8話 今日は狩り日和
朝5時半。昨日より少し遅めの起床。昨日はまだ薄暗かったが、今日はもう日が昇り始めている。
今日もダンテは先に起きてて、着替えも済ませていた。
部屋の中はダンテと私だけなので、システムから着替えを済ませる。こうすると光るだけで服が変わる。
「で、今日の予定は?」
「狩りと露天巡りかな?」
「やっとかね。」
「やっとだね。」
6時少し過ぎ。朝食に向かうことにする。今日の朝食はくるみのような木の実の入ったパンとオムレツ、クリーム系のスープで、いつもながら美味しい。朝食については異世界に来る前よりもちゃんと食べていると思う。シリアルとかゼリー系飲料とか多かったからなぁ。
冒険者協会に向かう途中にある露天で熱いパテと野菜を挟んだハンバーガーのようなものを2つ買いそのままポーチに入れる。
冒険者協会に入るといつもの雰囲気とは違い、ものすごく混雑していた。そういえば、今まで1度も朝のピーク時に来たことはなかったななどと思いつつ、いつもは張り紙があまりない掲示板に大量の依頼が張り出されているのを見る。護衛、調査から迷子探し、お店のヘルプまで多岐にわたり、冒険者たちが次々とはがしていく。
一応一通りみるがめぼしいものはなく、そのままカウンターに並んで、予定通り常設の猫ウサゼリーの討伐依頼を受け、冒険者協会を後にする。
そのまま西門をでて、昨日の場所にたどり着く。時刻はまだ7時。
「じゃ、とりあえず昼までいきますか。」
「ぉう、がんばれよ。」
「あいお。」
こういう長時間の単純作業はダンテのが得意だ。なので、私より先にダンテが根をあげたことはない。がんばるのは私だけだろう。
昨日同様別れて狩り始める。今日も昨日の続き、魔力が乱れないように動きながらスキルを打ってみることにする。
「水よ 集え ウォーターボール」
次はっと。大きな石の向こう側に影が見える。
「水よ 集え」
石に手を付き体を押し上げる。現実より体が軽い。ふわりと身長よりも大きな石も軽く飛び越せる。石を飛び越し、石の向こうに居た猫ウサゼリーに狙いを定められたところで発射する。
「ウォーターボール」
動きながら打つことにも少しずつ慣れて、詠唱を区切って待機させて使うのも威力を落とさず使うこともできるようになってきた。
そろそろ12時。先ほどから視界にちらちら移る怪しい動きの影に声を掛ける。
「さっきから思ってたけど、その動き気持ち悪くない?」
「おう、ようやく慣れたわ。昨日はあんまり意味なかったけど。」
マントのヘイストを使いこなしたダンテは1.5倍速ぐらいで次々にモンスターを倒していた。動きも早すぎてなんだか不気味だ。ただ、パーティの範囲を気にして狩るのは、午前中5時間狩って大体2350匹、1時間2人で470匹。私が210匹ダンテが260匹ぐらいが、ここでの上限のようだ。
途中から大きな三角形を作るように私が内側をダンテが外側を回るように移動するようになっていたが、それでも湧きが追いついていなかった。好き勝手にダンテを走らせればもう少し狩れるようなきがするが、お互いにあまりLvに差をつけたくない。なのでこれ以上広い範囲で狩りできないのは仕方ないだろう。
さて、ここでもう1つ実験していたことを確認してみよう。それは、朝、露天で買ったハンバーガーだ。ポーチから取り出す。予想通り買ったときのまま熱々だ。1つをダンテに渡す。
「インベントリに入れると、やっぱり時間経過しないのか。遠出するとき便利だな。」
どうやら、すぐに気が付いたらしい。さすがだ。
「だねぇ。少し買いだめしようかな?」
「いいかもな。」
というわけで、昼食は食べたばかりだが、屋台街とそのまま露天街を見に行くことにする。
ちなみにハンバーガーの評価は普通。まずくもなく美味くもなく。宿の味に慣れたせいか、舌が我侭になっているような気もする。
西門から街の中に戻り、屋台街を目指す。屋台街は西門のすぐ側にある。焼き串や麺類、揚げ物など昼時ともなれば無数に並んでいる。たい焼きに似たお菓子やクレープのようなお菓子もあり、私もダンテも買ってはポーチに入れていく。普通のポーチだったら、今頃中はべたべただろう。インベントリ様々である。
高くても500円程度なのにもかかわらず、気に入ったものを買い込んでいた私は既に2万近く使っていた。ダンテも同じぐらいは買っているだろう。いや、肉の串とかクレープとか買った数からして、おそらくダンテの方が使っている。
食べ物については2週間は持つぐらい買ったので、屋台街を後にして露天街を目指す。露天街は南側の大通りの裏通りにある。
「さて、着いたわけですが、何買う予定?」
「ん~。そろそろ服どうにかしたい。」
「あ~・・・。こっちは、アクセサリー中心かな。見る物違うし、一旦解散かな?」
「そうだな。2時ごろでいいか?」
「了解。」
昨日の反省を生かして簡易説明を身ながら掘り出し物を探す。1時間程アクセサリーを扱っている露天を中心にみて回るが、流石に昨日の今日。いいものは特になかった。
