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ヒロイン来る

 あれから3人組とは打ち解けて話せるようになった、変装の失敗が尾を引いて、うまく取り繕えなくなったからだ。

 夜会にはぼちぼちいっている、おじさん達と話すのは楽しい、狸と狐は緊張することも多いがためになることもある。豚は・・・何も言わないでおこう。

おば 熟女は皆美魔女で年齢詐欺も甚だしい。3人組を盾にする気満々でいたのだが、腹黒宰相子息が親切だ、あいついい奴だな、助かっている。

両親プラス弟には大抵会う、挨拶だけしたらグッドバイだ。

皆も薄々俺たち家族の仲が悪いことを判っているのだろうが、スルーしてくれる。

直接何か言うのは下品だものな。


 夏はリッツモンドに行った、日本の軽井沢のような所だ。さすがの候爵家、別荘が2つあったので一つは俺の貸切だ。学園の生徒がごろごろいるので遊ぶに困らない。湖のほとりで皆で食事を作った、ここにはカレーがある。花火もした、近くの山へ登山にもいった。皆で計画を立て強引に実行したら護衛の人にいやな顔をされた。俺の護衛も含めて。青春だ、遊ばないでどうする、ここは乙女ゲームの世界だろう。あいつらしょっちゅうイベントを起こしているじゃないか、水上さんが言っていた。

女の子がいないのが悪いのか、テニスをしてコートの側でお茶するのが正しいのか、たまには付き合っているぞそっちにも。


 ここで驚愕の事実が発覚しました。

誰も婚約者を持っていない、悪役令嬢はどうした、これでは3人組にご令嬢方が群がるわけだ。


 婚約者候補とやらは数人いるらしい、とうするのよ、余った人は。

その余波で同年代の上級貴族子女は婚約していない人が多い。

俺も婚約者を作るなと言われた、そんなこと言われても親が決めることだし(叔父上に了解も要るらしいのでずぇーたい、まだ決めてくれるなと言ってあるが)

第一、弟にあとを継がせたい両親が有力貴族と俺の縁を結びたいわけがない。かといって変なところと縁を結ばせるのは体面上まずいしな。

ということをつらつらと述べると両親に釘を刺しておくと言われた、王子様頼もしいです。


 そんなこんなで俺も2学年になった。

今日は入学式で生徒会の手伝いをする、きたー、きましたよ生徒会。

何故に断らなかったのだといったら去年断ったので今年は無理だそうだ、腹黒宰相子息の弁舌も今年は通用しなかったらしい。

3人組とセット扱いされている俺も一緒にドナドナされた。

 

一通り準備が終わるとのんびりと人気のない方へ歩く。今日は何があっても一緒にいるようにと厳命されているので4人でだ、何故に?

 裏庭に一際立派な桜があるので見に行きたいといったら、3人は顔を引きつらせている、足音を忍ばせるように歩く皆に???だ。

あった、見事な桜だ、ついでにその下にピンクの髪の可愛らしい女の子がいた。

きたー、きましたよヒロインちゃん!

顔色の悪い殿下に袖を引っ張られてそそくさと皆で逃げる。

これは転生者がいるな、そのうち話してくれるだろう、やっとストーリーが判明する、助かった。


 あいつに近づくなといい含められ、うん、うんと頷いた。俺はやじ馬するのは好きだが、されるのはまっぴらごめんだ。

 

 廊下の角で対面からきたヒロインにぶつかられそうになったのでひらりと避けた。自慢ではないが俺は運動神経が良い。

ヒロインは勢いが付いていたのかべちゃりと潰れていた。自業自得だスルーしよう。

お、ヒロインが廊下の向こうに見えるぞ、直前でささっと人の影に隠れた。

躓いたのか、転んでいる。人の影にいるので俺には見えない、見えないといったら見えないんだ、だからこのまま歩いていく。

3人組に卑怯者と言われた。あいつらはぶつかられたり、目の前で転ばれて、手を差し伸べないわけにはいかなくなったそうだ。「もっと運動神経を鍛えて、素早さを手に入れろ」と言ったらじと目で見られた、羨ましかろう、俺の運動神経が、ははは。


