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過去と夢

「この王都に来る前、私とステンカは商人をしていたんだ。物資を街から街に運び、それはもう多くの街を渡り歩いていた。そんなとき、トジに出会ったんだ。トジは、周りに何もない草原で一人倒れていた。歳も1、2歳くらいでかなり衰弱していた。見つけた時は驚いたが、とにかく私とステンカは急いで看病をした。その甲斐あってなんとか一命をとりとめたんだが、トジ自身は自分がどこから来たのか分からないようだった。近くの村や集落でトジの親を探したんだが、結局見つからず、これも何かの導きだと思い、二人で育てることにしたんだ。その後、トジを育てるため危険な商人はやめて、王都でうどん屋を始めることになったんだ。」


リコイは話終わると、ふっと一息をついた。

「急に変な話をして悪かったな。ドラゴにはトジについてちゃんと知っておいて欲しかったんだ。」

「トジはそのことを知ってるのか?」

「知っているよ。私たちと出会った頃のことは覚えていないようだがね。私たちも伝えるかどうか迷っていたんだが、いつまでたっても能力が使えるようにならないトジが聞いてきたんだ。『僕はお父さんとお母さんから産まれたんじゃないの?』って。伝えるほかなかったし、おそらくトジも心のどこかで自分が私たちの子供でないことに気づいていたのだろう。」

「じゃあ、トジは人族なのか。」

「おそらくそうだろう。あの歳まで能力が使えないことは普通無いからな。」

「なるほど。」

守護者(ガーディアン)になるなんて言い出して、能力のない人族でどこまでやれるのか分からないが、もしドラゴが守護者に合格して、トジが不合格だったとしても、変わらず仲良くしてくれるか?」

「もちろんだ!」

「そうか、ありがとう。」

リコイは、父親らしい優しい笑顔で微笑んだ。

「さあ、そろそろ食事ができるぞ。ドラゴの分もある。たくさん食べなさい。」


「ただいま、配達終わったよ。」

トジが配達から帰ってきた。

「お、トジお疲れ様。お前の分のご飯もあるから、着替えてきなさい。」

「はーい。そうだ、ドラゴ、ご飯食べ終わったら一緒に街に行かない?案内するよ!」

「そうね、それがいいわ。お店のことはいいから、行ってらっしゃい。」

「じゃあ、すぐご飯食べるから待ってて。」

「おう、よろしくな。」


食事を終えた二人は、早速街に向けお店を出発した。

「ドラゴの故郷ってどこなの?」

「俺は王都から遥か東にある竜の村から来たんだ。」

「竜の村?じゃあドラゴは竜人族なんだ!すごいなー。いいなー。」

その言葉はどこか悲しげだったように感じた。

「さっき、おじさんとおばさんに、トジの昔のこと聞いたよ。色々あったんだな。」

「そっか、聞いたんだ。じゃあ僕が人族なのも聞いたよね…。人族で守護者目指してるなんて笑っちゃうよね。」

トジは精一杯作った顔で笑っていた。

「そんなことねーよ!」

ドラゴは否定し、言葉を続けた。

「俺には夢があるんだ。」

「夢?」

「ああ、この世界の全ての種族が平和で仲良く笑顔で暮らせる世界にする。それが俺の夢なんだ。魔獣や悪い奴の恐怖に怯えることもない、能力を持っていない人族がバカにされることもない、種族間での争いやいざこざもない、そんな平和で明るい世界にしたい。具体的にどうしたらいいのかまだ分かんねぇけど、とりあえず守護者になって、夢に近付きたいんだ!」

「すごい!そんな世界に僕もなってほしい!」

「だから、トジは俺の理想なんだ。」

「理想?」

「異種族の両親と幸せに暮らしてて、人族であることにもくじけず、守護者になりたいって夢を掲げている。世界がみんなトジやおじさんおばさんみたいになればいいなと思うんだ。」

「ドラゴ…」

「だから人族だからなんて言うな。堂々と夢に向かって頑張ろうぜ。」

「ありがとうドラゴ!」

「そういえば、トジはなんで守護者になりたいんだ?」

「僕は、お父さんとお母さんに恩返しがしたいんだ。捨てられてた僕の命を救ってくれて、ここまで育ててくれた。商人の仕事も辞めて、いろんな種族がいて生活しやすいからって僕のために王都に移り住んでくれて…本当に感謝してるんだ。だから立派な一人前の守護者になって、お金も稼いで恩返しをする。それが僕の夢なんだ。」

トジの目は輝いていた。

「いい夢だな。今度の試験、絶対受かって一緒に守護者になろうぜ。」

「うん!」

二人はお互いの夢を語り、絆を深め合ったのであった。


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