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君のことが好きなんだ。  作者: 待宵月
48/81

48.戻って来た男。

幼馴染だった千里が戻って来た。突然の登場に戸惑いながらも喜ぶ千鶴だったが。

「な、なんでここに千里(せんり)がいるの?」

「そりゃあ、日本に戻って来たからだろう。驚いたか?」


 そう言って、桐谷千里(きりたにせんり)がにかっと笑う。確かに、この笑顔には見覚えがあった。いつも悪戯が成功した時に千里が見せていた笑顔だ。


「本当に千里なんだね?!」


 小学生の時とあまりに姿が変わっていて正直驚きを隠せないが、千鶴は込み上げてきた懐かしさと嬉しさで笑顔を浮かべながらつい涙ぐんでしまう。


「ちい………」


 千里の千鶴を見る目が優しくなる。


「はは、……………泣くなよ」


 どこか戸惑いを含む喜びを隠しきれない声でそう言うと、千里は大きな手で千鶴の頭をわしわしと撫で回した。


「あっ! もう、止めてよねっ!」


 ぐしゃぐしゃにされた頭を両手で押えながら、千鶴は千里の手から逃げる。


「……なんか、すげぇ背が縮んだんじゃないか?」


 頭をぐちゃぐちゃにされたうえに、酷い言われようだ。千鶴はムッとした表情を浮かべる。


「あんたが無駄にでかくなっただけでしょ! 私は標準だからね!」

「まあ、そんなことはどうでもいいんだ。俺がいない間に、大怪我したんだろ? 見せてみろ。こっちの足か?」


 そう言うや否や、千里はしゃがみ込み、千鶴のスカートの裾を掴んだ。


「ぎゃっ! 何すんのよっ!!」


 羞恥と怒りで顔を真っ赤にして、千鶴は拳を振り上げた。怒りの鉄拳が千里の頭にクリーンヒットする。


「馬鹿っ!」


 スカートを押えながら睨めば、殴られた頭をさすりながら千里が顔を上げた。


「──────痛てぇ。普通、ゲンコで殴るか? 俺はただ心配し………」


 千里の言葉が途中で途絶え、突然目の前から千里の姿が消えた。


「!?」


 そして、先ほどまで千里がいた場所に陵蘭高校の制服を着た有馬真一が立っていた。その目は完全に据わっている。

 そして、真一の視線の先には、地面に転がっている千里の姿があった。


「佐倉、痴漢(ちかん)だ。警察を呼べ」


 絶対零度の声で真一は近くで唖然としながら立ち尽くしている佐倉要に指示を出す。


「真一⁈」


 驚いて名を呼べば、真一が振り返った。険しかった表情が柔らかなものへと変わる。


「もう大丈夫。怖かっただろ? すぐに警察がくるよ」

「あ、いや、警察はまずいわ。佐倉君! ストッープ!!」


 千鶴に向かって『さあ』とばかりに両手を広げる真一を押し退け、千鶴は警察へ通報しようとしている要からスマホを奪うと急いで通話を切った。


「ふぅ………」

「え? 千鶴ちゃん⁈ 警察を呼ばなくていいの?」

「キノッ?」


 驚いている要にスマホを返し真一へ顔を向ければ、明らかに困惑している目で見つめられた。


(何から説明すれば………)


 どうしようかと悩む千鶴の耳に、(うめ)き声が聞こえてきた。真一に投げ飛ばされて地面に転がっていた千里が緩慢な動きで身を起こす。


「うぅぅぅ………、()ってぇ………」

「あっ、千里、大丈夫?」


 地面に膝を付き、心配そうに覗き込む千鶴の背後に真一が立つ気配がした。


「せ……んり………?!」


 信じられないと言いたげな真一の声と共に、周りにざわめきがが聞こえてきた。顔を向ければ、千鶴達を遠巻きにして東校の生徒達が何ごとかと見ている。


(ああっ、もう!)


 千鶴は千里を無理やり引っ張り起こし、茫然としている真一の腕を掴むと、その場から猛ダッシュで逃げ出したのだった。


読んでいいただき、ありがとうございます。楽しんでいただけたでしょうか? 真一君のライバル登場です。また続きを読んでいただけると嬉しいです。

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