 ここで告白タイムです。場所は殿下の部屋、人払いして4人で話す。

殿下が転生者だった、2人は半信半疑ながら従っていたらしい、相手は王子様だものね。

殿下は転生者がもう一人いたと喜んでくれたが、腹黒宰相子息には使えないと言われた。

そんなこと言われても水上さんがそこまでしか話してなかったんだからしかたないだろう、俺に乙女ゲームをやれと、冗談言うな。

 殿下は高校生で姉貴にとうとうと話されたそうだ。社会人の姉貴は強い、小遣いを呉れると言うのでスチルを見ながら攻略対象者の素晴らしさを語られる日々を過ごしたそうだ。南無さん。

それで幼児の時からここが乙女ゲームの世界だと知って、がんばっていたらしい、主に婚約者とかね。

今後の国際情勢の変化を考えて婚約というカードは取っておいたほうが良いと力説したそうだ。

皆に引かれたと言っていた。俺もそんな幼児はいやだ。後は子供の力技で押し切ったそうだ。

2人には家来なら真似しろと命令。前世が高校生の身でよくがんばったよ、俺だって大したことは出来ない。


 さてストーリーだがヒロインはピンクの髪の可愛らしい女の子、母と二人で暮らしていたが、母が亡くなり一人ぼっち。ここに父である子爵が現れ、母は子爵家のメイドをしていたと知る。妊娠したメイドを追い出した子爵夫人だが、生まれた子供が女の子で自身も息子2人しかいないため引取りを承知する。

貴族教育を促成栽培で受け、学園に途中編入←今ここ


 人や動物、生き物は日々瘴気を生み出す、といっても日本で光化学スモッグが発生する程度だ。

ところが100~200年に一度、世界の瘴気処理能力が落ちるのか、瘴気が異常発生する。いくつもの瘴気スポットが発生して、魔獣が増える、増えすぎる、皆が大迷惑。

ここで聖女だ。瘴気を浄化する乙女だ。

 乙女が転入した年から各地で異変が起き始め魔獣が増える。この時期はまだ不穏な状況であるだけだ。

この1年で乙女は共に各地を巡る仲間を集める、いわゆる逆ハーメンバーね。

そして3学年に上がる前の休みの日に魔獣に襲われた乙女は聖女へと覚醒する。

聖女は9ヶ月程を掛けて大陸の主な場所を巡り瘴気を浄化する。

大陸は小さいのねと言ってはいけない。浄化できる人間はそこそこいる、浄化範囲が狭いので時間が掛かるだけだ。その間に魔獣に殺される可能性が大なので来てくれというのだが。

主な場所を浄化すればなんとかなる。それに転移の門が主要な場所にはある。


 浄化の旅を終えた聖女とお供たち、さあ、ここからが最後のイベントだ。

相手を決め、婚約破棄させる。一人でも全員でもお好みしだい。隠しキャラもいるよ。

振られた奴のその後は割りとひどいらしい、後で聞こう。


 「殿下、桜の花びらは5枚ですよね、隠しキャラ込みで5人ですか。」

 

 「君も入れて、4人。根暗で自分に自信がなく、両親に見捨てられた君を心配して、時々訪ねてくる弟と知り合うシナリオがあって5人、あとは隣の国の若き王レオパルド マリグラートが隠しキャラだ。」


 「弟は私のことを敵視してますが、ついでに根暗ではないです!」


 ここは主張しておかないとね。


 「知っている、気にするな。

 ここで問題がある、我々以外が供に付いて無事に役目を果せるのか。

 だめなら我々が供に付かねばならない。」


 「殿下、殿下、全員が共に付かねばならないのですか。」


 「そんな顔をするな、ゲームでは2人だけのこともあった、あとは宮廷魔術師か騎士団から選ばれてたな。」


 「一人目は弟に押し付けても、あと一人はここから選ばれるわけですか。」


 「いやいや、攻略対象者が君の弟一人でも問題ないのではないか。

 ほら、運営会社の予算の都合とイラストレーターの手間で使い回しをしていただけかもしれない。」


 皆は押し黙り、お互いの顔を見合わせた。





 



 




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