一回りして、最初の露天の辺りに戻ってきた。もうすぐ2時。パーティチャットで連絡をとってみる。
『今どこ?』
『別れた店の近くだわ。』
ダンテも近くに居るらしい。マップを見ると、奥のほうから近づいてくるパーティーメンバーを表す点がある。
「わり、待たせた。」
「あれ?服が変わってる。」
「いつまでもコットン上下じゃな。あんまりいい品物じゃないが、安かった。」
ダンテの服はシーフ系、弓系の冒険者が好みそうな動きやすそうなハイネックの白のレザーメイル。急所を守るようにしながら、間接には柔らかい皮を使い、揃いのズボンとブーツを履いている。性能は夜見せてもらおう。
さて、残りの時間狩りの続きをしよう。今日は19時半までがんばろう。急げば、2時半には狩場に戻れるだろう。
午前の狩場に戻り、別れて午後の狩りを始める。ゲームのときは出来なかったが、無詠唱とか多重詠唱とかにチャレンジしてみよう。まず、試しに一発。
「水よ 集え ウォーターボール」
次にその魔力の流れを再現してみる。
「・・・」
魔力が最後に少し抜ける感覚がなく、発動もしない。何かが違うみたい・・・。
「・・・ウォーターボール」
魔力がちょっと抜けた感じがして、水滴が地面に落ちる。何かが違う。今度は試しにいつもより多く魔力を動かしてみよう。
「・・・ウォーターボール」
水が頭の上から落ちてくる。バックステップで慌てて避けたが、避けなかったら今頃ずぶ濡れだった。MPは半分ぐらい減っていた。
「おい、ふざけてないで狩りしろ!」
「あいあい。」
ダンテに見つかってしまった。ちょっと恥ずかしい。とりあえず何が違うのか考えつつ、詠唱して狩りする。
「水よ 集え ウォーターボール」
決定的に何かが違う感覚はある。だが、それが何かわからない。もどかしい。それでも何かわからない。考えながら狩っていたらいつの間にか19時半を過ぎていた。数を調整して10匹単位にあわせると、丁度午前中と同じ2350匹。取りえず、ノルマは達成かな。
そのまま、冒険者ギルドに向かう。
今日の報告は討伐分だけにする。インベントリに入れておけば、劣化もないようだし、懐もまだ暖かい。次に売るのはここよりも買い取り価格の高い学園都市でいいだろう。4700匹23万5千エデンで1人あたり11万7500エデン。それでも十分な収入になった。
寝る前に今日のレザー装備をまだ見ていなかったことを思い出し、ダンテに尋ねる。
「見るか?」
ダンテはそう言い、着替えた装備を手渡してくる。
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ボアレザーメイル☆(染色:白)
簡易説明文
ボアレザーを用いた鎧
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ボアレザーボトム☆(染色:白)
簡易説明文
ボアレザーを用いたボトム
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ボアレザーブーツ☆(染色:白)
簡易説明文
ボアレザーを用いたブーツ
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「見慣れない色のレザー装備だと思ったけど、普通のボアレザー装備か。でも、染色済みなんてよく見つけたね。」
染色は、染色スキルが必要で、染色スキルも応用性が少なく、そして染める防具よりも高価な染色剤料が必要になるため、染色されたものはあまり数が出回らない。それにより、染色済みの装備は未染色の装備よりも値段が高くなることが多い。
ボアレザーはLv30前後で多く着られていた装備で、適正の装備からは2つ上防御性能がある。とはいっても、多少の敏捷と防御力しか上がらない。元々、避けるスタイルのダンテがコットン上下から更新する理由はやはり・・・。
「いいだろ?ボアレザーはデザインいいし。」
「防御は合計で15ぐらいだっけ?敏捷は上下が2で、ブーツが3だっけ?」
「よく憶えてるな。レザー装備なんて着ないのに。」
「クローズのときだいぶ稼いだじゃん。材料持込で作ってもらって後続にボアレザー装備売ってさ。」
「そうだったな。売り子ご苦労。」
「NPCに委託してただけだけどねぇ。」
「こっちだと、販売NPCいないから苦労しそうだな。」
「その前に大量に材料持込で引き受けてくれる生産者がいないよ~。」
「だな。当分は納品依頼頼りか。」
「いずれは何とかしたいね。」
「生産取るか?」
「向いてないでしょ。お互いに。」
「だな。」
こうして、ダンテはコットン上下を卒業したのだった。
前話までを大きく書き直す予定です。
ストーリーは変えませんが、進行をちょこちょこと。
レザーの染色の色を変更。
次回は土曜日予定です。