああ、その剣刻印は余が刻んだ。黒乃よ、その剣刻印を使えば、自由に異界時空聖剣が出せるからな。うまく活用するとよい。」
なんだそれ。すごい仕組みだな。
「さてはて…貴殿の<千里眼>だが…それは、今は無き魔術だ。魔王襲来の際に、失われてしまったものでな。どうして貴殿が有しておるのかは謎だが、大切に…するとよいぞ。」
「今は無き魔術…うん。大切にするよ。」
「さて、輝夜よ。貴殿、魔王を倒そうとしているな?」
「な…!………はい。そうです。黒乃さんを召喚したのも、その為です。」
「ふむ。やはりな…余から、一つ忠告をしておこう。奴は…魔王は……人が倒せるモノではない。言っておくが、余より数百倍は強いぞ。先程相手した黒乃なら分かるであろう。」
な…!?本気でないアーサーに、やっとこさ一撃を与えられたのに、魔王はその数百倍…!?うーん、控えめに言って無理ゲー。
「ご忠告感謝します。ですが、それも承知の上でございます。」
輝夜ちゃん、承知の上かよ。正気かなこの美少女。
「ご安心下さい、黒乃さん。私は貴方に、最強くなっていただくつもりですので!」
字が怖いよ、最強って。
スゥっと目を細めたアーサー。
「そうか。いいだろう、悪くない。聖剣の加護があらんことを。上手くやるのだぞ、黒乃。貴殿が魔王を打ち倒し、凱旋を果たすときを待っておるぞ。」
ええええええええええええ。正気かな、2人とも!?
もとから僕に拒否権はないんですけどね。あーあチクショウ。
「そうだな…次は<遺跡>に向かうのが良いだろう。ちょうど<北の遺跡>の周辺都市が危険にさらされていると聞いた。黒乃よ、ちょっと救ってくるがよい。」
え?なんか都市を救う羽目になってるし!?もうやってやりますよ!ええ!
「分かったよぅ…やりますよ、ハイ。」
渋々返事を返す。
「それでは、次の目的地は<北の遺跡>ですね!そうと決まれば、レッツゴー!♪」
この人、これで美少女だから玉にキズなんだよなぁ。
またもや輝夜ちゃんに引きずられ、目的地へ向かうのだった…
「…………余は守護者なりて。ブリテンを守る、守護者なりて。聖剣の名の下に、星の骸を、護りたまへ____!」
複雑な魔法陣が、光を放つ。
「………………聖剣の加護があらんことを。黒乃。」
どうもみなさん、あんこです。
昨日今日で毎日ペースで投稿してますが、これからはそうもいかないので、日は空いてしまうと思います…申し訳ないです。
それはそうと、今話はすっごい楽しいですよね!
今回もふんだんにルビを振ったりしてるのですが、もう楽しくて楽しくて(笑)
さて、この聖都で最強のアーサーですが…みなさん、ロリということを忘れてないですヨネ?
最強のロリとか最高ですよね!(歓喜)つよいおんなのこはいいのだ!
とまあそんなアーサーですが、今回はかなり意味深なシーンで終わります…はてさて黒乃(仮)の旅はどうなることやら…
それでは、次回のあとがきでお会いしましょう!
P.S.黒乃って名前、けっこう女の子っぽいよね。
あんこ