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君のことが好きなんだ。  作者: 待宵月
52/81

52.分かってる?

千鶴への恋心を隠し続けていた真一だったが、もう一人の幼馴染千里の帰国で………!

「こんばんは」

「真一! 入って! 入って!」


 いつものように夜七時に姿を現した真一を、千鶴は満面の笑みを浮かべて迎い入れる。


「………」


 一瞬動きを止めた真一だったが、すぐに『おじゃまします』と、これもまたいつも通り律儀に挨拶をして入ってきた。千鶴は居間へ向いながら、まるで母親に纏わりつく幼い子供のように真一に話しかる。


「千里の話をしたらね。お母さんが千里も夕飯にお誘いしなさい、って! だから明日、誘ってみるよ!」

「………………」


 無言のまま真一が首を巡らし、視線を向けてきた。


「何?」


 いつもと違う真一の様子に違和感を感じた千鶴は首を傾げながら尋ねる。真一にじっと見つめながら、千鶴は形の良い唇が動くのを見守った。


「……嬉しそうだね」

「? 当たり前じゃない。五年ぶりに幼馴染が揃うんだよ!」

「……理由はそれだけ?」


 どこか探るような眼差しに、千鶴の顔から笑みが消える。


「ねぇ、もしかして真一は嬉しくないの?」


 訊く声には困惑した思いが混じる。ふいと真一が視線を逸らした。


「あいつは、うざい」


 あまりに短い返答に、千鶴は目を点にする。

 だが、すぐに声をあげて笑う。


「もうっ! 何照れてんのよ!」

「………………………」


 ほっそりとしていても意外と広い背中をバシッと叩けば、美しく整った顔を僅かに歪めながら真一が無言の抗議をしてくる。

 だが、千鶴はそんな幼馴染をその場に置き去りにして、さっさと居間へ入って行く。その後ろ姿を見つめ深く溜息を吐く真一のことなどもちろん知るよしもなかった。

 その後も、いつもよりテンションが高いままの千鶴と、いつもより静かな真一が食事を終えた時、居間で電話が鳴った。


「あら、誰かしら? もしもし? まあ、新山さん? こんばんは」


 母の声がして、相手がご近所に住む新山さんだと分かる。


「千鶴」


 食べ終わった皿を流しへ運んでいた千鶴に、居間から母が声を掛けてきた。


「なあに?」

「新山さんのおじいちゃんが釣りに行ってたくさん魚を持って帰って来たんですって。それで、何匹でもいいから貰って欲しいって、ちょっと行って来るわね」


 エプロンを脱ぎながら短い説明を残し、母はあっというまに新山さん宅へ行ってしまった。


「あらあら、行っちゃった」


 よそ見をしている千鶴の隣に、いつの間にかキッチンに入って来ていた真一が立つ。


「おれが洗うよ。キノは食器を拭いてくれる?」

「うん。ありがとう」


 片付けはあっという間に終わり、いつもより時間は早かったが、すぐに勉強にとりかかることにした。部屋へ問題集を取りに行った千鶴の目に、本の隙間から覗く懐かしいアルバムが映る。手が無意識に伸びていた。


「真一! ちょっと来て!」


 階下へ大声で呼べば、真一が慌てて階段を駆け上がって来た。

 

「………キノ?」


 背後から声を掛けられ振り向けば、真一が開いた扉の外でじっとこちらを見て立っていた。その声はどこか戸惑っているように聞こえる。


「何やってるの?」

「聞きたいのは、おれの方なんだけど?」

「懐かしい写真が出て来たんだよ! 真一も入って来て!」

「…………親がいない時に、男を部屋に入れるもんじゃない」

「え? 男? もう、何変なこと言ってるのよ! ほら、早く入って来てってば!」


 廊下から一歩たりとも入って来ようとしない真一の姿に焦れた千鶴が強引にその腕を掴んだ瞬間、千鶴の体がクルリと回転し、トンと背に軽い衝撃を受ける。

 いつの間にか千鶴は廊下にいて、壁に背を付けて立っていた。驚きのあまり目を見開けば、顔の横に、ドンと音をたてて真一が手を付く。


「………ねえ、おれも男なんだけど? ちゃんと、分かってる?」


 そう呟く真一の声はどこか苦しそうで、表情は感情を無理に押さえつけているように見えた。

 だが、一体何が自分の身に起きているのか理解できない千鶴は、ただ茫然となるしかなかった。そんな千鶴に向かって、真一は整った顔をゆっくりと近づけくる。千鶴は思わず目を閉じた。


ご無沙汰しておりました。今更ですが、あけましておめでとうございます。皆様にとって、良い一年となりますように! さて、千鶴と真一には激動の年になりそうなスタートとなりました。まず、引き続き読んでくださった方、待っていてくださって、とてもうれしいです。ありがとうございます。はじめて読んでいただいた方、はじめまして。これからも読んでいただけるとありがたいです。皆様、何卒、よろしくお願いいたします。

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