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私の異世界装備は少し可笑しい気がする  作者: 夏目こんぺいとう
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目覚めからハードモード

ピチャン....ピチャン....


体を這うような寒さで目が覚めると、固い地面に自分がつっぷしている事がやっとの事で把握出来た。


ていうか一回私砕けなかった...??ガラスが砕けたみたいな砕け方したよね??何の神か知らないけれどあのへカルト様とやら...覚えていろよ....


なんてぐだぐだと愚痴りながら両腕で体を起こそうとすると、何故か片腕が持ち上がらない。というか片腕の感覚が伝わって来ない。...え、なんでさ


そう思いながらぐい、と力の入らないーー.....左腕に目線を落とす、落とした



「.....なっっっなんじゃこりゃーー!!!!??」


人生で一番声を張ったような気すらした、いや私の第2の人生が始まっているなら始まって自己ベストを更新した様な大声が出た、そりゃあそうだ、いつもの平凡な左腕が、ない


そこにあるのは、巨大な腕。気品のあるジャケットを羽織りフリルの様な袖から伸びる手袋をした手。ただその手は人間一人の頭を簡単に握り潰せる程には大きいし、それを支える腕は人の胴ほど太い。それが私の腕から伸びている、はずだがそれは長手甲のように私の腕を付け根で覆っており、反対の右腕の下でジャケットの紐がリボン結びで止めれられている。ぱっと見でかい義手をつけているようなものだ。

いやいやいや、なんでこんな人外な装備になってるの?私の腕つまり片方ないって事?神様はとんでもなくハードモードを課してくるらしい


片腕に困惑しながらも、なんとか上体を起こした時に、今度は足に違和感を覚えた。今度は右足がある感触がしない

まさか、と油の切れたような動作で自分の足を確認する。

足の代わりに見えたのはまず、レースだ。レースといってもただペラペラな訳ではなく、光沢を放ちながら私の服の裾からちらちらと見えている。そんな服もまさかの入院着ではあるが


「腕もないし足もない....な〜にが身体あげる〜さ欠損だらけですよ...ああ...ほんとだ胸も....なんかもう感触もない...」


涙目で自分の上半身をペタペタとまさぐっていると、やっと自分がどこにいるかというのが目に入ってきた。

どうやら今は夜らしく、とっぷりと黒く染まった空に青白い月が顔を出していた。星屑を散りばめた空は都会の大学に通っていた私には新鮮なもので、危機的状況でもつい魅入ってしまっていた

空に私が見とれていると、カシャン、といった金属音が足元から聞こえた。顔を下に下げると私の足ー...足か...?ー....が二本の体躯をするりするりと動かし、片方を私の顔に向けて伸ばして来た。


「えっちょまっ...!!!!」


死にたくないーー...!!とぎゅっと目を瞑ると、数秒してぺたり、とした感触が頰に伝わった。

...ん?と恐る恐る目を開くと、私の頬を確かめるように優しい力加減で撫でてくれていた。まるで怪我がないかを案じてくれているような手つきに、ぱちくりと目を瞬かせる。


「えっと...大丈夫だよ、痛いところはないしちょっと...じゃないけどびっくりしただけだから」


ありがとう、と敵意のないそれにそっと触れなで付けると右足のそれは安心したように私の髪を梳いてくれた。足についてるそれは危険なものではないんだ、とホッと肩の力を抜いていると今まで風の凪ぐ音しかしなかったその場に怒号が聞こえて来た


「馬鹿者!今声が聞こえたろう!儀式を見られていたらどうするんだ...!我々がゲルマット様に仕置きを受ける羽目になるんだぞ...!!誰でも構わん、今すぐここに首の一つを持ってこい!」


鉄と石のかち合う音と会話の内容に本能的に背中がぞくりと震え上がった。大声を挙げたのは間違いなく先ほどの私だろう。儀式とやらの内容はまったく知りもしないが内容からして兎に角見つけたであろう証拠にだれかれ構わず首を求めているという事だ


「(に...逃げないとダメだこれ...!でもどうやって...ていうか動けないし...!)」


ずり、と後ずさろうとする私に背中にかつ、と感触を感じ悲鳴を上げそうな口をぐっと噛み締め堪える。もうさっきの人達が...?と思ったが、それにしてはいつまでも何も反応が返って来ない。不思議に思い振り返ると、そこにはまさに今自分が求めていたものが落ちていた。


「ーー...っ!!おい、そこに誰かいるのか!!!」


「!ごめんなさい..!誰かのかわからないけれど借ります...!」


跳ねるようにしてそれー...車イスにしがみつくと先ほどまでぴくりとも動かなかった左腕が私を掬い上げる様に体重を支えてくれた。どうしてここに車椅子が.....やあの人達は何者ーー...といった疑問は止まないが何も分からないからこそ命の危険を感じるここにはいたくない、腕と足の補助もあってやっと乗り込んだ大型の車椅子をどう押そうか、と混乱する頭で考えていると、ガタガタ....と自分が乗っている下から聞こえ始めた


「えっちょっとま...!!!?」


がしゃん!と一際大きな音を立てた車イスはそのまま石の階段を滑るように滑空していった。当然全身が震える程怖かった





ーーーーーーーーー

ジェルミットの国の一つ、コルチェスターの街では数百年に一度あるかないかという規模の祭が催されていた。国を挙げての祭りに幼い一人の子どもは尋ねた


「おかあさーん!きょうはどうしてこんなにおおきなおまつりしてるのー?」


「ふふ、それはね...なんとあの勇者様...3騎士の勇者様が天の声に答えてくれたのさ!」


その祭りの中心には、高校の制服に身を包んだ黒髪の少女と少年、そして大学生程のおっとりとした女性が多くの人々の脚光を浴びて顔を輝かせていた


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