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閑話 困った日常

  私はバルド、兄が王宮で魔術師長をしている関係で兄に代わり領地の代官として働いている。

困ったのは兄夫婦の長男フェルディナンドが1歳になった時だった。

華やかな社交界が懐かしくなったのか兄嫁のセフィーナが王都に戻ると言い出したのだ。兄が王宮勤めなので戻るのは問題ないのだが、子供を置いていくのはまずくはないだろうか。

 

 フェルディナンドは銀色の髪に青い目をしたそれは美しい顔立ちをした子供だった。子供特有のばら色の肌が柔らかさを醸し出し、メイドや侍女達に騒がれていたものだ。ところが兄嫁にはなつかない、淡々と一人遊びをしているような赤ん坊だったので仕方がないとも言えるが、普通母親には懐くだろう、不思議だ。甘やかされて育てられた彼女にはそれがおもしろくなかったようだ。段々と乳母にまかせっきりで疎遠になり、とうとう長男なのだから領地で育てればいいと言い出した。言ったら聞かない性格なので、回りが宥めてもどうしようもなく、甥の育児は私に任されることになってしまった。

 

 しばらくは乳母と専任メイド達に任せておいたが、4歳の時に甥から教育係が欲しいと言われた。

これ幸いと、昔なじみの学園の後輩サリバンに教育を頼んだ、あいつも王都で財務官として勤めているが子爵の3男では出世の道も限られ、面白くないことでもあったのだろう、二つ返事で了承してくれたのは幸いだった。

 サリバンに甥を会わせると、おもしろいと言い出し、一月も経つ頃には追加の教師を要求された。

そんなに何人もの教師が必要なのか、英才である彼自身で教えればいいのではないかと聞くと、自分では足りない、そのくらいいいだろうと言われ要求を呑むことにした。あまりかまってやれない負い目もあったと思う。

 

 これは少し違うのではないかと思ったのは甥が5歳になった時分だ。

魔獣を森から連れてきた。護衛の兵士が信じられないだろうがと前置きして話したのは森で木の根元に寝ていた狼系の魔獣の子供を甥が拾ってきたというものだった。

魔獣は用心深い、攻撃的な性格を持った生き物で拾ってこれるものではないと言いたかったが甥が嬉しそうな顔をしていたことと普段かまえていない負い目もあり、契約できるならばと条件付で許した。

魔獣の子供はあっさりと契約に応じ甥の後を付いて回るようになった。

これが問題だとわかったのは10歳の魔力開放の時だった。甥の体の中で魔力が暴走し、あわてて魔力押さえのブレスレットをはめて一時をしのぎ屋敷に戻ったが、結局10個のブレスレットをつける羽目になってしまった。この魔力は契約獣から流れ込んできたものに違いない。人間にこれ程の魔力が備わっているなど考えにくい。これからどうしようと途方にくれしまった。

そしてサリバンに聞いた事実、甥は10歳にして学園の教育範囲を終えているとのこと。

こいつ普通じゃない、我が甥ながら信じられない優秀さだ、私の手に負えるのだろうかと先行きに不安を覚えた。


 しかし、当面やることがあるので、それらは棚に上げることにした。

魔力コントロールだ、やらなければ魔法が使えない、ゴルドシュタイン家としては大問題だ。


 魔獣は魔力開放の時に影響があったのか、1年ほど姿を見せなかった。そして青みを帯びた銀色の毛皮をした狼の姿で戻ってきた、私もゴルドシュタイン家の人間だ、あいつが見た目よりもずっと力のある魔獣だと判った、いまさらではあるが。


 3年が経った、魔力コントロールも無事習得し、甥は嬉々として魔法を使っている。

それも大規模魔法を軽々と何回も使っている。問題だ、問題ありすぎだ、私は頭を抱えた、ついでにサリバンのことも呪ってやった。

あそこまでする必要はないだろう。甥は学園の卒業生が学ぶ専門課程も修めていた。


 甥の容姿はいい、とても良い、良すぎて苦労する部類だ。

田舎に居たら問題が起きる、サリバンも苦労した口なので2人して子供を遠ざけた。兄や弟には姉妹がついてくるしな。私の子供、娘2人もだめだ、叶えられない相手を思うのは不憫だろう。

メイドは中年女性のみ、煩い親戚も人見知りだと言いつくろい、王都に行かせた、小さな子供を誑かそうなんて許せん。

 大人ばかりの中にいるがこれといって気にしない甥をみてこの件は仕舞いにした。


 学園入学半年前になり甥に希望を聞いてみた、足を引っ張られないようにアドバイスしないとな。

ここで驚愕の事実が発覚する、田舎でスローライフだと、出来るものか思わず叫びそうになった。

 涼やかな美貌に180センチ近いほっそりとした肢体(こいつはこれで剣の腕もたつ)魔法は宮廷魔術師にいますぐなれるレベルだ。賢くて人当たりがよく落ち着いている。

友人や味方にしたいと思わせる人間だ、巻き込まれるだろう、何とは言わないが、あれとかこれとかそれにな。

 ここでサリバンが変なことを言い出した、剣術科へ行けとな。

兄達が弟のアーネストを溺愛しており、家督争いが起きる可能性を考え、魔術科以外は考えたことがなかったが、いいかもしれない。魔術科なんぞ行かなくても甥は宮廷魔術師ぐらいなれるしな。

学園入学の前には私の両親、友人、兄嫁の家族、関係者に挨拶させよう、人脈も必要だし、あの年になったら、そうそう誑かされないだろう。


 15の年まで育てた可愛い甥だ、たとえ可能性が1%しかなくともゼロではない。

希望は持つべきだよな。叔父は君の”田舎でスローライフを送りたい”という夢をを応援しているぞ、フェルディナンド。

 



 

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